(ブラウザでクリックで動く挿絵も稀にあり)イラスト解説版 小説とあらすじを短編小説にしたもの 

田舎のニワカのハニワ

文字の大きさ
70 / 81

アルツハイマーの兄にとって今日の私は介護士の新田さん

しおりを挟む
住宅地の端にたつ青木家には
両親と私と兄の四人が住んでいる

庭にはペットの犬の紀州犬ヨシロウも居る

「ただいまー」

私達はまだ未成年だが・・・

実は兄は稀に見る若年性アルツハイマーという病気にかかっていた

症状は見当識障害、人物誤認

それ以外の症状はあまり少ない


「おかえりー・・・?」

兄の声だ
持病の自覚があるため
なるたけ家族や学校など周りの話を信じて生活している

今の相槌も誰が帰ってきたのかわからないまま部屋越しに返したのだろう

自分の部屋でカバンを置き着替えたあと私は
兄のいるリビングへと向かう

兄の症状が軽くなるためにも
会話は増やしたほうがいいだろう


「土日なのに運動部の部活があって疲れちゃったww
  小学生の時より忙しくて嫌んなっちゃうw
  ねっ!お兄ちゃん」

「・・・おっ!おおwはるみ・・・?」

兄の場合
昔のことは記憶の根本に残ってて覚えていやすいらしく
大体私は会話の前か語尾に「お兄ちゃん」とつけて呼びかけることで
兄に「妹のはるみ」と認識させている


「でっでもお前・・・中学生だったけ・・・?」

首を傾げ
申し訳無さそうに尋ねるお兄ちゃん

「もぉw当たり前でしょw」

こういうときは怒らず
笑顔で濁したほうが相手も話しやすくなるだろう

二人でしばらく
会話をしてると玄関外からヨシロウが吠える声が聞こえた

「わんわん!」

「なんか吠えてるぞ」

「きっと散歩の犬に反応してるのよ」

「わんわん!」

しかしあまりにも吠えるヨシロウに
兄はその声を気にし玄関向かって喋った

「こらータマミ!静かにしなさーい」


「えっ」

兄の発した言葉に一瞬思考が止まる

タマミはヨシロウを飼う前に
昔飼っていた茶色の柴犬のメス・・・

その瞬間
玄関外で子供の声の大声が聞こえてきた

「うぉー!ここんちの犬白いのから柴犬になっちゃった!」

・・・やばい!

慌てて私は立ち上がり
ヨシロウの元へと向かう

「チンチンも無いぞ・・・メスんなっちゃった・・・」

「ヨシロウ!」

玄関ドアを開け外へ出ると

音に反応した小学生男子たちが
走って庭から出ていった

構わずヨシロウへと目を向けると
そこにいたのはタマミだった


「・・・タマミ」

しかし名前を呼んでもキョトンとする

「ヨシロウ・・・おいで」

しゃがみ込み
手を差し出すと彼女は駆け寄ってきた

やっぱりこの子はヨシロウなんだ

「・・・」

今まで母に言いつけられていた約束

「お兄ちゃんの前ではお兄ちゃんに自分を自分と認識されるように
 会話でも気をつけて話すのよ?」

薄々勘付いていたがこの約束は
ヨシロウがタマミになったように
私自身が他人にされないようにするための約束だったんだろう

でも・・・
「間違われたらそのあと私を妹だって認識してもらえば良いんじゃない・・・?」

妙な好奇心にかられてか
この時私には悪い考えが芽生えてしまった…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

兄になった姉

廣瀬純七
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

処理中です...