1 / 2
1
しおりを挟む
「信じられない!!この世界、化粧水もないの!?」
ユミは思わず声を張り上げた。ユミは数日前、仕事終わりに急に異世界の王宮に飛ばされた。ネットの広告でよく見る「異世界転移」というやつだ。もちろん主人公補正も最強設定も持っていないため、「異世界からの客人」とは名ばかりで質素な小部屋に押し込められている。
「ケショウスイ……?なんですかそれは」
聞き慣れない言葉に眉をひそめたのは、護衛のエミリア。護衛として王がユミに当てがったのだ。護衛といえば聞こえは良いが、実際はただの監視である。
「化粧水っていうのは……なんて言ったらいいかしら。肌の調子が良くなる水よ。皮膚に潤いを与えて肌荒れを防ぐの」
ユミは持ち前の乏しい語彙でなんとか説明をする。この世界は美容が未発達であった。化粧水も乳液もないし、ファンデやコンシーラー、コントロールカラーという概念もない。
それはメイクが大好きなユミにとって、耐えがたいことだった。
「あれ?この世界って魔法があるのよね?じゃあもしかして美容も魔法で色々してるの?」
「いえ、美しくなるためには骨格・肌色そのものを変えなければなりませんよね?とても人体に負担がかかる行為ですし、原則法で禁じられています。簡単に顔を変えられては個人の識別に関わりますし」
メイクの概念がないため、こちらの世界の美容は「骨格ごと変える」、整形のような発想にしか至らなかった。そもそも美容に対する意識の高さがユミの世界とはまるで違うのだ。すっぴんが「当たり前」なのだから。
「ウッ、ありえない、耐えられない!ハイライトもシェーディングはおろか、基礎化粧品(スキンケア用品)までないなんて!!クレンジングもないのよね!?」
「……?」
一人騒ぎ立てるユミに、エミリアは困惑した顔で首を傾げた。
ユミはふかふかなベッドにだらしなく寝転がり、考える。化粧品がなければ作ればいいじゃない、と。
「ねえエミリア」
「なんでしょうユミ」
「私、化粧品を作るわ。自分のために、貴女のために、この世界の女の子のために……そうよ、クマもシミも消せるし色白にも小顔にもなれるのよ。鼻だって高く見せられる。私たちはいくらでも美しくなれるんだわ!」
がばりと起き上がり、エミリアの手を取ってそう言った。エミリアはその丸い目をぱちぱちと瞬かせる。
──そして、この日からユミの化粧品作りは始まったのだ。このとき、彼女はまだ、異世界における化粧品作りの大変さをわかっていなかった。
ユミは思わず声を張り上げた。ユミは数日前、仕事終わりに急に異世界の王宮に飛ばされた。ネットの広告でよく見る「異世界転移」というやつだ。もちろん主人公補正も最強設定も持っていないため、「異世界からの客人」とは名ばかりで質素な小部屋に押し込められている。
「ケショウスイ……?なんですかそれは」
聞き慣れない言葉に眉をひそめたのは、護衛のエミリア。護衛として王がユミに当てがったのだ。護衛といえば聞こえは良いが、実際はただの監視である。
「化粧水っていうのは……なんて言ったらいいかしら。肌の調子が良くなる水よ。皮膚に潤いを与えて肌荒れを防ぐの」
ユミは持ち前の乏しい語彙でなんとか説明をする。この世界は美容が未発達であった。化粧水も乳液もないし、ファンデやコンシーラー、コントロールカラーという概念もない。
それはメイクが大好きなユミにとって、耐えがたいことだった。
「あれ?この世界って魔法があるのよね?じゃあもしかして美容も魔法で色々してるの?」
「いえ、美しくなるためには骨格・肌色そのものを変えなければなりませんよね?とても人体に負担がかかる行為ですし、原則法で禁じられています。簡単に顔を変えられては個人の識別に関わりますし」
メイクの概念がないため、こちらの世界の美容は「骨格ごと変える」、整形のような発想にしか至らなかった。そもそも美容に対する意識の高さがユミの世界とはまるで違うのだ。すっぴんが「当たり前」なのだから。
「ウッ、ありえない、耐えられない!ハイライトもシェーディングはおろか、基礎化粧品(スキンケア用品)までないなんて!!クレンジングもないのよね!?」
「……?」
一人騒ぎ立てるユミに、エミリアは困惑した顔で首を傾げた。
ユミはふかふかなベッドにだらしなく寝転がり、考える。化粧品がなければ作ればいいじゃない、と。
「ねえエミリア」
「なんでしょうユミ」
「私、化粧品を作るわ。自分のために、貴女のために、この世界の女の子のために……そうよ、クマもシミも消せるし色白にも小顔にもなれるのよ。鼻だって高く見せられる。私たちはいくらでも美しくなれるんだわ!」
がばりと起き上がり、エミリアの手を取ってそう言った。エミリアはその丸い目をぱちぱちと瞬かせる。
──そして、この日からユミの化粧品作りは始まったのだ。このとき、彼女はまだ、異世界における化粧品作りの大変さをわかっていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる