hard cage

美斗

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サイコラリー

*探偵事務所bond*

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【なんて甘ったるい

禿鷹の入れる珈琲より甘い

そうは思わないかね禿鷹】







歌舞伎町の寂れたビルの4階で
リンはニュースを観ていた






「そうですねぇ…世知辛い、いや、アホらしい

しかし私の入れるコーヒーは甘くありませんよリンさん」




禿鷹はそう言いながらコーヒーに角砂糖を五個もいれた




【なんだかねーなんだかねー傍観者だねー身内までもがいやだねーやだねー】





リンはソファーに転がり訳のわからないことをつぶやく





「あっ、リンさんそろそろ見廻りの時間では?

コーヒー飲んでってくださいね」




【あぁ…もうそんな時間?

やっぱ甘いよー甘い甘い】





「時間に遅れるとまたGさんにどやされますよ

コーヒーは全部飲んで下さいね」




【ねぇ、その笑顔腹立つんだけどねーなんでいつもにやけてるの】




「こういう顔なんです

何度聞いても答えは同じですよ」




そう言いながら禿鷹はコーヒーを手渡す





(未だ逃走中の犯人は拳銃を所持しており、都内に潜伏してる可能性が高いようです、事件がおきた近隣の皆様には警察が注意を促しています)







【んー、甘いわ】










*****************









ショートカットの黒髪に華奢な体
肌は青白く不健康そうな容姿をした彼女は探偵だ

少年のようだが
生物学的上 女性である


新宿 歌舞伎町


ここにはいろんな人種がいる

肌の色が違うと言いたい訳じゃない

魂の色が違うのだ


十人十色の考えがあるように

十人十色の犯罪も起きる


リンはそれを知っていた

そして裁く手段も

知っていた



【禿鷹の野郎、私を糖尿にする気だな、


まったく誰がやつを雇ったんだ?


まぎれもなく私だが】




禿鷹(ハゲタカ)

雑用件、リンのおもり役


いつも笑っていて薄気味悪い男
身長は190?あり、灰色の髪を肩まで伸ばしてる

やっぱり薄気味悪い男だった




さて、見廻りに徹するとしよう



リンは日課になっている歌舞伎の見廻りに出掛けた


彼女のことを歌舞伎の番犬
という奴もいる


番犬と言えばヤクザなイメージだが


リンはヤクザよりタチの悪い番犬として

後ろめたい事がある奴らにすれば
避けて通りたい存在だった


その理由は
おのずとそのうち解ることになるので少々お待ちを



【最近平和平和

別にこんな忠実に毎日 毎日 

見廻ることもないんじゃないかねー

本当都知事変わってからやりずらいねー】




(おっ、リンちゃん、今日もやってるねー)




キャッチの看板を持ったおっさんがリンに話しかける




【あらっ、おっちやん

変わったことはないかい?】




(あぁ、なんもねーよ、

しいて言えば、昨日若僧がラリって暴れてなぁ

シメたことくれーかなぁ)



【あらっ、頼もしいその調子で頼むよー

仕事が減って大変結構】


(任しときな!)



【はいよー】



リンが歩けば
歌舞伎町の住民が声をかけてくる

見馴れた光景だ




それだけリンはこの街に

必要な存在だった









そしてまた、見慣れた顔が1人......







「HEY!リン!調子はどうだ」





【へーぃ、マザーファッカー

すこぶるハッピーだよー】




「ハッハーりん、それホカノガイジンに言ったらオコラレルヨー(笑)」




【そうなの?

hideさんがマンソンにこんな風に挨拶してたから

てっきり親愛なる気持ちを込めた挨拶だとおもってたわよー】



「まぁ、リンならいいか(笑)」




嘘くさい片言で喋るこいつの名前は スカッシュ

アメリカ出身で


セクシーキャバクラの店長だか
時々こんなふうにじゃれて遊ぶ


リンの玩具




スカッシュ「そうだ、ちょっとタノミタイことがある」




【なんだい?mydarlingー】



スカッシュが店の中へと促す



野暮なはなしかい?
嫌だねー
いゃだねー









***セクシーキャバクラ スコーピオン******



中に入ると
何とも卑猥な空間が広がっている




「きゃー!リンー、いらっしゃい

今日もイケメン!

ルル指名でしょ?(笑)」



下着姿のフランス人形みたいな女の子がリンに絡み付く



【生憎、私は生物学的上女なんだ、おっぱいを揉む趣味は今のところないねー】



スカッシュ「ルル、今日はチョッとダイジナなはなしがあるんだ、

ルルもリンにはなして欲しいことがある」


ルル「あぁ、マロンの話?

めんどくサー」



急に興醒めしたようにルルがそっぽを向く


なんだ?キャスト絡みのいざこざか?

いゃだねー

嫌だねーねー





***********


リンの前にはアイスコーヒーが
真夏の暑さに汗をかいている



雫が小さな水溜まりをつくるほどに






【スカッシュ、このコーヒーは甘いか?】


今朝のコーヒーを思いだし
リンは思わず怪訝な顔をする



スカッシュ「ブラックだよ?サトウいれるか?」



【実に良いねー流石スカッシュ

わかるねーわかるねー】


リンは満足そうにコーヒーに口をつけた




「早速、ホンダイだけど、ニシュウカンマエに、うちのNo.1マロンがスガタをケシタ


ヘヤにいってみたんだけどダレモいなくて、アラサレタかんじもなかった

ツウチョウもサイフモおきっぱなしで、イヤなよかんする、」




【失踪かぁ、この町では珍しくない話だけど、金銭が起きっぱなしってのは不可解だねー

思い当たる伏しはないのかい?】




「ルル?」




スカッシュが呟くと
向かいに座っていたルルが

ハイライトに火をつけながら話はじめる









ルル「マロンが居なくなる前日にね

あの子変なこと言ってたの、

もし、私が居なくなったらルルがNo.1ねって

なんで急にそんなこと聞くのかってきいたら

そしたらマロン、店やめるかもって、このままここにいたら店に迷惑かけるからって言ってた」





ふーん、なるほど






【そうか、うん、とりあえず問題が彼女に生じていたことと、失踪したこたは、繋がってそうだね】


ちなみに消え方からして


彼女が生きている可能性は極めて低い





金銭が残っていたこと
部屋が荒らされていない
鍵はかかっていた
痕跡が残っていない
怨恨
もしくはプロの殺し屋


にしては、ちょっと荒いな


ヤクザがらみではまず、無いし








【スカッシュ、事情はだいたい把握した、私も探ってみるとしよう

何かあったら事務所に電話して】




スカッシュ「ワルいな、ヨロシクタノム」




ルル「リンーまたね、今度は指名してね」









よくある話は
日常茶飯事


誰も気付かないか見てみぬふりしているだけで、

日本中で何処かで誰かが消えている


恐ろしいと思わないかね?


ある日突然隣で笑っていた人が消える


神隠しみたいに


だけど神は隠してなんていない


それを"殺る"のは人間だ


だいたい死んでる
大概は死体も見付からない
そしていずれ探すことさえ忘れる



世知辛いねー
うん、まったくもって




【とりあえずGさんにお伺いたててみますかねー】



歌舞伎町の重鎮


G


アダ名だけど、名前の由来は聞かない方がいい(笑)


そして我探偵事務所、bondの社長様だ





リンは歌舞伎町を抜け、タクシーに乗る


御苑前まで



暫くすると歌舞伎町とは程遠いオフィス街が現れる


高いビルを眺めていると目眩がして吐きそうになるのは私だけだろうか

空がしかくばってみえるし
まるで乗り物よいでもしたかのようだ


とある高層ビルの最上階に彼はいる




【このエレベーターの乗り方、何時もまようんだよー

なんで最上階に行くのと
中間までしか行かないエレベーターがあるんだ?


統一しろよねー】











チーン






****最上階 社長室*****






「リン様、お疲れ様です

社長は今会議中でございまして

少々お待ち頂けますか?」



入り口で秘書の鈴木さんが申し訳なさそうに言う




【お疲れ様ですー

そうなんだ、あっ、お構い無く

待つので】





鈴木「申し訳ありません、


コーヒーとお茶どちらになさいましょう?」



【………甘くないコーヒーで】




鈴木「フフ、かしこまりました」










暫くすると

社長室の扉が勢いよく開いた






バーン!!!






「くそっ!まったくどいつもこいつもへたれな野郎共だ!

あーわじわじする!」




わじわじするとはイライラするって意味


沖縄の方言


ちなみにGは沖縄出身



【Gーさん、またイライラしてー禿げるわよー(笑)】



G「おぉ、リン、居たのか!

悪い悪い、あまりにもクソッタレな会議だったんでな」



銀縁の眼鏡にカッチリしたスーツ着ているくせに言葉遣いがとても悪い


インテリチックにしてるけど、中身は荒ぶる鷹だな


いや、猛獣……ゲロゲロ




G「今日はどうした、なんかあったか」



【ちょっと調べて欲しいことがある




Gにさっきスカッシュから預かったマロンの履歴書を渡す



G「天野 涼子、この子がどうかした?」



【スカッシュの店の子で、2週間前から姿消したらしいー

顔みたことない?

ちなみに源氏名マロンちゃんねー】



G「失踪か、うーん、あー

美人だねー」




Gの目が鋭く光る


美人に見とれてるわけではない


何かを感じ取ったんだろ
嫌な予感を


時々ヤバイ時にこういう目をするのを
リンは知っていた




【なんかその写真、薄気味悪いんだよね、違和感を感じる】




G「あぁ、そうだな.........

リン、とりあえずお前の方で探っててくれ、こっちはこっちで収集しとく、」






【了解】







************








ビルをでて、KENT を一本取りだし、火をつける


【んーもしかしてなんか、ヤバイ?(笑)】



事務所に帰るとするか




鎌鼬に聞いてみるのも悪くない



うん、鎌鼬(カマイタチ)









************









【ただいまー禿鷹ー】


禿鷹「りんさんお帰りなさい、遅かったですね、何かありましたか?」


禿鷹は丹念にコーヒーカップを磨いていて、目もあわせない


【あぁーあぁーあったさー

仕事の依頼だよー

禿鷹、鎌鼬に連絡してくれない?】



禿鷹「鎌鼬に、ですか?」


珍しく禿鷹の顔が強張る


【うん、鎌鼬

私じゃあいつの居場所がつかめない

禿鷹なら解るだろう】



禿鷹「…………」



禿鷹と鎌鼬は犬猿のなかであり
親友でもある
変わり者同士
狂犬同士
私はお似合いだと思うがね


禿鷹は渋々電話を手に取り何処かに発信する


何度か交換を通し、訳のわからない暗号を言い合い


やっと鎌鼬にたどり着く


「おぉー!禿鷹かぁ!?

久しぶりっちゃねー!
元気にしとーと?」



禿鷹「鎌鼬、なんだその言葉使いは

気色悪いぞ」


鎌鼬「ガハハハハハ!

九州弁だよ!今福岡の小倉にいるんちゃ

ラムちゃんみたいで可愛いだろ?

ガハハハハハ!」


禿鷹のイライラ感がふつふつと伝わってくる


禿鷹「………、まぁいい、ちょっと頼み事があるみたいなんでね


うちの"お嬢様が"」


鎌鼬「あぁ?暗殺でもしろってか?」


禿鷹「物騒な、私たちはそんな野暮なことはしませんよ、

探偵事務所ですからね」


鎌鼬「あぁ?あーまぁ、やってる事はたいした変わらんだろ!

ガハハハハハ!」





禿鷹「リンさん、私はもう限界です

後は頼みますよ」



【了解ー】


そういい、禿鷹はキッチンへ消えていった



【はーい、御無沙汰!

リンリンでーす】


鎌鼬「おぉ!リンリン!元気にしてるかー!

俺は良い子にしてるからねー

安心してねー」



【それは良かった


それで頼みごとの件だけど、

最近失踪したらしき日本人のリストが欲しい、生存、死亡確認出来ているかも合わせて、頼める?】


鎌鼬「わかっよー消えた人たちね

でも偶然だ、俺も今失踪の件、
追ってるの

凄いよね、運命感じるってね」



【運命は感じないけど、面白い偶然だなー

まったくもって素晴らしい





鎌鼬「じゃ、情報交換といきましょうか」




【良いよー良いよー

手の内あかしましょー】



鎌鼬「ガハハハハハ、嘘つけ!」









鎌鼬は昔殺し屋だった、



明晰な頭脳と、人間離れした運動神経

そして相手が痛みを感じる隙もなくナイフで急所を突くことから

鎌鼬とよばれ、彼を知る人たちは皆、恐れていた。



五年前私が彼を捕まえるでは


警察に拘束され、鎌鼬は当初、死刑判決をうけていた


ただその能力と、マフィアの組織に薬物を使って操られていたこともあり


今は執行猶予つきで警察の下で働かされている


まぁ、死刑になったところで、奴はきっと死なない


今だって何時だって
逃げれるのに逃げないのは


ただ今の状況を楽しんでいるだけにしか私には思えないが



いかがなものかねー
嫌だねー
からかってるねー









鎌鼬「それでは、またお逢いしましょう、リンリン、

情報は暗号化したファックスでおくるっちゃよ」



【センキューベリーベリーマッチW

seayou mydarlingー】






ふむ、



電話を切ると同時にリンの携帯が鳴る





電話ですよー
電話ですよー
電話ですよー




おっとボスから電話だ


禿鷹「その着信音、いい加減変えたらどうですか?」


【これが一番分かりやすいから、いいんだよねー



はい、リンでーす】


G「おつかれさん、さっきの話の子

どうやら履歴書の名前偽造だな

それどころかこの書面に書いてある事は全て真っ赤な嘘だ」


【やっぱり、たまげたねーマロンチャン、中々やるねー

スカッシュを騙すとは

まさかあれかい?】


G「あぁ、多分あれだな

とりあえず素性はこれから調べさせるが……

まっ、気を付けれよ」




【了解ー、厄介ー】








***************









あれかぁ

あれねぇ…





禿鷹「どうやら面倒なことになりそうですね、リンさん」




【あぁ、そうだねー

厄介だねー

これは国同士の争いになりかねないもんね

まさかあれ、とはねぇ】





禿鷹「いなめませんね」






"あれ"



私たちの間では

彼らこことを敬意をこめて

あれと言う





一般的に言えばスパイなのだけど


世間は知らないだろうが、しれっと親友が身内が側近が

スパイだったりする


彼らはエゴイスト
そして人間ではない
洗練されたロボット
忠実な下部


そんな彼らはすこぶる厄介な案件だ






【あれねー

困りました】




禿鷹「こういう案件です、鎌鼬には絡んでもらわない方がいいのでわ?」






【そうだねー

でも多分時すでに遅しだよ

鎌鼬は知っている

今回の件があれ絡みだってね

それを踏まえてのあの言い草だったんだろう

相変わらず気にくわないねー
からかってるねー】



禿鷹「うぇっ、リンさん私は今回事務仕事に徹しますよ

鎌鼬と絡むことはごめん被りますのでね」


禿鷹の顔色が更に悪くなる


死神かおまえは


【うーん

そうだねー

まぁ、明日になればGが情報を提供してくれるはずだ、

鎌鼬には適当に情報偽装しといてくださいー】





禿鷹「悪あがきもいいとこですね」





【やっぱり?】










うむ、







ここで少しまとめてみよう



マロンはよそ者から送られたスパイ

しかし、スパイにしては潜伏していた痕跡をかなり残している


おかしいね
ひっかかる


ルルにあんなことを話すなんて
正直スパイ失格だ
そしてこの歌舞伎町で
何を探っていたのか


本来こんな失敗を犯せば
身元の解らない状況で命を立つ

部屋も、ものけのからになっているはずだ


どうやら私たちに
何らかのシグナルを出したかったのだろう


北○鮮の拉致実行組か?

ロ○アのスパイか?


いや、それともちょっとちがう気がするな



まったく


頗る面倒



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