聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理

文字の大きさ
27 / 76
二度目の生

27 アストリア

「ん……」
目を覚ますと、見覚えのある天井が映っていた。慌ててがばり、と体を起こす。
「なんで!?」
私の間違いじゃないとすれば――それは、アストリアのものだった。控えめなノックと共に、誰かが部屋に入ってくる。
「目覚めましたか、美香」
入ってきたのは、ガレンだった。
「ガレン、どうして……」
ガレンは、私をアストリアに連れ戻すといったが、こんな手荒な方法をとるような人じゃなかった。私が、困惑しているとガレンは苦笑した。

「申し訳ありません。このような手荒な方法を取る気はなかったのですが、王命が下ったのです」
 聖女が現れていない現在の戦況は、魔物側がかなり優勢だと聞いている。このままでは、人間側の敗戦になるだろうと。そこで、聖女を早く連れ戻せ、という王命が下ったのだろう。

「我々にはどうしても、貴方が必要なのです」
違う。必要なのは、聖女だ。そして、私は聖女ですらない。何の力も持たないただの小娘だ。私が首を振ると、ガレンは困ったように笑う。

「いいえ、美香。貴方は、貴方が、聖女だ」
嘘。ガレンは知っているはずだ。私が聖女ではないことを。そして、処刑されたことも。
「ねぇ、ガレン――」
そのことを言おうとしたところで、ノックと共に新たな人物が部屋に入ってくる。入ってきたのは、侍女のマリーだった。

 「ああ、聖女様! 魔物に連れ去られて何と心細かったでしょうか!」
私は、自分の意志で抜け出したのに、それも魔物のせいになっているらしい。ガレンを見ると、目を逸らされた。
「……違うよ。私は、私の意志でこの城から出て行ったの」
「魔物たちにそのように言うよう脅されたのですね……! なんて可哀そうに」
だめだ。何を言っても通じる気がしない。ため息をつく。どのくらい眠っていたのかはわからないが、魔法をある程度使っているだろうとはいえ、クリスタリアからアストリアまでは相当な距離があるはずだ。服を着替えてしまいたい。とりあえず、服を着替えるから、といってガレンには席を外してもらう。

 用意された服は、やはり、というか、聖女用の煌びやかなものだった。以前なら、この服装に舞い上がっていたが、今は、違う。嫌悪感がわくだけだ。ため息をつきながら、服に袖を通す。

 「……帰りたい」
私のことを聖女だから巫女だからではなく、美香として友人だといってくれた魔王のいるクリスタリアに。

 泣きそうになって頬を叩く。泣いてちゃダメ。自分で何とかするんだ。

 深く呼吸をする。そして、クリスタリアでの日々を思い出す。子守唄を歌ってもらったこと。一緒に眠ったこと。そして、月下氷人をもらったこと。

 全部、私の中にある。だから、大丈夫。

 「よし!」
クリスタリアに戻るために頑張ろう。

感想 197

あなたにおすすめの小説

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

巻き込まれではなかった、その先で…

みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。 懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………?? ❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。 ❋主人公以外の他視点のお話もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。 ❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。

元・聖女ですが、旦那様の言動が謎すぎて毎日が試練です

おてんば松尾
恋愛
かつて“奇跡の聖女”と呼ばれたステファニー・シュタインは、光の魔力で人々を癒す使命を背負い、王命によって公爵レイモンドと政略結婚を果たす。だが、奉仕の日々に心はすり減り、愛なき結婚生活はすれ違いの連続だった。 彼女は忘れられた灯台で不思議な灯台守と出会う。彼の魔法によって、ステファニーは聖女としての力と記憶を失うことを選ぶ。過去も夫も忘れた彼女は、まるで別人のように新しい人生を歩み始めるが―― 他サイトで完結している作品を上げます。 よろしければお読みください。

召喚から外れたら、もふもふになりました?

みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。 今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。 すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。 気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!? 他視点による話もあります。 ❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。 メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋

恋愛は見ているだけで十分です

みん
恋愛
孤児院育ちのナディアは、前世の記憶を持っていた。その為、今世では恋愛なんてしない!自由に生きる!と、自立した女魔道士の路を歩む為に頑張っている。 そんな日々を送っていたが、また、前世と同じような事が繰り返されそうになり……。 色んな意味で、“じゃない方”なお話です。 “恋愛は、見ているだけで十分よ”と思うナディア。“勿論、溺愛なんて要りませんよ?” 今世のナディアは、一体どうなる?? 第一章は、ナディアの前世の話で、少しシリアスになります。 ❋相変わらずの、ゆるふわ設定です。 ❋主人公以外の視点もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字が多いかもしれません。すみません。 ❋メンタルも、相変わらず豆腐並みなので、緩い気持ちで読んでいただけると幸いです。

召喚先は、誰も居ない森でした

みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて── 次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず── その先で、茉白が見たモノは── 最初はシリアス展開が続きます。 ❋他視点のお話もあります ❋独自設定有り ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。