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首から上が人の顔へと真似できる 森の化け物を倒し一時村の英雄となった男とその息子の話

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草木の芽生える
のどかな村があった

その小さな村の近くには
森が隣接していた


一歩踏み込めば
どこまでも深く続く森には
古く昔から
ある化け物が住み着いていると
村民たちの間で囁かれていた

人の近づかぬ森

だが猟師として働いていた私・ヒット(男)
は毎日のように
その森の浅瀬で狩りの仕事をしていた


朝がくると今日もいつものように
あの森へと出かける…

銃を磨いていると
部屋に息子・ジョーが
入ってきた

「おお、起きるのが
今日は早いなw」

「だって今日は
父さんが狩りの仕方を
教えてくれるんだろw‼

それが楽しみで
ふあぁ~あ…夜中から起きてたんだぁ」

そうだ…
今日は今年で12歳になる息子に
自分の仕事を継がせるため
そろそろ銃の扱い方を
教えようと思っていたんだ

「それじゃ出かけるとするかw!」

二人家を出て
森へと入っていった…


その時は
まだ”アイツ”に
運悪く遭遇するとも知らずに…


「良いか…落ち着いて
物音も立てずに構えるんだ」


私は
息子に銃を握らせ
後ろでそれを支える

バン!

銃口から煙が出た
その向こうには
狙ったうさぎが倒れていた

銃を下ろし
私は息子の頭を撫でる

「偉いぞw初めてにしては
上出来だ」

「へへwこれで僕も父さんの
仕事の手伝いができそうだね♪」


そして獲物が居るであろう
人のうろつかない
獣道を通り
別の場所へと移動しようとした…

だがその時…

背後の草陰から
物音が聞こえてきた

「‼」

私は自分の後ろへと
息子を押しやって
物音の聞こえた草陰へと
銃口を向けた


すると
その茂みから
少女の足にミミズのような
触手が百本生えた怪物が現れた

まさか…!森の化け物か!


「父さん…あっあれって…!」


息子は私の背中にしがみつく

「…」

人が近づかないようにしてきた
化け物だ…

このまま逃げれるのは無理かもしれない
なら…一か八か倒すしか無い!

私は
その怪物の額にめがけて
銃弾を発した

バン!

「キャキキイイイイ…!」

怪物は
後ろの茂みへと倒れた

しかし触手はまだ地面を這っている
私自身、身震いをし
狙いを少し横に外してしまったらしい

だが次はこうはいかない!

弱っている今
あの怪物を倒せるチャンスなんだ!


「ジョーはそこに居なさい…」

息子をその場に置くと

私は薄暗い茂みに入った

森の奥へと逃げていく触手を
見つけるとすぐに追いかけ
開けた道へと奴を追い詰めた

私は再び銃を向けた

「これでトドメだ!」


だが
ヤツの頭に銃口を合わせると
その顔は何故か

息子…と同じ顔…になっていた

「…ジョー?」

そして化け物は
顔だけでなく
息子の声でこんなことを
言ってきた

「とう…さ…あ

いた…い!あだま…痛いよぉ…
た゛ずげで…!」


「フン…!
わかったぞ…
息子の顔そっくりに変身して
私を騙そうとしているんだな!

そんな手に引っかかるかw!

喰らえぇぇ‼」

静かな森に
銃の音が鳴り響いた


そしてその日から
私は村の英雄と呼ばれるように
なった…


だがそれと同時期に
私は教会へと通うようになっていた


「お願いします
息子にかけられた呪いを解いてください!」


ヤカンを頭に被せ顔を隠した
ジョーを横に連れ私は土下座する


ヤカンを外しジョーの顔を見つめ
シスターは冷酷な表情で
私にこう告げた

「彼は呪われてなどおりませんよ

…いやこの怪物は
すでにあなたの息子さんでは
ございませんでしたわよね…」

シスターの見下ろすジョーの姿は
首から上が
あの日私が倒した怪物の頭になっていた

「よくお聞きなさい…
おそらく貴方があの日見た
怪物の能力は人真似能力などではなく

挿げ替えをし宿主を変える寄生型能力でしょう」


シスターはしゃがむと
私の顔を向けさせる

「そこにいる化け物はやがて
触手が再生し
化けの皮を剥がすことでしょう

…真実を受け入れなさい

貴方は自分の一人息子を殺めたのです…!」


「そんなわけないだろ…!

私は息子なんて殺してないぃぃ…!」


少女の顔をした息子を連れ
私は教会から出ていった


顔が変わっても
言葉を発さなくなっても
この子はジョーだ…ジョーなんだ!


その後シスターの言うようには
触手は再生しなかったが

いくら言葉が喋れるようになっても
趣味や思考は少女に近く
以前の息子とは違うのは生活をしてても
気づいていた

私は仕事じゃなくとも
毎日
あの森へと出向き
今は怪物を殺した場所で
息子に花を供えている


「…ジョー」

そして息子の体になった元怪物の少女と
私の生活はこれから続いていく。


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