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第5獣
怪獣5-9
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「クソっ! ダメだ……」
「蘭! これはどうだろう?」
秀人は守衛室から電動ドリルと、LEDの小型投光器を持って来て、扉を照らした。バールを差し込んだ位置を確認するも、傷一つ付いていなかった。普通、差し込んで力を入れたのなら、傷跡やへこみが確認できるのだが、全くの無傷だった。
(おかしい、傷一つないなんてありえない……)
「どうなっているんだ……?」
だけれども、電動ドリルの力なら耐えられないだろう。
「秀人、このドリル、どうやって使うんだ?」
ドリルを持った蘭が、調べている。
「充電式だから、電池を差し込めば使えるよ」
グリップ下部が開いていて、そこに電池を差し込んで、トリガーを引くと、ウィィィと軽快な音を立てて、ドリルが回った。これなら穴を簡単に開けることが出来るだろう。
「秀人、どいていろ。開けてやるから!」
扉にドリルを当てて、トリガーを引く。
電動モーターの回転音が響いて、これなら開くだろうと思われた。が、ドリルは一向に進まず、削りくずも出てこない。扉そのものがドリルを受け付けていない。
バキィン!
突然刃が折れ跳ね返り、鏑木の脇を掠めて飛び、壁にぐさりと突き刺さった。
「うっわ!」
「きゃあっ!」
「二人共、大丈夫!?」
「何とか、お前は秀人?」
大丈夫のジェスチャーをして、無事をアピールする。その様子を見て、蘭は安堵する。
「本当……、どうなっているの……」
全く開かない扉を前に、落胆する。
「本当に、どうなっていやがるんだ!」
蘭は腹立ちまぎれに、扉を殴りつけるも何も起こらなかった。
「蘭落ち着いて。とにかく、他の方法で助けを求めよう」
「どうやってやるんだよ!」
苛立ち紛れに蘭は壁を叩く。その時、掌が蛍光灯のスイッチに触れ、玄関がぱっと明るくなる。
「電気が来ているから、館内の電気を全部点けるんだ。それで助けを求めよう。誰か異常事態に気づくかもしれないし……。てか、早く電気に気づけばよかった」
どうして、こんなことに気づかなかったのかと、自虐的に秀人がぼやいた。
「そうか! その手があったな! よし、手分けして電気を全部点けるんだ!」
蘭の言葉に鏑木が頷く。
「俺は三階に行くから、秀人と鏑木さんは一階を頼むな!」
「蘭、お化けは怖くないのかい?」
数時間前まで、お化けに怯えていたことを、秀人がからかう感じで言う。
「こっちには電気っていう、文明の利器があるんだ! どんなお化けでも、大丈夫さ!」
それだけ言うと、階段を駆け上がって行った。
「蘭ちゃん、元気になってよかったですね」
「あれがいつもの姿ですよ。それより行きましょう!」
秀人の言葉を聞いて頷いた。何か目標があれば、それに集中出来る。
「最初はカフェとミュージアムショップから、手を付けましょう」
アドバイスを受けて、その通りにすることにする。
壁のスイッチを押して電気を点ける。それだけで眠っていたカフェが、生気を得たようになるが、それでも若干寂しい。
椅子は片づけられ、キッチンやシンクは綺麗に掃除されている。誰もいない部屋で虚しく、電気だけが点いている。人間だけが消え、家具がそのままになった廃墟を連想させて、寂しい気がした。
手に持った懐中電灯に目をやった秀人は、次の部屋に向かった。
「次は、ラウンジと講演室に行きますよ」
廊下からの声に気が付いて、そそくさと出て行った。
三階に上がった蘭は、上機嫌に鼻歌を歌いながら、実習室とトイレの電気を点けて、今度は展示室に向かおうとした。
『さっきとは大違いだな、お化けに怯えていたお前とは思えん』
ゴリアスが茶化す感じで、話しかける。
「へへっ! なんてったって、こっちは電気があるんだから、怖いものなしさ、どんなお化けでもかかって来いってんだ!」
電気が通じている事が、蘭を安心させたのだ。お化けは電気に弱い。小学生の頃から信じていて、ある意味純粋だった。
「そう言えば忘れていたけど、まだ気配は、感じられているのか?」
『そうだ……、場所は分からないが、ますます強くなっている』
「安心はできないか……」
気を引き締める、気配の主がどこから現れるのか、分からない。
「次は土偶の展示室だよな」
こんこんと照らされた、廊下を駆けながら、展示室に入る。そこで全館に響き渡る、大きな悲鳴を蘭は上げた。
「蘭! これはどうだろう?」
秀人は守衛室から電動ドリルと、LEDの小型投光器を持って来て、扉を照らした。バールを差し込んだ位置を確認するも、傷一つ付いていなかった。普通、差し込んで力を入れたのなら、傷跡やへこみが確認できるのだが、全くの無傷だった。
(おかしい、傷一つないなんてありえない……)
「どうなっているんだ……?」
だけれども、電動ドリルの力なら耐えられないだろう。
「秀人、このドリル、どうやって使うんだ?」
ドリルを持った蘭が、調べている。
「充電式だから、電池を差し込めば使えるよ」
グリップ下部が開いていて、そこに電池を差し込んで、トリガーを引くと、ウィィィと軽快な音を立てて、ドリルが回った。これなら穴を簡単に開けることが出来るだろう。
「秀人、どいていろ。開けてやるから!」
扉にドリルを当てて、トリガーを引く。
電動モーターの回転音が響いて、これなら開くだろうと思われた。が、ドリルは一向に進まず、削りくずも出てこない。扉そのものがドリルを受け付けていない。
バキィン!
突然刃が折れ跳ね返り、鏑木の脇を掠めて飛び、壁にぐさりと突き刺さった。
「うっわ!」
「きゃあっ!」
「二人共、大丈夫!?」
「何とか、お前は秀人?」
大丈夫のジェスチャーをして、無事をアピールする。その様子を見て、蘭は安堵する。
「本当……、どうなっているの……」
全く開かない扉を前に、落胆する。
「本当に、どうなっていやがるんだ!」
蘭は腹立ちまぎれに、扉を殴りつけるも何も起こらなかった。
「蘭落ち着いて。とにかく、他の方法で助けを求めよう」
「どうやってやるんだよ!」
苛立ち紛れに蘭は壁を叩く。その時、掌が蛍光灯のスイッチに触れ、玄関がぱっと明るくなる。
「電気が来ているから、館内の電気を全部点けるんだ。それで助けを求めよう。誰か異常事態に気づくかもしれないし……。てか、早く電気に気づけばよかった」
どうして、こんなことに気づかなかったのかと、自虐的に秀人がぼやいた。
「そうか! その手があったな! よし、手分けして電気を全部点けるんだ!」
蘭の言葉に鏑木が頷く。
「俺は三階に行くから、秀人と鏑木さんは一階を頼むな!」
「蘭、お化けは怖くないのかい?」
数時間前まで、お化けに怯えていたことを、秀人がからかう感じで言う。
「こっちには電気っていう、文明の利器があるんだ! どんなお化けでも、大丈夫さ!」
それだけ言うと、階段を駆け上がって行った。
「蘭ちゃん、元気になってよかったですね」
「あれがいつもの姿ですよ。それより行きましょう!」
秀人の言葉を聞いて頷いた。何か目標があれば、それに集中出来る。
「最初はカフェとミュージアムショップから、手を付けましょう」
アドバイスを受けて、その通りにすることにする。
壁のスイッチを押して電気を点ける。それだけで眠っていたカフェが、生気を得たようになるが、それでも若干寂しい。
椅子は片づけられ、キッチンやシンクは綺麗に掃除されている。誰もいない部屋で虚しく、電気だけが点いている。人間だけが消え、家具がそのままになった廃墟を連想させて、寂しい気がした。
手に持った懐中電灯に目をやった秀人は、次の部屋に向かった。
「次は、ラウンジと講演室に行きますよ」
廊下からの声に気が付いて、そそくさと出て行った。
三階に上がった蘭は、上機嫌に鼻歌を歌いながら、実習室とトイレの電気を点けて、今度は展示室に向かおうとした。
『さっきとは大違いだな、お化けに怯えていたお前とは思えん』
ゴリアスが茶化す感じで、話しかける。
「へへっ! なんてったって、こっちは電気があるんだから、怖いものなしさ、どんなお化けでもかかって来いってんだ!」
電気が通じている事が、蘭を安心させたのだ。お化けは電気に弱い。小学生の頃から信じていて、ある意味純粋だった。
「そう言えば忘れていたけど、まだ気配は、感じられているのか?」
『そうだ……、場所は分からないが、ますます強くなっている』
「安心はできないか……」
気を引き締める、気配の主がどこから現れるのか、分からない。
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