3 / 76
二度目の生
3 脱出
戦場に出るまでの一か月間は城に滞在することになっている。それは、私はこの国の歴史も戦争も知らないからだった。歴史は魔物たちがいかに残虐なことをしてきたのかということを教えられた。何も、できない小娘とはいえ、聖女が魔物側に寝返られたとあっては困るからだろう。既に何度も聞かされているが、怪しまれるといけないので、まるで初めて聞いたかのように振舞う。
私は、一か月のほとんどを、ただ淡々と言われるがままにすごした。
「本を取ってくるので、少しだけ待っていて貰えませんか」
「しかし美香、私は、貴方の護衛です。いかなる時でも貴方の傍に控える義務がある」
城内の図書室の入り口で、そういうと、ガレンは困ったような顔をした。
「安心してください、ただ、本を取ってくるだけですよ。図書室には、身分証がいるから怪しいものは入ってこれないでしょう。それとも、私を信用できませんか……?」
「……わかりました。そこまでおっしゃるなら」
ガレンは少し渋ったが、最終的には私一人で図書室に入ることを許可してくれた。
――やった! このために、ずっと大人しく言うことをよく聞く聖女を演じてきたのだ。
図書室に入る前に、おそらく最後になるだろう、ガレンの様子を盗み見る。
深い青の髪も、金の瞳も、相変わらずカッコいい。
私がこれからすることによって、ガレンは罰せられてしまうのだろう。でも、今回は教えられてくれていないが、ガレンは実はこの国の第五王子なのだ。罰といっても、大したことにはならないだろう。
そんなことを考えていると、危うくガレンと目があいそうになり、慌てて視線をそらして図書室の中に入る。
図書室の中に入ってすぐ、身分証を提示し、ゲートをくぐる。そしてそのまま、奥へ奥へと進んでいく。
奥へ進むに従って、人影はなくなっていった。
最奥へと辿りつき、足をとめる。
一番最後の棚の一番右端の本を前の生で言われた通りに動かす。
左、右、左、上、左、左、下、右
動かし終わると、本棚は、私でも横へスライドできるほど、軽くなる。これには、魔法が使われているのだとか、何だとか、ガレンは言っていた。
横へ本棚をスライドさせると、扉が現れた。この国でも一部の人間しか知らない、隠し通路だ。
私は、前回の生で一度だけ、万が一の時のために、とガレンと一緒に、この道を通った。
その時に、ガレンは、実は自分は王子なのだと明かしてくれた。
今生と違い、そんな風に信頼してくれたガレンがなぜ、私を、見捨てたの。
恨みがましい思いを首を振って切り捨てる。
何故かはわからないけれど、せっかく、二度目の生を手に入れたんだ。そういう考え方は、やめよう。
扉の中に入り、本棚を横にスライドさせて元に戻す。これで、隠し通路を知らない人間から見たら何の変哲もない、本棚に見えるだろう。
いずれ、隠し通路を使ったことがガレンにばれてしまうことがあったとしても、今世では隠し通路のことを教えてもらっていないから、時間が稼げるはずだ。
案外、聖女は元の世界に戻ったと思ってくれるかもしれない。
――さようなら、初恋の人。
小さくそう呟いて、私は、隠し通路の中へと進んだ。
私は、一か月のほとんどを、ただ淡々と言われるがままにすごした。
「本を取ってくるので、少しだけ待っていて貰えませんか」
「しかし美香、私は、貴方の護衛です。いかなる時でも貴方の傍に控える義務がある」
城内の図書室の入り口で、そういうと、ガレンは困ったような顔をした。
「安心してください、ただ、本を取ってくるだけですよ。図書室には、身分証がいるから怪しいものは入ってこれないでしょう。それとも、私を信用できませんか……?」
「……わかりました。そこまでおっしゃるなら」
ガレンは少し渋ったが、最終的には私一人で図書室に入ることを許可してくれた。
――やった! このために、ずっと大人しく言うことをよく聞く聖女を演じてきたのだ。
図書室に入る前に、おそらく最後になるだろう、ガレンの様子を盗み見る。
深い青の髪も、金の瞳も、相変わらずカッコいい。
私がこれからすることによって、ガレンは罰せられてしまうのだろう。でも、今回は教えられてくれていないが、ガレンは実はこの国の第五王子なのだ。罰といっても、大したことにはならないだろう。
そんなことを考えていると、危うくガレンと目があいそうになり、慌てて視線をそらして図書室の中に入る。
図書室の中に入ってすぐ、身分証を提示し、ゲートをくぐる。そしてそのまま、奥へ奥へと進んでいく。
奥へ進むに従って、人影はなくなっていった。
最奥へと辿りつき、足をとめる。
一番最後の棚の一番右端の本を前の生で言われた通りに動かす。
左、右、左、上、左、左、下、右
動かし終わると、本棚は、私でも横へスライドできるほど、軽くなる。これには、魔法が使われているのだとか、何だとか、ガレンは言っていた。
横へ本棚をスライドさせると、扉が現れた。この国でも一部の人間しか知らない、隠し通路だ。
私は、前回の生で一度だけ、万が一の時のために、とガレンと一緒に、この道を通った。
その時に、ガレンは、実は自分は王子なのだと明かしてくれた。
今生と違い、そんな風に信頼してくれたガレンがなぜ、私を、見捨てたの。
恨みがましい思いを首を振って切り捨てる。
何故かはわからないけれど、せっかく、二度目の生を手に入れたんだ。そういう考え方は、やめよう。
扉の中に入り、本棚を横にスライドさせて元に戻す。これで、隠し通路を知らない人間から見たら何の変哲もない、本棚に見えるだろう。
いずれ、隠し通路を使ったことがガレンにばれてしまうことがあったとしても、今世では隠し通路のことを教えてもらっていないから、時間が稼げるはずだ。
案外、聖女は元の世界に戻ったと思ってくれるかもしれない。
――さようなら、初恋の人。
小さくそう呟いて、私は、隠し通路の中へと進んだ。
あなたにおすすめの小説
召喚から外れたら、もふもふになりました?
みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。
今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。
すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。
気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!?
他視点による話もあります。
❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。
メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋
二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
恋愛は見ているだけで十分です
みん
恋愛
孤児院育ちのナディアは、前世の記憶を持っていた。その為、今世では恋愛なんてしない!自由に生きる!と、自立した女魔道士の路を歩む為に頑張っている。
そんな日々を送っていたが、また、前世と同じような事が繰り返されそうになり……。
色んな意味で、“じゃない方”なお話です。
“恋愛は、見ているだけで十分よ”と思うナディア。“勿論、溺愛なんて要りませんよ?”
今世のナディアは、一体どうなる??
第一章は、ナディアの前世の話で、少しシリアスになります。
❋相変わらずの、ゆるふわ設定です。
❋主人公以外の視点もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字が多いかもしれません。すみません。
❋メンタルも、相変わらず豆腐並みなので、緩い気持ちで読んでいただけると幸いです。
(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!
みん
恋愛
双子の姉として生まれたエヴィ。双子の妹のリンディは稀な光の魔力を持って生まれた為、体が病弱だった。両親からは愛されているとは思うものの、両親の関心はいつも妹に向いていた。
妹は、病弱だから─と思う日々が、5歳のとある日から日常が変わっていく事になる。
今迄関わる事のなかった異母姉。
「私が、お姉様を幸せにするわ!」
その思いで、エヴィが斜め上?な我儘令嬢として奮闘しているうちに、思惑とは違う流れに─そんなお話です。
最初の方はシリアスで、恋愛は後程になります。
❋主人公以外の他視点の話もあります。
❋独自の設定や、相変わらずのゆるふわ設定なので、ゆるーく読んでいただけると嬉しいです。ゆるーく読んで下さい(笑)。
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
召喚先は、誰も居ない森でした
みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて──
次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず──
その先で、茉白が見たモノは──
最初はシリアス展開が続きます。
❋他視点のお話もあります
❋独自設定有り
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。