【R18】次に目を開けた時、イケメンのベッドの中に異世界転移してました。

番外編２

リリーの恋・終

 式典は、とてつもなく豪華で華美で格式高くて形式張ってて、とてもとても疲れた。
 だけど、幸せだった。
 国中で私達のキスシーンが流れたのは、ものすごく恥ずかしかったけれど、まあ良い思い出になるだろう。

「で、何で女王陛下が未だにここで働いてるわけ…」
 お茶をカップから飲みつつ、先輩が椅子に座る私を見下ろす。
「えー、研究って時間かかるものなんですよ。知りませんでしたか？」
「知ってるわ！何で女王なのに研究員を続けてるのかって聞いてんの！」
「ハーブ研究の知識と技術を持ち腐れさせるのは勿体無いって、偉い役人から許可出てるから大丈夫です。」
 大きなため息を吐き、隣の空いている椅子に座った。
「あーあ、俺ってただの当て馬でバカみたいだったなあ。」
「そんなことないですよ！先輩のおかげで、しゃいちゃんも私への気持ちに気付いてくれましたし。」
「だから、それを当て馬って言うんだよ。はーあ、可愛い女の子とセックスしてなきゃやってらんないよなあ。」
「どうぞどうぞ、お好きなだけなさってください。」
 じとりと睨まれるが、可愛いだけで効果はない。
「で、国王陛下の手練手管はどうなわけ？」
「…うーん、しゃいちゃん以外としたことないから、そういうのよく分かんないです。」
「じゃあ、俺とセックスして確認してみたら？」
「遠慮します。っていうか、そんなこと言ってると先輩、しゃいちゃんに社会的抹殺されますよ。」
「あいつなら、やりかねない。」
 けっと悪態をついて、先輩は自席に戻って行った。
 色々あったけど、なんだかんだで先輩はいい人だな、と思える。
「さて、続き続き。」
 顕微鏡を覗き込めば、ハーブの香りと細胞が私を世界に引き込んでくれた。

 温室に入れておいた鉢を荷車に乗せ、固まった体を伸ばしていると、後ろから抱きしめられた。
「うふふ、密会スクープ撮られちゃうかしら。」
「しゃいちゃん、びっくりした。仕事は？」
「廊下からリリーが見えたから、抜け出して来ちゃった。」
「また怒られるよー。」
「いいのよ、普段は真面目にしてるんだから。」
 クスクスと笑って頬に口づけされた。
「はあ、良いわねえ…こういう感じ。これが幸せってものなのかしら。」
 美しく揺れる髪と彼の大きな手に包まれて、私も幸せを噛みしめる。
「そうだね、幸せーって感じ。ねえ、しゃいちゃん。」
「ん？」
「しばらく生理が来てないんだよね！」
「ええっ？！ほ、本当？！本当なの？！あっ！そうよ、今すぐ王医に診てもらいましょう！」
「あははは！じゃあ、室長に半休もらってこようかな。」
「そんなの後で私から言っておくから、良いわよ！さ、行きましょう！転ばないようにしっかり私につかまるのよ。」
 自分より真剣に慌てている彼を見て、嬉しくて楽しくて、とっても幸せな気持ちになった。
「どっちが生まれるかなあ。」
「どっちでも良いわ、産まれて来てくれるだけで最高だもの。ああっ、私、お父さんになるのねえ。」
「しゃいちゃんに似ますように！！！！」
「リリーにそっくりでありますように！！！」
 本当のところは、どっちでもいい。
 私の初恋は、彼の初恋でもあり、やがては大きな愛へと変わる。
 二人で歩んでいくことが、幸せなのだ。
「ねえ、お母さんって悪阻ひどかった？」
「アユリはそうでもなかったわよ。」
 私達は、手を繋いで温室を出て行った。