【R18】私の担当は、永遠にリア恋です!

はこスミレ

文字の大きさ
8 / 193
本編

4・Fantastic Ride





なんで、なんで、なんで!
何が起こってるの、一体これはどういうこと?!
脳内処理が追いつかない。
エマージェンシー!エマージェンシー!

「お姉さん、大丈夫?まだ具体悪いですか?」
「あっ、はい!あっいいえっ、お陰様で元気です!き、昨日は本当にありがとうございましたっ!」
どもるどもる、自分でも何を言ってるのか分からない。緊急事態だ。
どうしよう、どうしよう、何をすればいい。ちょっとどころじゃなく息が苦しいんだが、ここは酸素が薄いんじゃないだろうか。
「なかちゃん、喜一くんと面識あるの?」
ユキさんがニコニコして聞いてくる。
ええまあ一方的な認知なら、彼が15歳くらいの頃から知ってますけど。
「き、昨日、具合悪いところを助けてもらったんです…」
そして、恋人といちゃいちゃしてるところを見ちゃったんです。死にたい。
「そうなんだ!すごい偶然だねー!喜一くん、やるじゃーん!」
「いやいや、普通のことですから。」
褒められてちょっと照れてるばんばん、可愛いー!
じゃなくて!
うっかりテレビ見てるみたいな気持ちになっちゃう!
落ち着け、落ち着け。これは現実だ。絶対にファンだとバレちゃいけないぞ。匂わせるのもダメだ。
ユキさんがテレビや芸能人に疎い人で良かったー!いや、疎くなくても、サンキュウ!は知名度高くないから、知らない人の方が多いわけで…
悲しい。こんなにかっこいいのに…どうしてみんなに知ってもらえないんだろう。
「なかちゃん?」
はっ!危ない危ない、ボロを出さないようにしなきゃ。
「あっ、元気です!」
「うん、知ってるよー。ね、喜一くん、このワンピース似合ってるよね?」
「そうですね、赤が似合ってます。俺は、紐で締めてる方が好みかな。」
はい、締めまーす!一生締めて着まーす!
ああ、ばんばんに褒められた。ワンピース似合ってるって!どうしよう!ありがとう!死んじゃう!
顔がどんどん熱くなって、誰が見ても真っ赤になってるって分かってしまう。
どうしよう、ファンってバレたらどうしよう。
「あ、なかちゃん照れてるなー!」
「そっ、そりゃ…こんなかっこいい人に褒められたら…」
両頬に手を当てて、顔色を隠す。めっちゃ熱い、火を噴きそう。
「へへっ、ありがとうございます。」
なんなのその照れ笑い、死ぬ死ぬもう無理。
「喜一くん、この間の取り置きした服の引き取りだったよね。」
「そうです。あ、服見たいんで、まだ置いててもらっていいですか?」
「オッケー!今日はお客さんいないし、ゆっくり見てって。」
確かに、私とばんばんしかいない。そもそも、お店は狭いから何人も入れないんだけど。
帰りたい、でも帰りたくない。やっぱり帰りたい。
とりあえず着替えようと試着室に戻ると、目の前に服を差し出された。
「お姉さん、こっちの服も似合うと思うんだけど、着てみてもらえませんか?」
「えっ?」
えーーー!
嘘でしょー!
ばんばんが、私に服を選んでくれてるんですけど!?
待って、無理、エマージェンシーだから!ほんと!
「ね?試着はタダだし。ねー、ユキさん?」
「そうそう、試着はタダなんだから、いっぱい着てってよ!」
死ぬー!いっそ殺してくれー!
ばんばんのキラッキラスマイルが、私の胸を刺してくる。
「は、はい…。」
服を受け取って、カーテンを閉める。
深呼吸、深呼吸。
落ち着いて、私。いいか、これは試練だ。私がこれからも、良きファンとしていられるのか、神が試しているのだ。
絶対に、ファンだとバレてはいけない。ばんばんの私生活を侵してもいけない。自分から行動を起こすなんて以ての外。
ばんばんが、楽しくプライベートを送れるように、できるだけ邪魔をしない。
今は、頼まれたから試着するだけ。
ミッションコンプリートするのだ、分かったな?
イエス、マイロード。

震える手を叱咤し、なんとかワンピースを脱いで、渡された服に着替える。
ばんばんが選んでくれたのは、胸元で切り返しのあるリメイクのワンピースだ。スポーツブランドのロゴがキルトのようになっていて、とても可愛い。切り替えしから下のスカート部分は、ブランドのチェック風で、裾はゴールドのパイピングがされている。
すっごく、ばんばんっぽい。
ばんばんって、私服が派手なんだよね。
この選んでくれた服は、色は抑えめだけどデザインや柄が目を引いていて、ゴージャスだ。
これが、私に似合うって思ってくれたんだろうか。
嬉しすぎて吐きそう。
着替え終わって、一つ深呼吸。
落ち着け、このカーテンを開けたらばんばんがいるんだぞ。
シャッとカーテンを開けると、そこには誰もいなかった。
あれ?やっぱり幻覚だったかな。
「ユキさーん!」
「お姉さん、ユキさんお手洗いに行っちゃいました。」
レジの方からばんばんの声がした。
えっ、ユキさんもしかして、ばんばんに店番頼んだわけ?
ばんばん引き受けたの?
おいおい、ばんばんは天下のアイドル様ですぞ?まじかよ。
「だから、こっち来てー!」
ひえー!!ばんばんにお呼ばれされたー!!これは、冥土の土産かもしれない。
ドギマギ緊張しながらレジに行けば、中から頬杖をついたばんばんがこっちを見ていた。
絵になる…雑誌の撮影みたい…どうして取材班いないの?誰かこの状況を記事にして!写真に残して!めちゃくちゃかっこいい!
「うん、思った通り、似合ってる。可愛い。」
はい、死んだ。さようなら、もう思い残すことはありません。今までありがとうございました。
気が遠くなってきた。この世界線、おかしい。
「あ…ありがとう…ございます…」
「ふふふ、お姉さんって人見知りなんですか?」
だよね、そう思うよね。こんなにどもってちゃんと話せなかったら、そう思うよね。むしろ、ファンってバレてない方がおかしい動揺の仕方してるけどね!
ばんばんは、純粋だから!
「は、はい…ご不快に思われたらすみません。」
「全然、そんなことないですよ!俺が馴れ馴れしいだけだから。嫌だったらごめんなさい。」
優しく微笑まれて、何故か罪悪感が込み上げる。
「そんなこと、全くないので!嫌じゃないです!すみません!」
「本当?良かった。あ、お姉さんだと呼びづらいから、俺もなかちゃんって呼んでいいですか?」
はー?もう無理…ねえ、なんなの?私って、前世でそんなに徳積んでたの?世界を守って殉職でもした?
怖すぎる、この幸運が怖い!
「ええもう、お好きにお呼びくださいませ。」
「じゃあ、俺のことも喜一って呼んでくださいね!」
ぐうぅ…!
間違ってばんばんって呼んでしまいそうだ…。
改めて自分が、認知アピールするタイプのファンじゃなくて良かったと思った。もしそうだったら、ばんばんに認知されてファンだってバレているはずだ。
「は、はい…。」
あー死ぬ。苦しい、息が出来ない。
「なかちゃんは、照れ屋さんなんですね。真っ赤になってる。」
あなたのせいですよ!!
「すみません、慣れてなくて。」
「ちょっと面白いって思ってすみません。」
「いえ…!」
なんて小悪魔…恐ろしい子。
ユキさん早く帰ってきて!
自担と二人っきりなんて、無理ーー!!
レジからにゅっと手が伸びてきて、新たな服を差し出される。
「次、これね!」
「はっはははい…!」
服を受け取り、試着室へ戻る。
どうして、どうしてこの店にばんばんがいるんだろう。いや、服を買いに来てるんだよね。分かってる、それは。
私と趣味が被ってるっていうことか。それは大変光栄です。嬉しいな。
いやしかし、ストーカーだと思われたりしないだろうか。心配だ。

ばんばんがこの場にいるというだけで、さっきまでの暗い気持ちがぶっ飛ぶから、自担の力はすごい。
もう、彼氏がいるゲイとか、どうでもいいもん。
ばんばんが好きなのは変わらない。
はー、好き。感動して涙出そう。

感想 29

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
恋愛
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

体育館倉庫での秘密の恋

狭山雪菜
恋愛
真城香苗は、23歳の新入の国語教諭。 赴任した高校で、生活指導もやっている体育教師の坂下夏樹先生と、恋仲になって… こちらの作品は「小説家になろう」にも掲載されてます。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!