【完結】悪役令嬢な私が、あなたのためにできること

夕立悠理

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二章

空虚な気持ち

「……当然でしょう? だって、あなたは私の願いを叶えてくれたんだから、だから利用ぐらい……」
 悪魔は、三年、時間を戻してくれた。
 それによって、私はもう一度リッカルド様と出会えた。

 悪魔には感謝してもしきれない。

『我は……』

 悪魔は、一度言葉を切り、息を吐き出した。

『……いや』
「悪魔?」
『お前の後悔が、お前だけのものであるように。我の後悔も抱えたまま歩んでいくしかない。ただ……』

 悪魔は、一瞬、泣き笑いのような顔を浮かべた。

『幸せになれ、ソフィア』
「ど、して……?」

 どうして、悪魔は私の幸せを願ってくれるの?

『それだけが、望みだ。時を戻した代償を望むなら、お前が幸せになれ』
「そんなの……無理よ」

 私は、破滅して当然の人間で。
 だって、私のせいで死んだリッカルド様はもう二度と帰ってこなくて。

 それなのに、どうして、私だけが。

『無理じゃない』

 子供のように首を振る私の髪を、細くて長い指先が撫でる。
『もとより、お前とあいつを指名したのは、女神だろう。お前のせいじゃない』
「でも、私が、リッカルド様を……」

 殺したんだわ。
 メリア様と想いあっていることを知っていたのに。自分を見て欲しくて。

『ソフィア』

 悪魔が私を呼ぶ。
 柔らかく、優しい声で。

『幸せになっていい。あの痛みを忘れなければ、幸せになっていい』

 それはまるで悪魔自身に言い聞かせているようでもあった。

「……悪魔?」
『さて……そろそろ我は行く』
「え、待ってよ!? 行くってどこに!?」

 神になれなかった悪魔はどこに行くというのか。

『言っただろう。我の国でも帰るさ』

 そう言って微笑むと、悪魔はもう一度私の髪を撫でた。

『さて。ではな、ソフィア』

 その声は、柔らかく慈愛に満ちていた。

 ありがとうも、心臓を三百個集めてないのに、ごめんなさいも言わせずに、悪魔はその言葉を最後に本当に姿を消してしまった。
  
◇◇◇

 朝日と共に、目を覚ます。
「おはよう、悪魔……」

 いつものように悪魔に話しかけようとして、その気配がないことに気づく。
「そうだった、悪魔は、もう……」

 いない。
 あのあと、私が何度も呼びかけても、探しても、悪魔が応えてくれることはなかった。

「学園に行かなくちゃ」

 今日も授業がある。
 でも、目的は当に見失ってしまっていた。

 魔獣騎士科に入ったのは、魔獣の心臓を効率よく集めるため。
 その目的がなくなった今、何のためにいけばいいのかわからなかった。

 空虚な気持ちを感じながら、身支度を整え、女子寮から学園へと向かう。
「おはよう、ソフィア嬢」
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