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これは、何という嫌がらせでしょうか。死亡フラグを避けるため、攻略可能キャラクターと名のつく方々とは関わらないようにしようと思った翌日に、夜会が行われるなんて。
「……はぁ」
シャンデリアがきらきらと輝き、目に眩しいです。そして、見渡せば、綺麗に着飾った女性を男性がエスコートして、踊ったり、談笑したりしていらっしゃいます。
私の長い髪も、いつものように細いリボンでくくっているのではなく、私の侍女のソリアがまとめて、何やら飾りをつけてくれました。
「大変お似合いです!」
と可愛らしく笑って、太鼓判を押してくれましたが、落ち着きません。
首にかけているペンダントや、私が今現在着ているドレス。……今までは、これが普通だと思っていましたが、前世の記憶を取り戻した私からすると、卒倒しそうなほどの金額のものです。
……着飾ることは私も女ですから嫌いではないですし、こうした場所で着飾ることの意味も理解しているつもりです。
――ですが。
「……もう少し、地味なものがよかったです」
このドレスはとても美しいのですが、派手です。もう少し、落ち着いた色のものもあったのですが、
「舞踏会では、女性が主役ですよ!他の方々も、たくさん着飾ってこられるでしょう。マリー様はそのままでもお綺麗ですけど、このドレスを着られたマリー様の美しさったらもう……。どんな殿方たちもマリー様を放ってはずがございませんわ!」
私がこのドレスを脱ごうとする度に、ソリアや、他の侍女たちにいろいろ言われて、止められてしまいました。
……私は、男性たちに放っておいて頂きたいのです。この夜会には、攻略可能キャラクターの方がたくさんいらっしゃいますし、死亡フラグを避けるためにも、できるだけその方々との接触は控えたいです。だから、ひっそりと身を潜めて、この夜会をやり過ごしたいのに、ドレス的にはまあまあ目立ってしまいます。
終わってしまったことは、仕方ないので忘れましょう。ドレスは美しくとも、私は、そうでもないですし、きっとそんなに目立ちませんよ。侍女たちはこぞって美しいと褒めてくれましたが、センスは皆さんお持ちですから、きっと視力が低下しているのでしょう。この夜会から、帰ったら腕のいい眼科医を手配しなければなりませんね。
非常に残念なことに、攻略可能キャラクターたる方々は、そう邪険には扱ってはならない方々なので、どんなに会いたくなくとも、挨拶ぐらいは軽くしておかなければなりません。
なんて面倒な。
「……マリー、大丈夫かい?」
「ええ。大丈夫ですわ、お父様」
心配そうなお顔をされたお父様に向かって、にこりと微笑みます。お母様は現在お腹の中に新しい命が宿っています。それでもう間もなく生まれるので、当然のことながら今回の夜会に出席されることはできません。……というわけで、私はお母様の代わりにお父様にエスコートされています。
でも、そのぶん挨拶が楽になりそうですね。お父様の隣でうふふ、と笑っていればどうにかなりそうです。
■ □ ■
「ごめんなさい、お父様。私、そろそろ、友人たちのところへ行ってもいいでしょうか」
「ああ、行ってきなさい」
一礼して、お父様の元を離れます。もちろんですが、友人、は嘘です。お父様に嘘をついたのは後ろめたいですが、そろそろ笑顔と体力の限界です。
バルコニーに退散します。それぞれが食事やダンスや意中の相手に夢中になっていらっしゃっているので、あそこなら、少々休んでもばれないでしょう。
バルコニーの手すりにもたれかかります。……疲れました。
「なめてました……」
お父様のお顔が広いことは承知しておりましたが、まさかあそこまでとは……!
あれだけの挨拶をこなしてもまだ平然としていらっしゃっているお父様もさすがは、ロイド家の当主というべきか。
ここで体を休めていれば、誰とも話さずに済みますし、何より攻略可能キャラクターの方々と接触することも避けられます。
これで死亡フラグかい――
「ぐっ!!」
後ろから急に飛びかかられて、ぐえ、と言わなかった自分を褒めたいです。
「マリー様、マリー様!!」
聞き覚えがありすぎる声に眩暈がしました。今までなら嬉しいことだったのですが、今は後ろを振り返りたくないです。
「……マリー様?」
怪訝そうな声とともに、一層つめつけられました。痛いです。
「……すみません、ノエル様。腕を解いて頂けますか?」
「え、あ、あああ!すみません!!」
そういうと、素直に腕を解いてくださいました。仕方がないので、くるりと向きを変えます。目の前の茶色いふわふわな髪をされた方は、ノエル=マド様です。攻略可能キャラクター様です。
なんでしたっけ、可愛い顔とは裏腹になかなか暗い過去をお持ちだったとか、そういう設定もあったような気がします。自分がプレイヤーだったら気になるところですが、今は、全く持って気になりません。
あああああ、関わりたくなかったというのに。
「僕、ちゃんとマリー様の挨拶が終わるのを待っていましたよ!」
えっへん、と効果音がつきそうです。私と一つしか歳が変わらないというのに、何だかずっと年下の弟に接している気分になります。
「ああ、それはありがとうございます」
頭をなでると幻覚の耳と尻尾がみえそうな勢いで、喜ばれました。
なぜ、こんなに懐かれたのかは心底謎です。
喜んだのなら、これ以上私に関わらないで下さい、と言いたいところですが、あまり邪険にも扱えないですし。……どうしましょうか。
「こんなところにいたのか、マリー嬢。久しぶりに会ったというのに、挨拶だけとはつれないな」
……あああああ。一番関わりたくない方がいらっしゃいました。
「それは申し訳ございません、殿下」
殿下、という言葉の通り、黒曜石のような髪を持つ、アレックス=デュール様……は、この国の第二王子でいらっしゃいます。第二王子と言っても、この国は長子相続ではないので、王位継承は今のところどの王子にも等しくあります。
この方ももちろん攻略可能キャラクターでいらっしゃるのですが、その中でもアレです。ゲームのパッケージのど真ん中をはられていらっしゃっているお方……つまり、メイン攻略キャラクターというわけです。
そして、私が一番会いたくない理由のもう一つは、この方が私の婚約者となる可能性が一番高いことです。
ええ、だって、メインの方ですし。どんなストーリーだったかうろ覚えですが、無駄に長かったことを覚えています。無駄に長い、ということはその分いろいろなストーリーを盛り込めるわけで、ヒロインの親友が死ぬシーンが入るかもしれないじゃないですか。
……というわけで、一番お会いしたくない方です。
「壁の花では勿体無い。せっかくの舞踏会だ。私と踊ってくれないか?」
「お誘いありがとうございます。ですが、私を誘わなくとも、美しい花ならそこかしこに咲いているでしょう。私では力不足ですわ」
踊る体力も残ってないですし、これ以上関わりたくありません。
「『身分と友情は関係ない』、そう言っていたのは誰だったかな。……友情とはこんなにも儚いものなのか」
「――!!」
随分と古いことを持ち出されますね。確かにそんなこと言いましたけれど、それは、まさか殿下だとは知らなかったから言えたことです。
「……わかりました」
殿下がこちらにいらっしゃったことで随分と注目を集めていますし、ここは踊った方が良いでしょう。踊っている間は、コミュニケーションを誰ともとらずに済みますし。
「……マリー様」
ノエル様が不安げお顔をされて私の袖を掴まれました。その姿もなんて可愛らしい……じゃなかった、大丈夫ですよ、という意味を込めてもう一度頭をなでると、しぶしぶといった様子で袖を離してくださいました。
「では、マリー嬢」
殿下にエスコートされてダンスホールへ戻ります。
ああ、女性たちからの目線が痛い。
丁度、新たな曲に変わったようです。
――ダンスがスタートしました。
「……はぁ」
シャンデリアがきらきらと輝き、目に眩しいです。そして、見渡せば、綺麗に着飾った女性を男性がエスコートして、踊ったり、談笑したりしていらっしゃいます。
私の長い髪も、いつものように細いリボンでくくっているのではなく、私の侍女のソリアがまとめて、何やら飾りをつけてくれました。
「大変お似合いです!」
と可愛らしく笑って、太鼓判を押してくれましたが、落ち着きません。
首にかけているペンダントや、私が今現在着ているドレス。……今までは、これが普通だと思っていましたが、前世の記憶を取り戻した私からすると、卒倒しそうなほどの金額のものです。
……着飾ることは私も女ですから嫌いではないですし、こうした場所で着飾ることの意味も理解しているつもりです。
――ですが。
「……もう少し、地味なものがよかったです」
このドレスはとても美しいのですが、派手です。もう少し、落ち着いた色のものもあったのですが、
「舞踏会では、女性が主役ですよ!他の方々も、たくさん着飾ってこられるでしょう。マリー様はそのままでもお綺麗ですけど、このドレスを着られたマリー様の美しさったらもう……。どんな殿方たちもマリー様を放ってはずがございませんわ!」
私がこのドレスを脱ごうとする度に、ソリアや、他の侍女たちにいろいろ言われて、止められてしまいました。
……私は、男性たちに放っておいて頂きたいのです。この夜会には、攻略可能キャラクターの方がたくさんいらっしゃいますし、死亡フラグを避けるためにも、できるだけその方々との接触は控えたいです。だから、ひっそりと身を潜めて、この夜会をやり過ごしたいのに、ドレス的にはまあまあ目立ってしまいます。
終わってしまったことは、仕方ないので忘れましょう。ドレスは美しくとも、私は、そうでもないですし、きっとそんなに目立ちませんよ。侍女たちはこぞって美しいと褒めてくれましたが、センスは皆さんお持ちですから、きっと視力が低下しているのでしょう。この夜会から、帰ったら腕のいい眼科医を手配しなければなりませんね。
非常に残念なことに、攻略可能キャラクターたる方々は、そう邪険には扱ってはならない方々なので、どんなに会いたくなくとも、挨拶ぐらいは軽くしておかなければなりません。
なんて面倒な。
「……マリー、大丈夫かい?」
「ええ。大丈夫ですわ、お父様」
心配そうなお顔をされたお父様に向かって、にこりと微笑みます。お母様は現在お腹の中に新しい命が宿っています。それでもう間もなく生まれるので、当然のことながら今回の夜会に出席されることはできません。……というわけで、私はお母様の代わりにお父様にエスコートされています。
でも、そのぶん挨拶が楽になりそうですね。お父様の隣でうふふ、と笑っていればどうにかなりそうです。
■ □ ■
「ごめんなさい、お父様。私、そろそろ、友人たちのところへ行ってもいいでしょうか」
「ああ、行ってきなさい」
一礼して、お父様の元を離れます。もちろんですが、友人、は嘘です。お父様に嘘をついたのは後ろめたいですが、そろそろ笑顔と体力の限界です。
バルコニーに退散します。それぞれが食事やダンスや意中の相手に夢中になっていらっしゃっているので、あそこなら、少々休んでもばれないでしょう。
バルコニーの手すりにもたれかかります。……疲れました。
「なめてました……」
お父様のお顔が広いことは承知しておりましたが、まさかあそこまでとは……!
あれだけの挨拶をこなしてもまだ平然としていらっしゃっているお父様もさすがは、ロイド家の当主というべきか。
ここで体を休めていれば、誰とも話さずに済みますし、何より攻略可能キャラクターの方々と接触することも避けられます。
これで死亡フラグかい――
「ぐっ!!」
後ろから急に飛びかかられて、ぐえ、と言わなかった自分を褒めたいです。
「マリー様、マリー様!!」
聞き覚えがありすぎる声に眩暈がしました。今までなら嬉しいことだったのですが、今は後ろを振り返りたくないです。
「……マリー様?」
怪訝そうな声とともに、一層つめつけられました。痛いです。
「……すみません、ノエル様。腕を解いて頂けますか?」
「え、あ、あああ!すみません!!」
そういうと、素直に腕を解いてくださいました。仕方がないので、くるりと向きを変えます。目の前の茶色いふわふわな髪をされた方は、ノエル=マド様です。攻略可能キャラクター様です。
なんでしたっけ、可愛い顔とは裏腹になかなか暗い過去をお持ちだったとか、そういう設定もあったような気がします。自分がプレイヤーだったら気になるところですが、今は、全く持って気になりません。
あああああ、関わりたくなかったというのに。
「僕、ちゃんとマリー様の挨拶が終わるのを待っていましたよ!」
えっへん、と効果音がつきそうです。私と一つしか歳が変わらないというのに、何だかずっと年下の弟に接している気分になります。
「ああ、それはありがとうございます」
頭をなでると幻覚の耳と尻尾がみえそうな勢いで、喜ばれました。
なぜ、こんなに懐かれたのかは心底謎です。
喜んだのなら、これ以上私に関わらないで下さい、と言いたいところですが、あまり邪険にも扱えないですし。……どうしましょうか。
「こんなところにいたのか、マリー嬢。久しぶりに会ったというのに、挨拶だけとはつれないな」
……あああああ。一番関わりたくない方がいらっしゃいました。
「それは申し訳ございません、殿下」
殿下、という言葉の通り、黒曜石のような髪を持つ、アレックス=デュール様……は、この国の第二王子でいらっしゃいます。第二王子と言っても、この国は長子相続ではないので、王位継承は今のところどの王子にも等しくあります。
この方ももちろん攻略可能キャラクターでいらっしゃるのですが、その中でもアレです。ゲームのパッケージのど真ん中をはられていらっしゃっているお方……つまり、メイン攻略キャラクターというわけです。
そして、私が一番会いたくない理由のもう一つは、この方が私の婚約者となる可能性が一番高いことです。
ええ、だって、メインの方ですし。どんなストーリーだったかうろ覚えですが、無駄に長かったことを覚えています。無駄に長い、ということはその分いろいろなストーリーを盛り込めるわけで、ヒロインの親友が死ぬシーンが入るかもしれないじゃないですか。
……というわけで、一番お会いしたくない方です。
「壁の花では勿体無い。せっかくの舞踏会だ。私と踊ってくれないか?」
「お誘いありがとうございます。ですが、私を誘わなくとも、美しい花ならそこかしこに咲いているでしょう。私では力不足ですわ」
踊る体力も残ってないですし、これ以上関わりたくありません。
「『身分と友情は関係ない』、そう言っていたのは誰だったかな。……友情とはこんなにも儚いものなのか」
「――!!」
随分と古いことを持ち出されますね。確かにそんなこと言いましたけれど、それは、まさか殿下だとは知らなかったから言えたことです。
「……わかりました」
殿下がこちらにいらっしゃったことで随分と注目を集めていますし、ここは踊った方が良いでしょう。踊っている間は、コミュニケーションを誰ともとらずに済みますし。
「……マリー様」
ノエル様が不安げお顔をされて私の袖を掴まれました。その姿もなんて可愛らしい……じゃなかった、大丈夫ですよ、という意味を込めてもう一度頭をなでると、しぶしぶといった様子で袖を離してくださいました。
「では、マリー嬢」
殿下にエスコートされてダンスホールへ戻ります。
ああ、女性たちからの目線が痛い。
丁度、新たな曲に変わったようです。
――ダンスがスタートしました。
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