琥珀と二人の怪獣王 建国の怪獣聖書

なべのすけ

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第7獣

怪獣7-5

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「やっぱり……、駄目じゃないか」
 蘭の声には秀人をどこか、つまっている感情が籠っていた。
[もう、説得は無意味だ。また、グリフォンが蘇る、新しいグリフォンによって、滅ぼされる運命だ……]
「新しいグリフォンだって!」
「そんなバカな! あの時に倒したはずだ!」
『そうだ! 確かに、消滅を確認した! なのにどうして!』
 蘭と秀人、ゴリアスは叫ぶも土偶は何も言わない。土偶は粉々に砕け、欠片に戻る。
 三人は、博物館の廊下に立っていた。
「何だったんだ……?」
『気配が消えている……』
 ゴリアスも何があったのか、分からないといった感じで呟く。
「皆! 外を見て!」
 鏑木の声を聞いて窓を見ると、外の明かりが見えた。窓に手をかけるとすんなりと開いて、外の涼んだ空気を感じた。
「どうなっているんだ……?」
「自分達だけ、別の空間に閉じ込められていた……。そう考えるのが自然じゃないか?」
 まるで、ゲームや映画のようだが、そうだとしか考えられない。
 手首に着けた腕時計を鏑木が見ると、時間は十分も経っていなかった。感覚的に言えば、一、二時間は閉じ込められていた感じなのに。
「何が起こっていたの? 本当に分からない。それにあのカナンガの言っていたことは、本当なの……」
 頭を抱える。色々な事が余りにも起こりすぎていて、オーバーヒートしてしまいそうになる。
 そして、もう一つの懸念事項が蘭と秀人の頭の中にあった。
「あいつ、グリフォンが復活するって言っていたよな……、まさか!」
「考えたくない、最悪のパターンが起こったのかもしれない!」
『倒されていない! 奴はまだ、この世界に居る!』
 蘭と秀人、ゴリアスが考えうる、最悪の展開が想像された。

 暗黒の海の中を、一隻の巨体が進んでいた。ロシア海軍のデルタⅣ級原子力潜水艦。
 艦首にあるソナーの音を小さく響かせながら、任務である、怪獣探索を終え帰投についていた。
「艦長、何も反応はありません」
 ソナー員が報告する。
「了解、だが、最後まで気を抜くな。中国海軍の二の舞はごめんだからな」
 それを聞いたソナー員は、ロシア語で了解と言いながら、ソナーと耳に集中する。
 三か月前に、中国海軍の原子力潜水艦が怪獣に襲われたことは記憶に新しい、自分達も同じ思いをするのでは? そんな不安が、少なからずあった。
 しかし、それでもやらなくてはいけなかった。ロシアに対する脅威を探し出す。それが第一だ。その証拠に北方領土の部隊が怪獣によって壊滅している。自然と、神経が張りつめる。
 ソナーに小さく反応が出た。
「艦長! 反応です!」
 ソナーディスプレイに表示された周波数は、小さなものだったが、それはやがて大きくなり、ディスプレイの半分近くを覆ってしまった。
「レーダーに反応! 巨大な何かが、すぐ目の前に居ます!」
 レーダー員が悲痛な報告を入れる。
「操舵員! 回避しろ!」
 艦長の命令と同時に、操舵員が舵を切るも、間に合わなかった。
 デルタⅣ級がゆっくりと蛇行して、回避するのよりも先に、反応の主が姿を現していた。デルタⅣ級は少し動きを変えながら、主の横腹に接触、おもちゃのように巨体をひしゃげて、水泡を撒き散らし鷲掴みにされた。
 その主は、ゴリアスに倒されたはずの、グリフォンだった。
 遥かに中国とロシアを望む、日本海の沖合に轟々と水の柱が噴きあがって、月と星々を隠した。しかし、それはこれから始まる恐怖の幕開けに過ぎなかった。
 海中から姿を現したのは、巨大な怪獣。それは今日、姿を消してしまったのとは、かなり異なっているのにどれだけの人間が気付いたのだろうか。否、いなかったのかもしれない。肉食獣を思わせる口、大ぶりの牙と見開いた眼、左右に伸びた二本の角は、般若の面の中で蛇になってしまった、真蛇連想させた。胸には奇妙な象形文字にも似た、紋章が記されており、骨格は大型の爬虫類に近いが、両脚は獅子やヒョウを思わせ、陸上で生育する姿に適応した姿を示している。
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