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第三部
Sky's The Limit・最終話-1
しおりを挟む部屋の中を、ドタドタと走り回る音がする。
「お姉ちゃん!捕まえて!」
振り返ると、幼子が満面の笑みで走ってきた。
「よっし、来い!」
大きく手を広げると、力一杯体当たりして胸に飛び込んでくる。
「きゃー!」
「うっ!重い」
保育園でも比較的背が高い方で、体重もそこそこある。きゃーきゃーと騒ぎながら私の腕の中で暴れている。
「はじ、うるさいよ!」
リビングから、冷静に注意をする声が放たれた。
「りん、こわーい!」
「いま、ゆうくんがうたってるんだから、じゃましないで!」
「うん、元要(はじめ)はちょっと声を小さくしようか」
「はあい」
えらいえらいと頭を撫でると、実音々が後ろからやって来た。
「つっかれたー…もう準備できた?」
「できたよー!あとは、みんなが来るだけかな」
今日は、我が家で集まって、ホームパーティをする。最近はみんな忙しくてなかなか集まれなかったから、久しぶりの開催だ。
「はー、さすが私の姪。齢四歳にしてアイドルヲタク」
娘の倫音(りんね)が見ているのは、サンキュウ!のコンサート映像だ。
「倫音、もうすぐ本物のゆーてぃ来るよ?」
「もう?!ママ、りんかわいい?」
立ち上がってくるりと一回転する。今日はお気に入りのスカートを履くと言ってきかなかった。分かる、自担に会う時って最高の自分でありたいよね。
「パパに似てめちゃくちゃ可愛いから安心して!」
「パパより、りんのほうがかわいいもん!」
「そうだね、かわいいよ!」
きいくんに似たおかげで、めちゃくちゃ美少女に生まれ、保育園ではチヤホヤされているようだが、本人は同世代に興味が無い。
「私達、誰とも担当被らないね。お兄ちゃん取られなくて良かったじゃん」
腕の中でふにゃふにゃしている元要の頬をつつきながら、実音々が言った。
「きいくん的には、パパと結婚するって言われたかったらしいよ。何で悠斗なんだ!って悔しがってた」
元要は実音々に似たようで、ちょっと強めだけどクリクリした顔をしている。中身は全然似てなくて、マイペースなのんびり屋だ。
「ゆーてぃは子ども人気あるからなあ」
「りんはこどもじゃないもん」
いつのまにか画面を消して隣に来ていた倫音が仁王立ちをしている。
「ゆうくんのめんどうは、りんがみます」
まさかの、ゆーてぃ孫認定。
「はじは、ましがすき」
私の腕を支えにして、猫のようにでろんと後ろに倒れ込む。
「マサオさんかあ…元要は面食いだからなあ」
「あんなやつ、熨斗つけてくれてやるわ」
実音々がしっしっと手のひらを振る。
「今日来るって言ってたよ」
「…帰ろうかな」
「やだー!ねねいてよー」
元要がジタバタと暴れるから腕がしんどい。
「えーどうしよっかなー」
「ねねがいないとつまんないよー」
「りんも、ねねいないとつまんない」
「何この可愛い双子。仕方ない、いてあげよう」
倫音が実音々にしがみつく。
「ねね、ゆうくんきたらさ…」
「うん、何?」
二人でコソコソと女子っぽいやり取りをしている。
「ねーママ、なんでねねはさー、ましがやなの?」
だらーんと垂れ下がったまま、元要が不思議そうに言う。当事者の気持ちは、傍観者には分からないものだ。
「うーん…人の気持ちって、難しいよね」
「ふーん」
分かってるんだか分かってないんだか、実音々に似て理発そうな顔をしてるから、それっぽく見える。
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