次女ですけど、何か?

夕立悠理

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小学生編

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「……これは!!」
私は、とある一枚の紙を発見した。この紙を見つけることができなかったら大変だった。
 今見つかったのは、不幸中の幸いである。

 ■  □  ■

 勉強は、嫌いだ。正確に言うと、大嫌いだ。
 そんな私は両親にある、お願い事をしている真っ只中だった。
「お願いします、お父様、お母様」
「そうはいってもねぇ……」
「勉強についていけないわけではないんだろう」
 その通りだ。小学一年生の勉強についていけないほどではない。いくら、私立で私の頭が平均並だとしても──前世の記憶もある私は一年生の勉強はやっていける。やっていける……はず。
 私が問題に思っているのは、前世から苦手な理科や社会。そして、一番は『ヤツ』だ。カリキュラムを簡単に記した紙を発見したのでその時にわかったのだが、英語に鳳海学園は力を入れており、高学年に上がると早速勉強が始まってしまう。英語は私の前世からの宿敵だ。
 「英語話せたってこのクッキーの味は変わらないじゃん」
私がそういったとき、友人に返された
「そのクッキーの味は変わらないけど、他にももっといっぱいおいしいものを海外に食べにいけるよ」
という言葉は今でも心に残っている。
 その言葉に衝撃を受けたとき、私の英語の力はすでにどうにもできないレベルだった。
 そんな前世の反省を生かし、私は英語や理科社会に早めに取り組んでいきたい。
 塾みたいなものに行きたいのだ。

 勉強したいと言うのなら喜んで通わせてくれると思ったのだが、頷いてくれない。お金がないのならわかるが、ここは道脇家だ。お金ならある。では、なぜだろうか。
「桜ちゃんはしていないし……」
 でました、姉基準。確かに年上である姉がしていない習い事をしたい、といって頷かれないのはわかる。でも、姉は勉強ができる。私とは違って賢いのだ。その辺りを考慮して頂きたい。


「いいのではないですか?せっかく楓ちゃんが、学ぼうとしているんです。知識がたくさんあることは悪いことではないですし、きっと将来家の役に立つわ」
 そういいながら階段を下りてきたのは、姉だった。
 意外だった。姉が私を助けてくれるなんて。
「その知識で私を支えてくれるのでしょう?」
そういって、姉はぎゅっと私の手を握った。

 淳お兄様が暫定的に跡取り、ということになっているが、このままいくと姉は跡取りではないにしろ、重要なポストに就くだろう。
 ――もちろん、私は姉を支えようなんて全く思っていない。口ではああいっているが、姉は私の力なんかお呼びではないだろうし、姉たちには関わらずに済むように道脇家とは縁もゆかりもない会社で働こうと思っている。

 そうでしょう?と可愛らしく首を傾げられても頷くことはできない。

でも、うちのお姫様一号の力は絶大である。

「……そこまで考えていたのか」
いえ、全く。これっぽっちも考えておりません。
 育ててもらった恩は感じているが、別の形で返したい。道脇グループで働くのではなく。
 私が首をぶんぶんと音が出るくらいに振っているのに、そのことは全く目に入らないようで、父はうんうんと頷いた。これだけ振っても見えないとは、眼科に行った方がいいのではないだろうか。

「わかった。明日から家庭教師の先生についてもらうことにしよう」
明日から週に二日家庭教師の先生についてもらうことと、英語教室に週に一日通うことが許可された。

 嬉しい。嬉しいのだが、事態がおかしな方向に進んでいる。
 いや、でも今はまだ小学一年生だし、気が変わったでもいえば何とかなると信じたい。

 「ありがとうございます、お父様、お母様」
「頑張って勉強するのよ」
「はい」
 そして桜ちゃんを支えるのよ、と母が言う前に部屋に退散した。
 最後まで聞いたらきっと、戻れなくなる。そんな気がしたからだ。




「うおっしゃ!!」
 部屋に入って思いっきりガッツポーズをする。声がつい前世の方になってしまったのは、テンションが上がっていたので仕方がないだろう。
 しかし、こういうのも気をつけないと。武士はもうこりごりだ。
 これで悪役から一歩遠のいた。道脇とは縁もゆかりもない会社に就職し、荒稼ぎしてみせる。それで、今まで育てて貰った際に発生したお金を少しずつ父と母に返す。

 よし、この方向でいこう。


 ……とりあえず、願いは聞き入れてもらった。
 姉がどういう考えがあって私を助けてくれたのかはわからないが、助けてもらった以上お礼を行った方がいいだろう。
 姉は喉が渇いたからリビングに降りてきただけのようで、父が頷いたらさっさと部屋に帰ってしまった。
 今も、部屋にいるはずだ。


 ――コンコン

  「はい、どうぞ」
 姉はドアを開け、迎えいれてくれた。姉の部屋を一言で表すなら、女の子の部屋だ。
 大小さまざまなぬいぐるみ、レースのカーテン、ピンクの壁紙、花の飾りがついた入れ物……私の部屋とは大違いだ。部屋にあるのは、クマさんグッズとクッキーの缶ぐらいしかない。
 こういうところから差がでるのだろうか。

「どうしたの?」
そう言いながら、姉はボフンとベッドに腰掛けた。ぽんぽん、と隣を勧められたが、長居するつもりはないので断る。
「さっきはありがとうございます」
「思ったことを言っただけよ。……ああ、でも、楓ちゃんまた今度パーティが開かれること知ってる?」
 知りません。私は、その日風邪を引く予定なので。

 お礼も言ったし、部屋に帰ろう。くるりと背を向けると、姉の笑顔と目が合った。
 アレ。お姉様ついさっきまでベッドに腰掛けていらっしゃいましたよね。
 エスパーか。私の姉は超能力者なのか。新たな事実を新発見だ。

「パーティのこと知ってる?」
「いえ、存じ上げません」
「知ってる?」
「いえ」
「知ってる?」

 「……………………ハイ」
「私と一緒に行ってくれないかな?」
キラキラキラ。潤んだ瞳が目に眩しい。
 「………………わかりました」
「ありがとう!約束だよ」
知らぬ間に指切りをさせられ、気付いた時には私の部屋に戻っていた。
 姉が指切りを知っていたとは意外だ。

「……はぁ」
 ――とにかく、姉に貸しを作ってはならないことが良くわかった。
 これまで以上に、姉に関わるのはよそう。

 そう固く決心し、何だか一気に疲れた私はそのまま眠りについた。

 ■  □  ■

早めに家庭教師の先生についてもらったおかげで、私の理科社会の苦手は少しだけ改善された。
 まだ、理科も社会も学校では始まっていないので、この調子で頑張りたい。
 英会話の方はまだまだ……だけど。そこは、長期戦で臨む覚悟だ。

 私の学園生活はそれなりに充実しつつある。二点を除いて。

「……はぁ」
「溜息をつかれて、どうされたのですか楓様」
一つ目は、この呼び方だ。なぜ、私に様をつける。今までスルーしてきたが、七月に入ってもそのように聞こえる。さすがに聞き間違いではないだろう。
 特に私の取り巻きの子たちだ。出来れば、この子たちと友達になりたい。
 そのためには、理由をはっきりと聞きだし、どうにか改善しなければならない。

 二つ目にして最大の悩みである、大魔王様の睨み攻撃だ。
 居心地が悪い。悪すぎる。そろそろどうにかして頂きたい。私を一日に一回は睨んでくるのは大魔王様の日課なのだろうか。

 この二つを片付けて、私は夏休みを楽しみたいのだ。 

 出来る気がしないが、頑張ろう。 


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