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婚約者のついた嘘が巧妙で、本当に嘘か分からなかったため一日中考えてしまった話

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「四月の初日は嘘をついて良いらしい日ですよ」

「はあ、なるほど」

 いつものように家に来た婚約者のエドガー様は、そのように宣戦してきました。

 そう、つまりはこれから嘘をつくという、明らかな決闘宣言です。

 この勝負、受けなければ貴族としての名折れ……。

 いや、手袋は投げつけられていませんけれども。言葉の手袋を投げつけられたわけです。そのように私は解釈しました。

「そう言えば」

 ほら来ましたよ。

「嘘をついて良いのは午前中だけだそうです」

「……はい?」

 これは……嘘か本当か判断しづらいですね……。

 いや、地域差によってはどちらも有り得る……?

 この国ではどうなのでしょう……?

 或いは、こうやって考える時点でエドガー様の術中に嵌っている……?

「困っているようですね、実は――「黙って、考えています。答えが出るまでは放って置いて下さい」

 私はエドガー様を追い返し、一日中を思索と調査に費やしました。

 結果、やはり地域によって午前中で切り上げたり、一日中でも大丈夫だったりするようです。

 そしてこの国にはそのような風習は無いとのことでした。つまり嘘だった、ということですね。



 そのようにエドガー様に答えを述べたら、もう嘘はつかないと誓われました。

 なにゆえ???

 いや、別に抱き着いてこなくて良いです。
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