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二度目の生
4 城の外
隠し通路を進む。
「次を右に、曲がって……、その次は……」
ガレンに前生で言われたとおりに、進んでいく。隠し通路は、あまり使われていないせいか、少しかび臭い。思わずくしゃみをすると、音が壁に反響する。
「そろそろかな」
ようやく光が見えてきた。光に目を細めて、先に進む。先に進むと、見晴らしのいい丘の上にでた。
「……わぁ」
見るのは二度目だというのに、思わず声を上げる。何度見ても、ここは景色がいい。丘の上には美しい花々が咲き誇り、甘い香りを漂わせている。ここだけみると、本当に戦争をしている国だとは思えないほど、美しい景色だった。
――と、いけない。
あらかじめ用意していた、布で頭をすっぽりと覆う。どこから見ても、不審者だが、仕方ない。この世界には黒髪は存在しないのだ。
丘を下り、城下町……ではなく、森の方へと向かう。城下町ではこの格好は目立ちすぎる。確か、森には、染料になるクレアの実があったはずだ。クレアの実で、髪を染めてから、城下町へでよう。
■ □ ■
森は薄暗く、不気味だ。でも、クレアの実は、光の届かないほど奥の方にあるのだ。進まなければならない。
――バサバサッ
大きな音に、びくりと体を揺らす。
……ただの、羽音だった。今世はともかく、前世では、何度も森で野宿をしたというのに情けない。前世では、こんな物音一つにびっくりしなかったのに。そう思って、気づいた。傍にガレンがいないからだ。ガレンはいつも――本物の聖女が現れるまで――私のことを守ってくれた。だから、安心していられたのだ。
心細くなりそうになって、叱咤する。
「ガレンは、いない」
もう、聖女として操り人形のまま死ぬのはたくさんだ。私は、私として生きていくんだ。
護身用のナイフを片手に、森の奥へと進んでいく。すると、獣が私の前に飛び出してきた。
――狼だ。
狼は、私を睨みつけていて、今にも飛び掛かってきそうだ。
「……っ」
躊躇した。私は、護身として剣をガレンから習っていたとはいえ、実際にその刃を生物に向けたことはなかった。その役目は全てガレンが担ってくれていたから。
狼が跳躍する。
――噛まれる。
そう思って、ぎゅっと目を閉じ身を竦めたが、いつまでたっても、衝撃は襲ってこない。
「…………?」
そのことを疑問に思い、目を開けると狼は、切り倒されていた。狼の横には、男がいた。おそらく男が狼を切り倒したのだろう。男も私と同じく布で頭を覆っており、体格から男だということがわかるものの、その風貌は謎だった。
男は狼から私に向き直ると、頭を覆っていた布を外した。
男を覆っていた布が、外れ、男の風貌が露わになる。
ガレンほどではないけれど、この男もまた端正な顔立ちをしていた。白銀の髪にルビーのような深紅の瞳。そして、何より、男の耳は尖っている。
「魔物……!?」
「次を右に、曲がって……、その次は……」
ガレンに前生で言われたとおりに、進んでいく。隠し通路は、あまり使われていないせいか、少しかび臭い。思わずくしゃみをすると、音が壁に反響する。
「そろそろかな」
ようやく光が見えてきた。光に目を細めて、先に進む。先に進むと、見晴らしのいい丘の上にでた。
「……わぁ」
見るのは二度目だというのに、思わず声を上げる。何度見ても、ここは景色がいい。丘の上には美しい花々が咲き誇り、甘い香りを漂わせている。ここだけみると、本当に戦争をしている国だとは思えないほど、美しい景色だった。
――と、いけない。
あらかじめ用意していた、布で頭をすっぽりと覆う。どこから見ても、不審者だが、仕方ない。この世界には黒髪は存在しないのだ。
丘を下り、城下町……ではなく、森の方へと向かう。城下町ではこの格好は目立ちすぎる。確か、森には、染料になるクレアの実があったはずだ。クレアの実で、髪を染めてから、城下町へでよう。
■ □ ■
森は薄暗く、不気味だ。でも、クレアの実は、光の届かないほど奥の方にあるのだ。進まなければならない。
――バサバサッ
大きな音に、びくりと体を揺らす。
……ただの、羽音だった。今世はともかく、前世では、何度も森で野宿をしたというのに情けない。前世では、こんな物音一つにびっくりしなかったのに。そう思って、気づいた。傍にガレンがいないからだ。ガレンはいつも――本物の聖女が現れるまで――私のことを守ってくれた。だから、安心していられたのだ。
心細くなりそうになって、叱咤する。
「ガレンは、いない」
もう、聖女として操り人形のまま死ぬのはたくさんだ。私は、私として生きていくんだ。
護身用のナイフを片手に、森の奥へと進んでいく。すると、獣が私の前に飛び出してきた。
――狼だ。
狼は、私を睨みつけていて、今にも飛び掛かってきそうだ。
「……っ」
躊躇した。私は、護身として剣をガレンから習っていたとはいえ、実際にその刃を生物に向けたことはなかった。その役目は全てガレンが担ってくれていたから。
狼が跳躍する。
――噛まれる。
そう思って、ぎゅっと目を閉じ身を竦めたが、いつまでたっても、衝撃は襲ってこない。
「…………?」
そのことを疑問に思い、目を開けると狼は、切り倒されていた。狼の横には、男がいた。おそらく男が狼を切り倒したのだろう。男も私と同じく布で頭を覆っており、体格から男だということがわかるものの、その風貌は謎だった。
男は狼から私に向き直ると、頭を覆っていた布を外した。
男を覆っていた布が、外れ、男の風貌が露わになる。
ガレンほどではないけれど、この男もまた端正な顔立ちをしていた。白銀の髪にルビーのような深紅の瞳。そして、何より、男の耳は尖っている。
「魔物……!?」
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