次女ですけど、何か?

夕立悠理

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中学生編

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どうしよう。淳お兄様の右腕を目指すというのは、かなりいい案だと思うんだけど、頑張るとお祖父様に誤解されるのがなぁ。

「やぁ、久しぶりだね道脇さん」


 私が教室のすみでうなっていると、赤田に声をかけられた。夏休み明けだというのに、その笑みは爽やかだ。さぞ、いい夏休みだったに違いない。

「お久しぶりです、赤田様」


 あれ? 赤田の隣に前川がいない。いつもなら、赤田と一緒に出没するのに。疑問が顔に出ていたのか、赤田は苦笑した。


 「零次なら、休みだよ。風邪を引いたんだって」

それは大変ですね、と相づちを打ちながらほっとする。前川と会うのは、海で会ったとき以来だ。あのとき、かなり泣いてしまったのでまだ会うのは少し気恥ずかしい。

 何か言付けでもあれば、とのことだったので、赤田に交換日記を渡してもらうことにした。次は、前川の番なのだ。


 「もう二学期に入ったから、そろそろ運動会があるね」

! そうだ、運動会がある。運動会と言えば、お友達ゲットのチャンス――……ではなく、いや、そうなのだが、忙しいの代名詞だ。特に私は、生徒会の執行部に入ってしまったので、初等科の子たちのサポートもある。運動会の日程が多少ずれているのが幸いだが、それでもかなり忙しい。

 よし、気を引き締めて頑張るぞ!


 ■ □ ■


 「……隼に近寄らないで!」

――ええと。私は、今初等科の子たちをサポートするために、初等科の生徒会室を訪れている。中等科の生徒会が初等科をサポートすることは毎年のことなので、皆和やかに受け入れてくれ――なかった。


 前川亜季まえかわあき――前川の妹だ。私と赤田が、生徒会室にはいるなり、赤田の足にしがみついて、私を睨んでいる。


 ……これは、あれだな。流石の私も、このような場面は更ちゃんを含め二度目なのでどういう対応を取ればいいかわかる。屈んで、亜季ちゃんの目線に合わせて私は貴方の敵じゃないですよアピールをする。


「実は、ここだけの話なのですが、私には好きな人がいるのです」

亜季ちゃんの耳元でそっと囁くと、亜季ちゃんが私を目つきを緩めてくれた。よし、正解みたいだ。

「だから赤田様のことは何とも思っておりません」

そういうと、今度こそ睨むのを完全に辞めて、私と目があう。

「……本当?」

「ええ、本当です」


 私が、そう言うと赤田はごめんね、と苦笑した。それに、いいえ、と笑って返して、席に座る。

 それにしても、小学一年生を誑かすとは、赤田も罪な奴め。ちらりと赤田を見ると、赤田と目があったので、笑って何でもないです、と答える。もしかして、赤田は地獄耳なのではなかろうか……?


 ■ □ ■


 今日の生徒会での仕事を終え、道脇家本邸に戻る。


 「はぁ……」

どうしよう、全然考えてなかったけれども、淳お兄様が隣の部屋だなんて。好きだと自覚してから、一気に恥ずかしくなる。物音がうるさかったりしないだろうか? 大丈夫? 迷惑かけてない?

 くそう、今までこんなこと気にしなかったのにな。こんなことなら、リカちゃんの恋愛論をまともに聞いておけばよかった。前世でも好きな人とかいなかったから、こういうときどんな態度を取ればいいのか全然わからない。

 でも、確かにリカちゃんの言う通り、恋をすると世界が変わるなぁと思う。いつもより、少し長い時間をかけて身だしなみを整えて見たり、こうして隣の部屋を気にしてみたり。


 ……まぁ、告白する前から振られているんだけどね!


自分で思ってて若干空しくなってきた。

「……楓?」

「はい」

どうぞ、といいかけてはっとする! 部屋は汚くないだろうか。読みかけの漫画とかちゃんと片付けたっけ。襖が開く前に、こっそり漫画を隅に押しやる。


 「どうしたんですか、淳お兄様?」

訪問客は予想通り、淳お兄様だった。淳お兄様の相変わらずの格好良さに、思わず声が漏れそうになるが、寸前で抑える。私の恋愛脳いい加減にしろ。

「その、改めて言っておこうと思って」

改めて……って何だろう。淳お兄様の深刻そうな表情で察した。婚約のことだ。

「お祖父様は、僕が説得するから安心して」

「……はい、わかりました」

二回だめだって言ったお祖父様は絶対中の絶対だ。そんなお祖父様を説得するなんて、改めて、淳お兄様は、お姉様のこと本当に好きなんだなぁ。そう思いながら、頷くと淳お兄様はなぜだか、苦しそうな顔をした。


 「淳お兄様……?」

「ごめん、何でもないよ。……それだけだから、それじゃあ」

またね、そういって襖は閉められた。


 完全に襖が閉められた後、ため息をつく。わかっていても、間接的に振られるって、辛いなぁ。
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