夢幻の飛鳥~いにしえの記憶~

藍原 由麗

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50《遣隋使の帰還》

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  稚沙ちさ椋毘登くらひとと星を見に行った日から数日後、厩戸皇子うまやどのみこが稚沙の元にやってきた。

  そして彼は必死で稚沙にあやまった。椋毘登がいっていたように、やはり彼は稚沙との約束をひどく後悔していたようだ。

「今回は、稚沙と菩岐々美ほききみの2人に迷惑をかける形になってしまった」

「厩戸皇子、その話はもう良いんです。私も皇子の妃の手前、度が過ぎましたから」

  彼女は彼と普通に話が出来ていることに内心安堵した。もし次に彼と会った時、変に動じてしまわないかと、少し気にしていたのだ。

  だがあの時に、椋毘登の前で散々に泣きじゃくったためか、気持ちも幾分はましになっていたのかもしれない。

「君も星が見たいといっていたから、さぞ残念がっていただろうに……」

  彼のこの発言からすると、未だに稚沙の気持ちには、彼自身全く気付いていないように思える。

(厩戸皇子は、やはり私に対して特別な感情はお持ちじゃないのね)

  やはりそこに対しては、彼女も少しやるせない気持ちになる。だがそこまで悲しいとは思わなかった。

  このことに関しては、彼女からしてみても何とも不思議な感じがする。

「あ、それなら皇子大丈夫です。椋毘登が皇子からの伝言を伝えにきた際に、その後彼が付き添ってくれましたから」

  厩戸皇子はそれを聞いて、とても驚いた表情を見せる。どうやら彼はそこまでのことは知らされていなかったようだ。

「あの日椋毘登が蘇我にもどる際に、小墾田宮にも少し寄ると聞いていた。それで伝言を伝えたのだが……」

(椋毘登は私を心配して、急遽小墾田宮に泊まることにしたの?)

「それは彼に悪いことをしてしまったかも?でもそのお陰で無事に星を見にいけました……」

  稚沙はそんな彼の心遣いが、とても嬉しく思えた。
  彼の場合、知り合った当初は余り良い印象を持っていなかっただけに、これは本当に意外だ。

「何事もなく無事に宮まで戻ってこれたのなら、良いのかもしれないが……まぁ、私がとやかくいえる立場ではないけどね」

  厩戸皇子はそういって少し苦笑いする。歳の近い男女2人が、一緒に星を見に行ったとなれば、何か起こってもおかしくはない。


(変な男の人達に絡まれそうになった件については、厩戸皇子にとりあえず黙っておこう。彼がこのことを知ったら、さらに困らせてしまうもの)

  とりあえず無事に星も見れたのだ。なので彼女もそれなりに満足している。

「でも、椋毘登にも再度お礼をいっておいた方が良さそうですね。今度会った時に話してみます」

「あぉ、そうしなさい。きっと椋毘登も喜ぶだろう。それに今日は彼も小墾田宮に来ていたよ」

  厩戸皇子も、とりあえずは普段の彼に戻ったようだ。

「まぁ、そうなんですか!では庁に行ったのかも?私彼に会いに行ってきます!!」

  稚沙はそういって、厩戸皇子に一度お辞儀をすると、慌ててその場を走って離れていった。

厩戸皇子は、そんな彼女のうしろ姿をとても微笑ましく眺めていた。

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