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番外編2
リリーの恋・34
しおりを挟む「マジで大丈夫?」
「はい、ちょっと体調崩しちゃったみたいで。すみません、せっかく来てくださったのに。」
「それは全然構わないけどさ。ゆっくり休みなよ。」
「ありがとうございます。」
「おっさんも、いるならちゃんと面倒見ろよな。じゃあ、また職場で。」
「はいはい。」
「はい、また。ありがとうございました。」
玄関で先輩を見送り、ドアに鍵をかける。
隣で見送っていた彼は、自分の荷物を片付け始めていた。
「リリー、具合悪いなら私もお暇するわね。ゆっくり休んでちょうだい。」
どの口が言ってるんだろう。
私がこんな状態になったのは、彼の言葉のせいなのに。
「…ちゃんの…」
「なあに?」
そっと伺うような視線と態度が、怒髪天を貫いた。
「しゃいちゃんの、ばかああああ!!!!」
「わっ、えっ、ちょっと?!リリー?!」
もう知らない。
どうなったって構わない。
一矢報いなくちゃ気が済まない。
怒りに任せて、魔法で彼を制止し、そのまま自室に引きずった。指一本で済む。
こんなことになるなら、初めからこうしてれば良かった。
14歳時分の方が、思い切りが良い。今なら褒めちぎってあげたい。
彼をベッドに放り投げて、スプリングが重みに軋んだ。
「リリー、落ち着いて!」
「うるさい!大バカのしゃいちゃんは黙ってて!」
着ていたワンピースのリボンを解き、ストンと床に落とした。中に着ているのは透け感のあるスリップと、この国のアホみたいな国民性が生んだ、とてつもなくセクシーな下着だ。
だって、この国には、これしか売ってないんだよ!
「リリー、何する気…」
「黙っててって言ったでしょ!」
指先で横に空を切ると、彼の唇が硬く閉じた。
スリップを脱ぎ捨て、乳頭部分を留めていたリボンを解き、彼の腰に跨った。
「あの時の私と、違うでしょ。もう大人なの、知ってる?」
美しい衣をゆっくりと剥ぎ取り、彼の滑らかな素肌が露わになった。
首筋に指を這わせて、温もりを確かめる。
「知らないよね、しゃいちゃんは。私のこと、ちゃんと見てくれないんだもん。」
大好きな髪の毛に、指を差し入れてゆっくりと流す。後ろの短くなった一房は、既に毛先がピンクに変わっていた。
これじゃあ、短くなったの目立っちゃうな。
視線を顔に戻すと、澄んだグレーの瞳が、ゆらゆらと揺れている。
いつも、求めていた。その瞳に私が映る日が来ることを。
そう、そのまま、その目で…
「見ていてね。私が誰を好きなのか、ひと時も逸らさずに。」
閉じたままの唇に、そっと自分のそれを寄せると、アルコールの香りがした。
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