3 / 5
義姉として
しおりを挟む
「え?」
「……義姉兼、親友兼、婚約者になるってことです!」
「いやいやいやいや、え?」
「ですから——わたしがアイゼン殿下を溺愛します! たとえば、そうですね……」
止まっていた手を再び動かし、アイゼン殿下の頭を撫でる。
「やはり、家族からの愛、というものは大きいですからね。今日のわたしは義姉として、アイゼン殿下を溺愛します!」
家族からの愛はあまりわたしも得られなかったけれど。本や何かでこういうものだと、読んだことがあるから、それでいこう!
……というか、わたしったら、こんなに心の声がうるさいタイプだったのね。知らなかったわ。
新たな自分を新発見しつつ、アイゼン殿下から体を離す。そして、ソファに座った。
「アイゼン殿下、さぁ、義姉であるわたしの膝に頭を乗せてみてください」
「え? ……え?」
アイゼン殿下は、目を白黒させながら——そんな姿も可愛らしい——わたしの言う通りに、ソファに横たわりわたしの膝に頭を乗せた。
ふふ、アイゼン殿下は素直なのね。
またひとつ、アイゼン殿下のことを知ることができたわ!
「アイゼン殿下、今までよく頑張りましたね」
アイゼン殿下のさらさらな長い前髪が目に入らないようによけて、まっすぐ瞳を見る。
本当にとっても綺麗な瞳だわ。
「僕が、頑張った……?」
「はい。あなたは、今日までよく頑張りました。まずは、今日まで命を繋げたこと」
「そんなのただ、生きてるだけ——」
首を振る。
「生きることって、とても難しいことだとわたしは思います」
特に、見た目だけが原因で周囲に嫌われているアイゼン殿下ならなおさら。
「だから、生きててくれて生まれてきてくれて、ありがとうございます、アイゼン殿下。よく、頑張りましたね」
いい子、いい子、といいながら、その頭を優しく撫でる。
「僕、生まれてきてよかったの……?」
戸惑った顔で、ぽつりとこぼされた言葉は、きっと、アイゼン殿下の心からの本音だった。
「はい。あなたに出会えてラノーシャは嬉しいです」
「……そっかぁ」
アイゼン殿下が腕で顔を隠した。鼻をすする音も聞こえる。
わたしはそのことに触れずに、アイゼン殿下の頭を撫で続ける。
さらさらとした黒髪は、とても触り心地が良い。
「ラノーシャ嬢……」
「いまは、あなたの義姉ですよ」
わたしには弟、マルクスがいるから、アイゼン殿下だけのではないけれど。
「じゃあ、ラノーシャ姉様……ありがとう」
「……義姉兼、親友兼、婚約者になるってことです!」
「いやいやいやいや、え?」
「ですから——わたしがアイゼン殿下を溺愛します! たとえば、そうですね……」
止まっていた手を再び動かし、アイゼン殿下の頭を撫でる。
「やはり、家族からの愛、というものは大きいですからね。今日のわたしは義姉として、アイゼン殿下を溺愛します!」
家族からの愛はあまりわたしも得られなかったけれど。本や何かでこういうものだと、読んだことがあるから、それでいこう!
……というか、わたしったら、こんなに心の声がうるさいタイプだったのね。知らなかったわ。
新たな自分を新発見しつつ、アイゼン殿下から体を離す。そして、ソファに座った。
「アイゼン殿下、さぁ、義姉であるわたしの膝に頭を乗せてみてください」
「え? ……え?」
アイゼン殿下は、目を白黒させながら——そんな姿も可愛らしい——わたしの言う通りに、ソファに横たわりわたしの膝に頭を乗せた。
ふふ、アイゼン殿下は素直なのね。
またひとつ、アイゼン殿下のことを知ることができたわ!
「アイゼン殿下、今までよく頑張りましたね」
アイゼン殿下のさらさらな長い前髪が目に入らないようによけて、まっすぐ瞳を見る。
本当にとっても綺麗な瞳だわ。
「僕が、頑張った……?」
「はい。あなたは、今日までよく頑張りました。まずは、今日まで命を繋げたこと」
「そんなのただ、生きてるだけ——」
首を振る。
「生きることって、とても難しいことだとわたしは思います」
特に、見た目だけが原因で周囲に嫌われているアイゼン殿下ならなおさら。
「だから、生きててくれて生まれてきてくれて、ありがとうございます、アイゼン殿下。よく、頑張りましたね」
いい子、いい子、といいながら、その頭を優しく撫でる。
「僕、生まれてきてよかったの……?」
戸惑った顔で、ぽつりとこぼされた言葉は、きっと、アイゼン殿下の心からの本音だった。
「はい。あなたに出会えてラノーシャは嬉しいです」
「……そっかぁ」
アイゼン殿下が腕で顔を隠した。鼻をすする音も聞こえる。
わたしはそのことに触れずに、アイゼン殿下の頭を撫で続ける。
さらさらとした黒髪は、とても触り心地が良い。
「ラノーシャ嬢……」
「いまは、あなたの義姉ですよ」
わたしには弟、マルクスがいるから、アイゼン殿下だけのではないけれど。
「じゃあ、ラノーシャ姉様……ありがとう」
23
あなたにおすすめの小説
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました
鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。
素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。
とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。
「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる