王子はうさぎを捕まえる

ruki

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「痛っ!」

驚いてみると、その子は大きな黒い瞳を赤くして涙を貯めていた。

「もう知らない!」

そう言うと、身体を離してくるりと向こう側を向いてしまった。

いつもふわふわニコニコと笑っているその子のそんな顔を見たのは初めてで、オレの眠気は吹っ飛んだ。

その後、オレがいくら話しかけても答えてはもらえず、その子は背中を向けたままだった。そしていつの間にか眠ってしまったオレが朝起きると、その子はすでにベッドからいなくなっていた。
 
もともと押しかけ恋人だった。

実習最終日に手紙で呼び出されたオレは、訳も分からず押し倒され、脅され、気が付いたらおいしくいただかれてしまっていた。その後も、大学まで押しかけてきたその子をオレはいつしか受け入れ、今に至っいる。

そう言えば、オレ、あの子に好きも何も言ってない・・・。

いつもあの子から連絡が来て、二人で会い、ベッドになだれ込んでいく。
それがいつの間にかお決まりのコースになっていて、週末も何も言わずにオレの家に泊まっていくあの子に、オレはなんの疑問も持たなかった。

オレ、あの子のこと、本当はどう思ってんだろう?

女性との付き合いは少なくないけど、大抵あっちから告白されて付き合って別れる、の三段オチのよう関係で、実は今まで彼女たちを好きになったことはない。

そう考えて気が付いた。
オレって、人生で誰かを好きになったことがあっただろうか?

女性と付き合いだしたのは高校生になってからだ。
それまではアメリカにいて、女の子と遊ぶよりも友達とつるんでた方が楽しくて、女なんてまるで興味がなかった。それが帰国した途端、いきなりモテだして、女の子と付き合うようになり、初体験も高1のときに済ませた。それからは言い方は悪いけど、女の子を切らしたことがなかったのだ。だけど・・・。

そんな彼女らを、オレは好きになったことはない。

だから別れを告げられても何ら未練もなく、彼女らのことを考えもしないで、一方的にダメ出しをされたことに対して自分が傷ついてきた。

なぜ彼女たちはオレと付き合い、別れて行ったのか。その時彼女らは何を思っていたのか、そんなこと考えたこともなかった。

そこまで考えて・・・。

オレって、もしかしなくてもサイテーな男じゃないか?

自分のダメっぷりに少なからずダメージを食らう。

だけど今回は・・・。

オレはいなくなったベッドの半分に寂しさを覚えた。そして直ぐにメッセージを打つも、既読すらつかないことにショックを受けている。

メッセージに気づいていないだけ?
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