ほたるのゆめ

ruki

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僕はわざと直接的な言葉を並べて彼に嫌われようとした。

僕は本当は、あなたの嫌いなオメガのフェロモンに溢れているんですよ。
エッチも好きだし、誰とでも寝れる。
好きじゃない人の子供だって、生めるんですよ。

僕は心の中でそう囁き、顔は笑顔を作った。

『今日は送ってくれてありがとう。僕、発情期に入っちゃってもうお見舞いに行けないから、さかなちゃんにおめでとう、て言っておいて。落ち着いたらまた赤ちゃんのお顔を見に行くから、て』

僕はシートベルトを外してドアに手をかけた。

『じゃあ、しばらく籠るから連絡してこないでね』

僕はにっこり笑って車を降りた。そしてそのままエントランスに入っていく。

振り向かない。

振り向けない。

もう口元の笑みは崩れ、涙が溢れてくる。

さよなら、僕の片思い。
18年間ありがとう。

きっともう、彼は僕に連絡をしてこない。
だって、嫌われるようにしたんだから。

最後に見る顔は笑顔が良かったな。

別れ際の彼の顔は強ばり固まっていた。まるで信じられない物を見るように、なにも言わず僕を見ていた。

涙がまた溢れる。

今まで決して泣くまいといつも堪えていたけれど、最後ぐらいはいいだろう。

こんなに悲しくて苦しいのに、涙で歪んだ世界はまだ尚輝いている。

この光が、早く消えてしまえばいいのに・・・。

そして自分の部屋に着くと、着替えもそこそこにベッドに倒れ込む。

彼と一緒にいたせいか、自分の身体から微かに彼の香りがする。この香りが消えないように、僕はそのまま布団に潜った。それでもすぐに消えてしまうだろう。

それでもいい。
ほんの少しだけでも、この香りに包まれていたい。

僕は微かに香る香りに包まれて、涙に濡れる目を閉じた。

僕はそのまま眠ってしまったようで、目を開けると外はわずかに明るくなっていた。
香りはもうない。
涙も乾き、目が腫れて違和感がある。でもそれより・・・。

身体が熱い。

どうやら発情期に入ったらしい。
あと2~3日先だと思ったけど、少し早かった。
もしかして、昨日のストレス?

僕は昨日のことを思い出して自嘲気味に笑った。

昨日の彼の顔を思い出す。そして、自分のことを褒めた。

よく頑張ったな、僕。
この18年、よく彼に隠し通した。

オメガであることは知らせていたけれど、それを意識させないようにしてきた。そしてそれは成功していたのだ。

だってあの顔。
絶対に僕がオメガであることを忘れていた顔だ。

ふふふ、と笑って涙を拭いた。乾いたはずの目がまた濡れている。

どうせなら最後に発情して迫れば良かった。そうしたら、もしかしたら彼の子種をもらえたかも・・・。

絶対に自分ではできないだろうことを思ってまた笑うと、僕はスマホを手に取った。

『今日からいい?』

時間はまだ4時。きっとまだ寝ている。
そう思ったのに、そのメッセージに既読が付いた。

『いいよ。すぐ行く』

その返事に驚きながら、僕はスマホを置いた。

特に返事はしなくても既読が付いたら分かるだろう。少なくとも、相手とはそれくらい気の置けない仲だ。

僕は火照った身体を丸くして、また布団に潜った。発情期に入った身体は重くてだるい。それにもう、かなりきている。

身体がゾワゾワする。

僕はとりあえず目を瞑った。
徐々に上がる息と、震え出す身体。そして失われていく理性。

この瞬間が僕は嫌いだ。
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