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婚約が破棄された友人の話をしたら、結婚しようと息巻いてきた婚約者の話

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「婚約破棄、ですか……」

「ええ。文通相手の知り合いが婚約者の浮気で、そのような結果になったらしいです」

「それは、なんとも……」

 我が婚約者たるエドガー様は同情しているようですが、しかしそう他人事でもないと思うんですよね。

 と言うのも、浮気が無くて円満な関係だったとしても、家の事情次第では婚約が破棄されることは有り得るからですね。

 家の没落や爵位剥奪、上位の他家からの横槍、婚約者との死別、死別でなくても回復の難しい重病などの発症、その他諸々、考えられるケースは幾らでもあるでしょう。

「では、今すぐ結婚しましょうか」

 いや、しませんけど。

 というか、そう軽率に判断するものではありませんよ。一生ものなんですから。

「でも僕は他の奴に貴女を渡したくありません。本当なら、家に閉じ込めて誰の目にも触れさせたくないんです」

 ……それは、今の生活とあまり変わらない気がしますね。

 そもそも私は出不精ですし、庭にもあまり出ません。出掛ける時は必ず貴方が側に居ますし。

「それは、確かに……。貴女はもう少し外に出た方が良いかも知れませんね」

 面倒なので嫌です。
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