それは、恋でした。

むう

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夏合宿

2-13

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***



「あ!沙奈ちゃん!!何処行ってたのー!?」

「すいません!ちょっとお散歩をしに…」



悼矢さんと合宿所の玄関で別れて、そのままキッチンに向かうと、渡邊先輩がすでに朝の支度をし始めていた。




「そうだったんだ。あたしが起きた時に、沙奈ちゃん居なかったから吃驚したよ~」

「申し訳ないです…」



そう言いながらあたしも、朝食の準備を始めた時にドタバタと誰かが廊下を走る音が聞こえた。




何・・・?




渡邊先輩とキッチンの入口から廊下を覗いてみると、准くんと悼矢さんがこっちに向かって走ってきた。




「悼矢―!どうしたのー!?」



渡邊先輩が悼矢さんに話しかける。





「助けてくれ!裕大が怖ぇぇ!!」

「あいつの低血圧は去年と全く変わらねぇ!!」

「嘘ぉ―!?」




准君と悼矢さんはゼーゼー息を切らしながら汗を拭う。


朝からこんなに汗かくなんて…



「と、とにかくあたしも行くよ!ほら、沙奈ちゃんも…っ」


ビクビクしながら渡邊先輩はあたしの手を引く。






え、え~~??






2階に上がって皆が寝ている部屋を見てみると、布団に潜ってお兄ちゃんを見ないようにしている人が沢山いた。




「あの、これは一体…?」


「去年から悩まされてる事なんだけど…裕大は朝かなり弱いんだ」


「それは知ってます。でもそんなに怖がる事ですか?」





サッカー部の皆があたしを見て驚いている。




な、何でそんなに驚くのかな…?



「裕大、朝なんだから起きなきゃ駄目なんだってば~!朝練あるでしょ!」


「渡邊、やめろ!食われるぞ!」

「食われる!?えっと、准くん、何で皆普通に起こさないの?」

「普通に!?普通に起きたらこんな悩まされないって!」



准くんの話によると、お兄ちゃんは誰が起こしても起きず、起こすと言葉では表す事の出来ない表情で何かブツブツ言うらしい。



去年はサッカー部全員で何とか起こしていたらしい。
(枕投げたりとか)




朝食を作っていたマネージャーさん達も参戦したって話だった。







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