8 / 131
未分類
子供になった王子を連れて亡命した話
しおりを挟む
「ああ、パミラ……ぼくを助けて」
粗末な布団に包まって涙目で震えている青年は、王国の王位継承権第三位を有する王子であったシュバルツ様だ。
聞いた話によると、シュバルツ様は帝国との戦争において親友を喪われてしまったらしい。
そして親友を喪うと同時に幼児退行し、これまでの勇敢なる闘争精神をも失われてしまったのだとか。
――シュバルツは、もはや使えん。婿に取る者も無いだろう。捨て置け。
王はそんなシュバルツ様を利用価値が無いものとして、使用人たる私たちに処理を命じられたのだ。
使用人たる私たちには、王の命に逆らう道理はない。
けれども、全てを喪失したシュバルツ様を捨てることなど、私には出来なかった。
シュバルツ様は騎士団によって連れられて森に捨てられ、斬り殺されるところであった。
が、同乗していた私たちが騎士団の連中を皆殺しにしてやったのである。
騎士団とは名ばかりの、戦争にも出ていない王宮の雑兵などは相手にもならない。
しかし命を拾ったとはいえ、王国に戻ることはできないだろう。
ゆえに私たち使用人は王子を連れ、騎士団の馬を駆って共和国に亡命した。
そんなこともあろうかと、王国の機密を幾らか融通してもらったのである。
もちろん、無断ではあるが。
結果として監視付きではあるものの、私たちは共和国の戸籍を得ることができた。
そして現在働きに出ているミアに代わって、この私がシュバルツ様のお世話をしている。
「お労しや……シュバルツ様……」
シュバルツ様の幼い頃から面倒を見てきた私は、彼を優しく抱き留める。
すると、彼は安心したような声音を漏らして私を強く抱きしめてくれるのだ。
ミアにはあまり言えないことだが、私はシュバルツ様を愛している。
使用人としての立場からではなく、一人の異性として、である。
彼女とは王城に入る前からの長い付き合いだが、幾ら彼女が止めようとも、私は彼を愛し続けるだろう。
もしミアにその気があるのなら、まあ、うん、それはそれで有りだと思っている。
粗末な布団に包まって涙目で震えている青年は、王国の王位継承権第三位を有する王子であったシュバルツ様だ。
聞いた話によると、シュバルツ様は帝国との戦争において親友を喪われてしまったらしい。
そして親友を喪うと同時に幼児退行し、これまでの勇敢なる闘争精神をも失われてしまったのだとか。
――シュバルツは、もはや使えん。婿に取る者も無いだろう。捨て置け。
王はそんなシュバルツ様を利用価値が無いものとして、使用人たる私たちに処理を命じられたのだ。
使用人たる私たちには、王の命に逆らう道理はない。
けれども、全てを喪失したシュバルツ様を捨てることなど、私には出来なかった。
シュバルツ様は騎士団によって連れられて森に捨てられ、斬り殺されるところであった。
が、同乗していた私たちが騎士団の連中を皆殺しにしてやったのである。
騎士団とは名ばかりの、戦争にも出ていない王宮の雑兵などは相手にもならない。
しかし命を拾ったとはいえ、王国に戻ることはできないだろう。
ゆえに私たち使用人は王子を連れ、騎士団の馬を駆って共和国に亡命した。
そんなこともあろうかと、王国の機密を幾らか融通してもらったのである。
もちろん、無断ではあるが。
結果として監視付きではあるものの、私たちは共和国の戸籍を得ることができた。
そして現在働きに出ているミアに代わって、この私がシュバルツ様のお世話をしている。
「お労しや……シュバルツ様……」
シュバルツ様の幼い頃から面倒を見てきた私は、彼を優しく抱き留める。
すると、彼は安心したような声音を漏らして私を強く抱きしめてくれるのだ。
ミアにはあまり言えないことだが、私はシュバルツ様を愛している。
使用人としての立場からではなく、一人の異性として、である。
彼女とは王城に入る前からの長い付き合いだが、幾ら彼女が止めようとも、私は彼を愛し続けるだろう。
もしミアにその気があるのなら、まあ、うん、それはそれで有りだと思っている。
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる