【第1部完結】佐藤は汐見と〜7年越しの片想い拗らせリーマンラブ〜

有島

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Chapter04 - Side:Salt - B

53 > 汐見と佐藤の出会いー12(汐見の事情)

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『っか~~~~……イッケメンも大変だぁ……』
『ふふ……でもその元カノ、別の会社にあと二人彼氏がいたらしいので、そこに転職がうまくいって、今は別の県で元気にしてるそうですよ』

『マジっかよ……』
『逞しいですよね』

 あはは、と笑いが漏れてきた佐藤にホッと一安心した。

〝笑ってる方が数倍いいな……〟

 そう考えてると、何かが胸に去来した。そして、決意した。

『……年明けたら、僕……いや、オレも上長にそれとなく進言してみるよ』
『え? ナニをですか?』

 キョトンとした顔をしている佐藤が、かわいいな、と素直に思えた。
 だから。

『ズッキー……ちがった、鈴木先輩の件。普通にパワハラだと思うぞ、それ』
『え、でも……』

 佐藤はすでに辞める意思を固めていたんだろう。

〝……こうやって……〟

 オレは少し前のことを思い出していた。
 まだ記憶が風化していない……前職の会社での同僚のことを────

〝……本当に真面目で、健全で、優秀な人材が、大きな組織から消えていっちまうんだろうなぁ……〟

『はっきり言うと角が立つから、ちょっと工夫しないとなぁ……』
『え、でも、汐見さん、部署違うんじゃ……』

『まぁ、そうなんだが……ヘッドハンティングしてくれた先輩が、さ』

 オレは本当に周りの人間に恵まれてるな……とつくづく思う。
 人間関係でそこまでの泥沼はまだ経験していないんだから……

『ここの取締役と仲がよくて……って、これ、オフレコだぞ』
『え? あ、はい……』

『まぁ、オレなんかの力でどうにかできるものじゃないとは思うけど、佐藤さんが辞める必要はないって話、だ』
『は、ぁ……』

 オレは学生時代から業界では割とHNが知られていた。主にVCSの世界で。パブリックコードをUPしたり技術ブログをやってたこともあって、ブラック体制になって死にそうな話をそういった場所で吐露していると、色々な人から声をかけられた。そして、一番面白そうだと思ったのと、リアル知り合いからの紹介なら、と、この会社に転職した。

 その時に声をかけてくれた先輩が、この会社に口利きをしてくれた。大学の先輩ではあったが、先輩と言っても、実際には10歳以上離れていて、その人自身はすでに独立起業していた。本当は自分の会社に呼びたいがまだ満足に給料が支払えないから残念すぎるけど君をあの会社に紹介したい、と言われて転職を決めた。

 自分の影響力が全く及ばない組織で下働きさせられると削られるだけだな。と以前の会社で痛感したので、転職情報にはめちゃくちゃ慎重にアンテナを張っていたところだった。

〝その時のいろんなことが……こんなところで人助けできることにつながるとは、なぁ……〟

 人のえにし──というのは不思議なものだ。

 そう、思ったんだ────





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