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婚約者の描く絵が酷評されていますが、私だけはその価値を理解しています

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「うーん、やはり上手く描けないなぁ」

 そこに描かれている絵は、なんとも形容し難い悍ましい何かです。

 私を見て描いたそうですが、誰もが口を揃えて酷い出来だと仰います。

 いえ、皆様の言い分も理解はできます。

 なにしろ私は王国一の美女とされていますし、王族からも直々にお褒めの言葉を頂いていますから。

 やっかみも多少はあるのでしょうけど、概ね絵に対する真っ当な評価だと言えます。



 ですが、私だけは知っています。

 婚約者の描くその絵は、真実、私を正確に描写しているということを。

 私だけが彼を、彼だけが私を、お互いに理解しているのです。

 誰も知り得ぬその事実に、この上ない喜びを感じるのです。
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