58 / 105
58
しおりを挟む
その後も忙しく稚沙が働いていると、他の女官からまた配膳の仕事を頼まれた。
「稚沙、悪いけどこのお酒と菓子を厩戸皇子に元に運んでもらえる?」
「え、私が厩戸皇子にですか?」
「ええ、そうよ。他の女官だとキャーキャーいいそうだから。それにあなたは皇子とは割と仲が良いでしょう?」
それを聞いて稚沙も思う。
確かに他の女官なら「自分が行く!」と何人もがいってきそうである。
その点稚沙は、わりと厩戸皇子には目をかけて貰えているので、問題なく出きそうだ。
「分かりました。ではこれを持っていったら良いんですね」
稚沙は頼まれたお酒と少量の菓子を受け取ると、そのまま厩戸皇子の元へと向かった。
その後稚沙は、皇子の元につくなり、彼にそっと笑顔で声をかける。
「厩戸皇子、頼まれたお酒と菓子をお持ちしました!」
すると皇子も彼女の声に反応して、ふと彼女に目を向けた。
「あぁ、稚沙が持ってきてくれたのか。本当に有り難う」
厩戸皇子は機嫌良くして、彼女にそう答えた。どうやら彼もお酒で、今は少し酔っているようだ。
「へぇ、皇子が女官の娘にこんなに親しく話されるのは珍しいですね」
すると厩戸皇子のとなりに座っていた人が思わず、彼らの話に入ってきた。
年齢は厩戸皇子よりも数歳年下ぐらいに思える。
(あれ、この人は一体誰だろう?)
厩戸皇子の横にいる青年に対して、稚沙は少し不思議に思った。
「あぁ、この子は稚沙といって、平群の額田部筋の生まれの女官だ」
厩戸皇子は隣の青年に、稚沙のことをそう説明する。
「うん?平群の額田部筋……もしかしてあなたが額田部比羅夫の親戚にあたる娘ですか?」
その青年は少し驚いた表情をしながら、そう稚沙に聞いてきた。
「はい、その通りですが。ただ、どうしてそのことを?」
(この人は一体誰なの?それにどうして私の出自を知っているのかしら?)
稚沙には何とも不思議に思えてならない。恐らく今日が初対面のはずだろうに。
「うん?妹子はどうしてそのことを知っているのだ」
「はい、実はここに来る道中、比羅夫殿との会話の中で出ておりました」
(うん?妹子??)
稚沙は妹子という名前を聞いて、ふと脳裏にとある人物が浮かび、思わず驚く。
妹子と呼ばれた青年は、そんな稚沙の様子を見て、慌てて彼女にあいさつをした。
「あ、先に名前をいうべきでしたね。私は小野妹子といいます。この度、遣隋使として隋に渡っていた者です」
彼は思わず微笑んで、稚沙にそう自身の紹介をした。
「あ、あなたが小野妹子殿だったのですね!大変失礼しました!!
私は平群の額田部筋にあたる者で、名を稚沙と申します。今は女官として、小墾田宮に仕えてます」
稚沙はそういうと、慌てて彼に対して頭を下げた。
そんな彼女を見た小野妹子は、愉快そうにして少しクスクスと笑いだした。
「別に頭を下げなくても良いですよ。そうですか、あなたが比羅夫殿のご親戚の方でしたか。私も一度、あなたには会ってみたいと思っていたところです」
「そうだったのですね。ただ叔父が私のことを口にしていたのは、本当に驚きです……」
「稚沙、悪いけどこのお酒と菓子を厩戸皇子に元に運んでもらえる?」
「え、私が厩戸皇子にですか?」
「ええ、そうよ。他の女官だとキャーキャーいいそうだから。それにあなたは皇子とは割と仲が良いでしょう?」
それを聞いて稚沙も思う。
確かに他の女官なら「自分が行く!」と何人もがいってきそうである。
その点稚沙は、わりと厩戸皇子には目をかけて貰えているので、問題なく出きそうだ。
「分かりました。ではこれを持っていったら良いんですね」
稚沙は頼まれたお酒と少量の菓子を受け取ると、そのまま厩戸皇子の元へと向かった。
その後稚沙は、皇子の元につくなり、彼にそっと笑顔で声をかける。
「厩戸皇子、頼まれたお酒と菓子をお持ちしました!」
すると皇子も彼女の声に反応して、ふと彼女に目を向けた。
「あぁ、稚沙が持ってきてくれたのか。本当に有り難う」
厩戸皇子は機嫌良くして、彼女にそう答えた。どうやら彼もお酒で、今は少し酔っているようだ。
「へぇ、皇子が女官の娘にこんなに親しく話されるのは珍しいですね」
すると厩戸皇子のとなりに座っていた人が思わず、彼らの話に入ってきた。
年齢は厩戸皇子よりも数歳年下ぐらいに思える。
(あれ、この人は一体誰だろう?)
厩戸皇子の横にいる青年に対して、稚沙は少し不思議に思った。
「あぁ、この子は稚沙といって、平群の額田部筋の生まれの女官だ」
厩戸皇子は隣の青年に、稚沙のことをそう説明する。
「うん?平群の額田部筋……もしかしてあなたが額田部比羅夫の親戚にあたる娘ですか?」
その青年は少し驚いた表情をしながら、そう稚沙に聞いてきた。
「はい、その通りですが。ただ、どうしてそのことを?」
(この人は一体誰なの?それにどうして私の出自を知っているのかしら?)
稚沙には何とも不思議に思えてならない。恐らく今日が初対面のはずだろうに。
「うん?妹子はどうしてそのことを知っているのだ」
「はい、実はここに来る道中、比羅夫殿との会話の中で出ておりました」
(うん?妹子??)
稚沙は妹子という名前を聞いて、ふと脳裏にとある人物が浮かび、思わず驚く。
妹子と呼ばれた青年は、そんな稚沙の様子を見て、慌てて彼女にあいさつをした。
「あ、先に名前をいうべきでしたね。私は小野妹子といいます。この度、遣隋使として隋に渡っていた者です」
彼は思わず微笑んで、稚沙にそう自身の紹介をした。
「あ、あなたが小野妹子殿だったのですね!大変失礼しました!!
私は平群の額田部筋にあたる者で、名を稚沙と申します。今は女官として、小墾田宮に仕えてます」
稚沙はそういうと、慌てて彼に対して頭を下げた。
そんな彼女を見た小野妹子は、愉快そうにして少しクスクスと笑いだした。
「別に頭を下げなくても良いですよ。そうですか、あなたが比羅夫殿のご親戚の方でしたか。私も一度、あなたには会ってみたいと思っていたところです」
「そうだったのですね。ただ叔父が私のことを口にしていたのは、本当に驚きです……」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ソラノカケラ ⦅Shattered Skies⦆
みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始
台湾側は地の利を生かし善戦するも
人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね
たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される
背に腹を変えられなくなった台湾政府は
傭兵を雇うことを決定
世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった
これは、その中の1人
台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと
舞時景都と
台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと
佐世野榛名のコンビによる
台湾開放戦を描いた物語である
※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()
7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】
しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。
歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。
【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】
※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。
※重複投稿しています。
カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614
小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる