鴉の運命の花嫁は、溺愛される

夕立悠理

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妖の花嫁

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「……どれに」
 目の前に並べられたたくさんの着物。
 それはどれも箏蔵にいたころよりも、質のいいものだと、一目でわかるほど、輝いていた。

 まさかこの全てが私のために用意されたの……?

 いえいえ、そんなはずないわよね。

 旦那様は、いくら妖の王といえども、さすがにこれは……。

「はい、どれに、なさいますか?」


 相変わらず、冷めた瞳で玲凛は、尋ねてくる。
「どれを選んでも……いいの?」

 色とりどりの着物。
 着てみたいと思わないわけがなかった。

「もちろん。すべては、花嫁様、あなたのために」
「私のため?」
「はい」
 ええっ。
 本当に、私のためにこれだけの着物が用意されたの。

 恐れ多いけど、このまま玲凛を待たせるのはもっと気が引けた。

「じゃあ……」

 私は、藍色の着物を指差す。
「これが、いいです」
「かしこまりました」

 ーー手際よく、白無垢から、藍色の着物を着付けてくれる玲凛に感心しつつ、鏡を眺める。

 そこに映っているのは、まぎれもない、箏蔵美冬……つまり、私だった。
 今日は、私の十六の誕生日で。
 今日この日のために私は今まで生きてきて。
 そして、今日、死ぬのだと、妖に食べられるのだと思っていた。

 それなのに。

「……死んでない」


 そう、鏡に映る私の頬は、少し赤い。
 血が通っている、証拠だった。

「死、にございますか?」

 無感動な瞳を瞬かせて、玲凛が手をとめた。

「……あ」

 思わず声に出してしまったけれど。
 いつかは、旦那様に食べられる身なのだから、こんなことを思うのはおかしいのかもしれない。

 今日になるか、少し先になるかの違いなだけなのだから。

「花嫁様?」

 考えて俯いた私に、怪訝な声で、玲凛は、呼ぶ。

「あの、玲凛」
「はい、なんでしょう、花嫁様」
「今までの花嫁は、だいたいどのくらいで、旦那様の……雅楽様の、糧になれたのかしら?」
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