オリジナル短編小説

夜月 雪

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目の前で起こるできごと ㋡

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世界は何度もやり直す。
誰がが間違える度に巻き戻す。
それが嫌だった……。
神は悪戯のつもりなのか、僕だけ記憶を残して皆の記憶は消した。
だから、繰り返されるのが嫌で、迷惑だった。
誰がが強盗をすれば巻き戻り、誰がが殺人をすれば巻き戻る……
だけど、誰がが死んでも巻き戻さずに時間を進める……普通逆だろ?なぁ神様
何度もそう思うけど、聞き入れてもらえず……今も目の前で大好きな人がビルから飛び降りて死んだ。
耳に残る彼女が地面に叩きつけられた音。
下にいた人達の悲鳴。
これで大切な人が死ぬのは、何回目だろうか……
まず一人目は、母親だった。ビルからの飛び降り。
二人目は父親、首吊り。
三人目と四人目は親友、互いに包丁刺しあった。
五人目は幼馴染、僕の姉に首を絞められた。
六人目は姉、睡眠薬を過剰に接種した。
七人目は……何だったか。
※人目は………※人目?
ああ、そうだ……九人目は僕自信だ、鏡を全て割って僕は僕を殺した。
十人目、好きな人だったはずの彼女。ビルからの飛び降り。
それら全て、僕の目の前で殺られた……
だけど、十人目が死んでから僕は何も感じることなく、思うことすらなく、ただ見ていることしかできなくなった。
理由は、簡単。
九人目は僕自信だったからだ。
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