今度こそあなたの幸せを願える私になりたい(リメイク)

夕立悠理

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血という絆/????の夜

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父に許諾証をもらってから、トントン拍子に、話は纏まり、ついに明明後日から学園に通うことになった。明明後日が丁度、今年度の入学式があるのだ。

 必要な荷物は既に、学園に送っている。あとは、必要な書類と制服を身に纏い、馬車に揺られればいいのだ。

 ついに、このウィルシュタイン家から出ることになる。友人と共に旅行をして数日家を空けることはあっても、こんなに長期間空けることは一度もなかった。

 まだ、自立できたわけじゃない。私は、まだ、父と母の庇護下だ。でも。

 それでも、この解放感は、誤魔化しようもない。父や母に触れられそうになる度に嫌悪感を押し殺さずにすむ。

 ──そんな解放感の余韻に浸ってなかなか寝付けずにいると、誰かが自室の扉をノックした。

 こんな夜更けに誰だろう。

 怪訝に思いながらも、扉を開ける。

「ねえさま……」
そこにいたのは、私の弟であるユストだった。

 「ユスト、怖い夢でも見たの?」
ユストは涙で目が真っ赤になっている。その顔をハンカチで拭いながら、尋ねると、ユストは首を振った。そして、私に抱きついてくる。

 「ユスト?」

 ユストに抱きつかれても嫌悪感を感じない。ああ、暖かいなと思うだけだ。確かにユストは私を慕ってくれていたけれど、最近は恥ずかしがって、あまりこのようは接触はなかったはずだ。

 「ねえさま……学園に行っても、帰ってくる?」
「それは、」
夏期休暇や冬期休暇には帰ってくる。そう言えばいい。でも、なぜかユストが言っているのが、そのずっと先──、私が学園を卒業した後のように聞こえて戸惑う。魔法騎士の位をもらったら、私はこの家には二度と帰らないつもりだった。

 答えられずにいる私に、ユストは抱きつく力を強くした。

 「アリサねえさま、僕、ねえさまのこと大好きだよ」
「……ええ、私もよ。ユスト」

 ユスト。可愛い可愛い私のたった一人の弟。

 こんなにも、可愛い弟がいるというのに、私は血よりも濃い絆を求めている。

 愚かな姉でごめんなさい。

 「……夏期休暇には、帰ってくるわ」

 結局、私の口から絞り出せたのは、そんな言葉だった。


 ◇ ◇ ◇


 「はあっ!」
上下左右から、降りかかってくる石の礫を切る。

 ──ようやく、一段落ついただろうか。

 気を緩めそうになったところで、音もなく左から、針が投げつけられる。寸前のところで、剣で叩き落としたが、危ないところだった。

 肩で息をする。

すると、ぬるりと影から、師が出てくる。師から言われることの大方の予想はついている。

 「やはり、左の反応が遅いですな。その分、耳でカバーなさろうとするのはいいですが、いつも敵が音を立ててくれるとは限りませんぞ」
わかっている。そんなこと。

 「いったいどこの誰に左目をくれてやったのやら。王族の目には、時に万の富よりも価値があるとはいいますが……」

 「……」
後悔はない。後悔を消すために、左目を使ったのだから。

 「まぁいいでしょう。今日は弟子の門出じゃ」

 そう言って、師はおもむろに、右手を差し出した。

 「……?」
「ちょっとした餞別です」

 翡翠の袋に入ったそれを開けようとすると、止められる。
「あーあー! それはちょっとしたお助けアイテムなので、万が一のときに使うように」

 そんな万が一が来ないように。ということだろう。師に礼をいって、別れる。

 なんにせよ、今日から新しい日々の始まりだった。
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