76 / 105
76
しおりを挟む
「あぁ、その話ね」
古麻は稚沙から糠手姫皇女のことを聞かれ、どうやら彼女はその理由を知っていたようだ。
「やっぱり、古麻は知ってるのね」
稚沙も、もし重要なことなら女官として知っておいた方が良いだろうと考える。
そして古麻は少し声を小さくして、彼女に話してくれた。
「それはね、糠手姫皇女の婚姻の話の件よ」
「え、婚姻の話?」
どうやら稚沙が想像していたこととは、少し内容が違っていたようだ。
「今糠手姫皇女は、推坂彦人大兄皇子との婚姻の話が上がってるんだけど、何か少し問題がありそうなのよ。それで炊屋姫様の元に相談をしに来るそうなの」
確かにそういった相談なら、炊屋姫に直接話したいだろうし、ただ余りおおやけにもしたくないだろう。
(なるほど、そういうことだったのね。でも何が問題なのかしら?)
こればかりは、本人に聞かないと全く分からない。
「ただ相手は、推坂彦人大兄皇子でしょう?あの方はとてもみる目麗しい皇子で、とても素敵な方よ。何が問題なのかしら?」
「へぇ、そんな素敵な方なんだ。私はその皇子のことは、正直余り詳しく知らないの」
稚沙は小墾田宮の女官になって比較的に期間が浅い。さらにそういった浮いた話には、彼女は余り関心を持ってなかった。
「まぁ、あなたはどうせ厩戸皇子辺りを見ていたのでしょう?」
「そ、それは。厩戸皇子は、今はそうじゃないし……」
稚沙は自分が、元々厩戸皇子を好いていたことを人に余り話していなかった。だが既に数名に知られているので、案外感づいてる人もいるのかもしれない。
「まぁ、そこら辺は余り聞かないでおいてあげるわ。
まさか糠手姫皇女も、厩戸皇子の方が良いとかいうんじゃないでしょうね?それなら、推坂彦人大兄皇子を拒む理由にもなるけど」
古麻のいうように、今ここ飛鳥の地において、もっとも注目を集めているのは厩戸皇子である。
なので、推坂彦人大兄皇子がどれ程みる目麗しい皇子だったとしても、さすがに厩戸皇子には敵わない。
(そう考えると、私ってそうとう無謀なことをしてたのね……)
そういう意味では、早く諦める決心がついて良かったと彼女は思った。
「あ、ちなみに糠手姫皇女って、今年齢はいくつなの?」
「確か、今年で18歳になってたかしら?まぁそれなら、そろそろどこかの皇子の元に嫁がせたいとは思うわよね」
稚沙が14歳なので、糠手姫皇女は自分よりも4歳年上になる。それなら婚姻も真剣に考えるだろう。むしろ人によっては早く嫁ぎたいとさえ考えるはずだ。
「なるほど……でも私達がどうこういえる立場じゃないし、今は様子を見るしかない感じね」
稚沙は悶々としていった。
彼女的にも、この件に関しては真相が少し気になる所である。
「確か糠手姫皇女は明後日に、ここに来られるそうよ」
「まぁ、本当に近々来られるのね」
「そういうこと。じゃあ、私も仕事に戻るわ。稚沙、あなたも早く戻らないと、目上の女官に叱られるわよ」
古麻のいう通りである。確かにこのまま長居していたら、確実に大目玉を食らわされてしまうだろう。であれば、自分も急いで仕事に戻った方が良さそうだ。
「うん、そうする。古麻も教えてくれてありがとう!」
そういって稚沙は仕事場へと戻っていった。
古麻は稚沙から糠手姫皇女のことを聞かれ、どうやら彼女はその理由を知っていたようだ。
「やっぱり、古麻は知ってるのね」
稚沙も、もし重要なことなら女官として知っておいた方が良いだろうと考える。
そして古麻は少し声を小さくして、彼女に話してくれた。
「それはね、糠手姫皇女の婚姻の話の件よ」
「え、婚姻の話?」
どうやら稚沙が想像していたこととは、少し内容が違っていたようだ。
「今糠手姫皇女は、推坂彦人大兄皇子との婚姻の話が上がってるんだけど、何か少し問題がありそうなのよ。それで炊屋姫様の元に相談をしに来るそうなの」
確かにそういった相談なら、炊屋姫に直接話したいだろうし、ただ余りおおやけにもしたくないだろう。
(なるほど、そういうことだったのね。でも何が問題なのかしら?)
こればかりは、本人に聞かないと全く分からない。
「ただ相手は、推坂彦人大兄皇子でしょう?あの方はとてもみる目麗しい皇子で、とても素敵な方よ。何が問題なのかしら?」
「へぇ、そんな素敵な方なんだ。私はその皇子のことは、正直余り詳しく知らないの」
稚沙は小墾田宮の女官になって比較的に期間が浅い。さらにそういった浮いた話には、彼女は余り関心を持ってなかった。
「まぁ、あなたはどうせ厩戸皇子辺りを見ていたのでしょう?」
「そ、それは。厩戸皇子は、今はそうじゃないし……」
稚沙は自分が、元々厩戸皇子を好いていたことを人に余り話していなかった。だが既に数名に知られているので、案外感づいてる人もいるのかもしれない。
「まぁ、そこら辺は余り聞かないでおいてあげるわ。
まさか糠手姫皇女も、厩戸皇子の方が良いとかいうんじゃないでしょうね?それなら、推坂彦人大兄皇子を拒む理由にもなるけど」
古麻のいうように、今ここ飛鳥の地において、もっとも注目を集めているのは厩戸皇子である。
なので、推坂彦人大兄皇子がどれ程みる目麗しい皇子だったとしても、さすがに厩戸皇子には敵わない。
(そう考えると、私ってそうとう無謀なことをしてたのね……)
そういう意味では、早く諦める決心がついて良かったと彼女は思った。
「あ、ちなみに糠手姫皇女って、今年齢はいくつなの?」
「確か、今年で18歳になってたかしら?まぁそれなら、そろそろどこかの皇子の元に嫁がせたいとは思うわよね」
稚沙が14歳なので、糠手姫皇女は自分よりも4歳年上になる。それなら婚姻も真剣に考えるだろう。むしろ人によっては早く嫁ぎたいとさえ考えるはずだ。
「なるほど……でも私達がどうこういえる立場じゃないし、今は様子を見るしかない感じね」
稚沙は悶々としていった。
彼女的にも、この件に関しては真相が少し気になる所である。
「確か糠手姫皇女は明後日に、ここに来られるそうよ」
「まぁ、本当に近々来られるのね」
「そういうこと。じゃあ、私も仕事に戻るわ。稚沙、あなたも早く戻らないと、目上の女官に叱られるわよ」
古麻のいう通りである。確かにこのまま長居していたら、確実に大目玉を食らわされてしまうだろう。であれば、自分も急いで仕事に戻った方が良さそうだ。
「うん、そうする。古麻も教えてくれてありがとう!」
そういって稚沙は仕事場へと戻っていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
因果の糸、断ち切り申す
クリヤ
歴史・時代
お江戸の町に、一匹の妖かしを連れた男がフラリと現れる。
大きな不幸に嘆き悲しむ人の前に。大きな不幸に見舞われた家の前に。
その優男は、フラリと現れる。
『その因果の糸、俺ァ、断ち切れるが、どうしやす?』
男の言葉に頷けば、悲しみを引き起こす因果の糸は断ち切られる。
どこまでも過去を遡って。
ただし……。
因果の糸に絡まっているのは、不幸だけじゃあない。
幸せだった思い出も、一緒に断ち切られることになる。
男に出会った人が選ぶ運命の選択は?
男が糸を断ち切って歩く目的とは?
男が連れている妖かしにも、何やら事情がありそうで……。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる