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そうやって僕は受験までの間を過ごした。
家の中も表面上は日常が戻り、両親とも普通に過ごしていた。
けれど、受験の日が近づくにつれて僕はお腹に痛みを感じることが多くなった。
それは受験に対するストレスだと思った。
学校にも塾にも行かずに一人で勉強していたために、この勉強で本当に合格するのか心配だったし、受験会場に行くために外に行かなければならなかったからだ。
けれど、それを両親には言わなかった。
これ以上心配をかけたくなかったからだ。
僕は日に日に痛さが増すお腹を抱え、受験の日を迎えた。
この日は朝から腹痛を覚えていた。だけど、行かない訳にはいかない。ただでさえ心配している両親には告げず、僕は笑顔で家を出た。
けれど痛みは治まらず、それどころかどんどん酷くなる。
手が震えて目が霞み、脂汗が流れる。
それでも、目の前にある解答用紙を埋めなくてはならない。
そう思って必死に頑張り、二教科が終わった頃、僕の意識は途切れた。
そして気がついた時はまた、病院のベッドの上だった。
あの時と同じように両親がいて、母は泣き腫らしたように目を腫らせていた。
受験はもちろんダメだった。
受験どころか、僕は生死の境をさ迷ったらしい。
『妊娠の可能性は否定できない』
その医師の言葉通り、僕は妊娠していたのだ。だけど、妊娠は妊娠でも『子宮外妊娠』。
受精卵は子宮ではなく卵管に着床して、そして卵管が破裂したのだ。
病院に運ばれた僕は緊急手術を行い、一命を取り留めたけれど、もう子供を産めなくなってしまったらしい。
僕はそう話す父の言葉を呆然と聞いていた。
なんだか心が麻痺していてよく理解できない。
ただ、受験に失敗したという思いの方が強かった。
まだ中学生の僕には子供を産むことよりも、高校受験に失敗してしまったことの方が大きかったのだ。
僕は高校浪人になるのかな・・・?
自分が死にかけたことも、もう子供を産めないこともまるで他人事のように実感が湧かず、受験に失敗した僕は、これからどうなるのだろう、という思いばかりがあった。
そしてもう一つ。
智明はどうしただろう、ということだ。
受験は上手くいったのだろうか?
僕が倒れたことを聞いたのだろうか?
智明の志望校はこの辺りで一番偏差値の高い学校だった。うちの中学からも毎年一人行くか行かないかと言うくらい超難関校なのだ。そこを目指すくらい智明は頭が良かったけど、僕との事があって調子を崩していないかどうか心配だったのだ。なのに当日僕が倒れてしまって・・・。
僕のことなんか気にしないで受験に頑張って欲しい。
だけど、もし落ちてしまったら・・・。
そう思うと、智明に対して申し訳なさでいっぱいになる。
今回の事、智明の家にも知らせたのかな?
親はあちらを責めたりしてないかな?
両親がどう思おうと、僕は自分が悪いと思っている。そして、巻き込んでしまった智明こそが被害者だと。
だから僕から智明に連絡をすることは出来なかった。
あのクリスマス以降、事情を知らない友達やクラスメイトはメッセージをくれたけど、智明からはなかった。だけどそれが僕に対して怒っているように感じて、僕からはメッセージを送ることができないでいた。
だけど、今回は気になる。
智明の受験はどうなったのだろうか?
そして、僕のことを知ってしまったのだろうか?
けれど、そのことを両親には聞けず、誰にも聞けないまま卒業を迎えることになった。
僕は術後の経過がおもわしくなく、入院が長引いてその日も病院にいた。
友達やクラスメイト、そして先生からたくさんのメッセージをもらったけれど、やっぱり智明からはなかった。
嫌われちゃったのかな・・・。
あんなことさせちゃったもんね・・・。
そう思っていたその日の夕方、智明が突然僕の元を訪れたのだ。
ノックとともに入ってきた智明の姿を見た瞬間、僕は無意識に叫んでいた。
『ごめん!』
その突然の言葉にビクッと顔を強ばらせ、動きを止めた智明に、僕は更に言葉を続けた。
『ごめんね、智。僕がちゃんとしてなかったから、智に酷いことしちゃった。ごめんね。ごめんね・・・』
あの日以来ずっと思っていた思い。
それを口にしながら、僕は涙が止まらなかった。
家の中も表面上は日常が戻り、両親とも普通に過ごしていた。
けれど、受験の日が近づくにつれて僕はお腹に痛みを感じることが多くなった。
それは受験に対するストレスだと思った。
学校にも塾にも行かずに一人で勉強していたために、この勉強で本当に合格するのか心配だったし、受験会場に行くために外に行かなければならなかったからだ。
けれど、それを両親には言わなかった。
これ以上心配をかけたくなかったからだ。
僕は日に日に痛さが増すお腹を抱え、受験の日を迎えた。
この日は朝から腹痛を覚えていた。だけど、行かない訳にはいかない。ただでさえ心配している両親には告げず、僕は笑顔で家を出た。
けれど痛みは治まらず、それどころかどんどん酷くなる。
手が震えて目が霞み、脂汗が流れる。
それでも、目の前にある解答用紙を埋めなくてはならない。
そう思って必死に頑張り、二教科が終わった頃、僕の意識は途切れた。
そして気がついた時はまた、病院のベッドの上だった。
あの時と同じように両親がいて、母は泣き腫らしたように目を腫らせていた。
受験はもちろんダメだった。
受験どころか、僕は生死の境をさ迷ったらしい。
『妊娠の可能性は否定できない』
その医師の言葉通り、僕は妊娠していたのだ。だけど、妊娠は妊娠でも『子宮外妊娠』。
受精卵は子宮ではなく卵管に着床して、そして卵管が破裂したのだ。
病院に運ばれた僕は緊急手術を行い、一命を取り留めたけれど、もう子供を産めなくなってしまったらしい。
僕はそう話す父の言葉を呆然と聞いていた。
なんだか心が麻痺していてよく理解できない。
ただ、受験に失敗したという思いの方が強かった。
まだ中学生の僕には子供を産むことよりも、高校受験に失敗してしまったことの方が大きかったのだ。
僕は高校浪人になるのかな・・・?
自分が死にかけたことも、もう子供を産めないこともまるで他人事のように実感が湧かず、受験に失敗した僕は、これからどうなるのだろう、という思いばかりがあった。
そしてもう一つ。
智明はどうしただろう、ということだ。
受験は上手くいったのだろうか?
僕が倒れたことを聞いたのだろうか?
智明の志望校はこの辺りで一番偏差値の高い学校だった。うちの中学からも毎年一人行くか行かないかと言うくらい超難関校なのだ。そこを目指すくらい智明は頭が良かったけど、僕との事があって調子を崩していないかどうか心配だったのだ。なのに当日僕が倒れてしまって・・・。
僕のことなんか気にしないで受験に頑張って欲しい。
だけど、もし落ちてしまったら・・・。
そう思うと、智明に対して申し訳なさでいっぱいになる。
今回の事、智明の家にも知らせたのかな?
親はあちらを責めたりしてないかな?
両親がどう思おうと、僕は自分が悪いと思っている。そして、巻き込んでしまった智明こそが被害者だと。
だから僕から智明に連絡をすることは出来なかった。
あのクリスマス以降、事情を知らない友達やクラスメイトはメッセージをくれたけど、智明からはなかった。だけどそれが僕に対して怒っているように感じて、僕からはメッセージを送ることができないでいた。
だけど、今回は気になる。
智明の受験はどうなったのだろうか?
そして、僕のことを知ってしまったのだろうか?
けれど、そのことを両親には聞けず、誰にも聞けないまま卒業を迎えることになった。
僕は術後の経過がおもわしくなく、入院が長引いてその日も病院にいた。
友達やクラスメイト、そして先生からたくさんのメッセージをもらったけれど、やっぱり智明からはなかった。
嫌われちゃったのかな・・・。
あんなことさせちゃったもんね・・・。
そう思っていたその日の夕方、智明が突然僕の元を訪れたのだ。
ノックとともに入ってきた智明の姿を見た瞬間、僕は無意識に叫んでいた。
『ごめん!』
その突然の言葉にビクッと顔を強ばらせ、動きを止めた智明に、僕は更に言葉を続けた。
『ごめんね、智。僕がちゃんとしてなかったから、智に酷いことしちゃった。ごめんね。ごめんね・・・』
あの日以来ずっと思っていた思い。
それを口にしながら、僕は涙が止まらなかった。
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