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あの王太子妃の勝ち誇ったような目。
敵意剥き出しの目。
自分があたかも優位になっているかを示す目。

(……そんな視線、向けないでよ……。私は単なるお飾り妻なんだから)

ーーあの敵意は危険。
本能が告げていた。

「……公爵夫人だよね?ちょっと話をいいかな」

私は目の前の光景から考えを派生させていたら、王太子であるマクシミリアン第一王子から声をかけられた。

私は別室に案内され、王太子付と思われる侍女がお茶をサーブしていた。

初めて間近で拝見する殿下は、やはりオーラがすごくて。眩いばかりに輝いていた。

(こちらも、ザ王子よね……)

そこから殿下が一方的に話を始めた。

「……つまり、殿下が子を成せないために、髪色や、瞳の色が近いアンドレア様が子種に選ばれた、と」

「……まあそうなるね。血も近いしね。三年も子供が出来ないから、リーゼロッテの立場も悪くなるばからりで、このままだと王太子の座も第二王子に奪われ兼ねないからね。跡継ぎが生まれたらもちろん王家の子供として大切に育てるよ」

「……はあ。だとしても、私は全くの無関係者ですし、なぜ巻き込まれなければならないのでしょうか。正直、知りたくなかったです……。結婚した意味も全く分かりませんし」

「……だから、アンドレアも言わなかったのだろうな。ただ、リーゼロッテが手紙を出すとは……」
予想外だった、と。

「……あの……。このことは他言しません。かかわり合いたくないですし。その変わり、お願いがあります」

「……お願い?」

「……はい。2つほど。私は、3ヶ月前に突然公爵家に嫁ぎ、初夜から夫に会えていません。正式な妻でもなく、公爵家に居場所がありません。なので……」

私は簡潔にまとめてお願いごとを告げた。

一つは、公爵家を出て自活したいので、資金、場所、人を提供して欲しいこと。事業計画があるためそちらも含めて援助して欲しいこと。

2つ目は、王太子妃であるリーゼロッテ様から危害を加えられたら助けて欲しいこと。

「……リーゼロッテ様は、その……言いにくいのですが、アンドレア様を慕っていらっしゃるようですから。私が目障りなんだと思います」

王太子はおそらくリーゼロッテ様を愛しているのだろう。

リーゼロッテ様のあからさまな敵意には気がついていないのだ。

でなければ、自分の情事を他人に見せようなんて考えが及ばない。

「……了解した。支援は準備ができ次第、側近に連絡させよう。あと、アンドレアとの契約は子供が二人産まれるまで、だ。すまないが理解して欲しい」

分かりました、と私は王宮を後にした。
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