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「最初に母さんが来た時にはもう佐奈の意識はなくて、その後・・・抑制剤を打たれてからもずっと佐奈は起きなくて・・・このまま目を開けなかったらどうしよう、自分はなんてことをしてしまったんだ。・・・そればかり考えて、アフターピルを飲ませなければならないことに気づきもしなかった・・・。もしあの時、もっと早くに飲ませていれば、佐奈の身体まで傷つけることは無かったんだ」
初めて聞く智明の気持ち。
僕はずっと、僕の方が智明を巻き込んでしまって、真面目な智明に責任を負わせてしまったと思っていたけど、智明はこんなにも大きな苦しみを抱えていたんだ。
「佐奈に会わせる顔がなかった。学校に来ない佐奈はきっと僕に会いたくないんだと思った。だから僕から佐奈に連絡を取ることができなかったけど、入試のあと佐奈が倒れて病院に運ばれたって聞いて・・・。うちには連絡来なかったんだ。だけど倒れた事があの事と無関係じゃないような気がして、親に言って連絡してもらったんだ。そうしたら・・・」
うちの両親は智明の親に、もう連絡はするな、関わらないで欲しいと言ったらしい。そこで責めることをしなかったのは、きっと両親は僕の気持ちを知っていたからだ。
多分両親にはいっぱい言いたいことがあったと思う。だけど、一番傷ついているはずの僕は智明を責める気が一切なく、逆に自分のせいだと思っている。それでさらに智明を責めたと知ったら、もっと僕が傷つくと思ったのだろう。
「うちの両親はそんな佐奈の両親の対応に、もう忘れろ、て言うんだ。なんで忘れられる?佐奈をこんなに傷つけて、高校入試も不意にさせて、手術しなければならないほど身体も傷つけて、そんな無責任なこと、僕には出来なかった」
いても立ってもいられなかった智明は僕の入院先に来た。その時初めて、僕が子供を産めない身体になってしまったことを知ったらしい。それでも両親は智明を責めず、帰るように促したのに、それでもそれを振り切って入った病室で、智明は自分が謝るより先に僕に謝られてしまった。
「なんで佐奈が謝るんだって思った。謝らなければならないのは僕の方なのに。僕の自分勝手な思いで、佐奈の心と身体を傷つけ、さらに人生まで変えてしまったのに、なんで佐奈が、あんなに苦しそうな顔をして僕に謝るんだろう。だから思ったんだ。佐奈の全てを僕が引き受けよう、て。僕のすべてを佐奈のために捧げようって思ったんだ」
だから智明はあの時、まるでプロポーズのようなことを言ってくれたんだ。
僕にはそれがうれしかった。オメガとしても。人としてもなんの価値もなくなってしまった僕のことを、智明だけが必要としてくれたから。だけど・・・。
「・・・それは僕がそうなったのが智のせいだから、責任を取ったの?」
僕のことを好きだったからじゃないの?
「そうだよ。佐奈を傷つけてしまったことに対して、僕は償いたかった」
その言葉に、僕の心が抉れる。
心が痛い。
「だけど、一番は佐奈が好きだったからだ。ずっと好きな佐奈を僕はこの手で傷つけてしまった。そしてその傷は治るどころかさらに深く傷つき、佐奈をどん底に陥れてしまったんだ。そんな佐奈の傍にいたかった。自分が傷つけてしまったのに、傍にいたいなんておこがましいけれど、だけど僕は佐奈の傍で、佐奈の傷を癒してあげたかったんだ」
僕は智明の言葉に顔を上げる。
僕が好き?
「だけど、すぐにそれがいかに甘い考えであったかを思い知らされたよ」
智明は手を顔から離し、その手をぐっと握った。
「ぎこちなく始まった二人の生活で、それでも佐奈の表情が少しづつ和らいで笑うようになっていった時、初めての発情期が来た。佐奈が拒んだらやめようと思ったけど、佐奈は僕を受け入れてくれて、二人で発情期を過ごしたんだ。だけど・・・」
僕は次の智明の言葉に耳を疑った。
「発情の波がピークになった時、佐奈はいきなり叫び出して暴れたんだ。それはあの時の佐奈だった。佐奈は意識を飛ばしたまま、あの時に戻って僕を拒絶したんだ」
知らない。そんなこと。発情期の間は記憶が飛んでしまって覚えていないことも多い。だけど・・・。
「佐奈は覚えていないよ。あの時もそうだった。意識を取り戻した佐奈はあの時の事をほとんど覚えていなかったし、その後の二人で過ごすようになった発情期の時のことも、発情期が明けると佐奈は覚えていなかった」
本当に覚えていない。
だから智明の話をすぐには理解できなかったけど、だけどそれがもし本当なら、僕はあの時以外にもずっと智明を苦しめていたってこと・・・?
初めて聞く智明の気持ち。
僕はずっと、僕の方が智明を巻き込んでしまって、真面目な智明に責任を負わせてしまったと思っていたけど、智明はこんなにも大きな苦しみを抱えていたんだ。
「佐奈に会わせる顔がなかった。学校に来ない佐奈はきっと僕に会いたくないんだと思った。だから僕から佐奈に連絡を取ることができなかったけど、入試のあと佐奈が倒れて病院に運ばれたって聞いて・・・。うちには連絡来なかったんだ。だけど倒れた事があの事と無関係じゃないような気がして、親に言って連絡してもらったんだ。そうしたら・・・」
うちの両親は智明の親に、もう連絡はするな、関わらないで欲しいと言ったらしい。そこで責めることをしなかったのは、きっと両親は僕の気持ちを知っていたからだ。
多分両親にはいっぱい言いたいことがあったと思う。だけど、一番傷ついているはずの僕は智明を責める気が一切なく、逆に自分のせいだと思っている。それでさらに智明を責めたと知ったら、もっと僕が傷つくと思ったのだろう。
「うちの両親はそんな佐奈の両親の対応に、もう忘れろ、て言うんだ。なんで忘れられる?佐奈をこんなに傷つけて、高校入試も不意にさせて、手術しなければならないほど身体も傷つけて、そんな無責任なこと、僕には出来なかった」
いても立ってもいられなかった智明は僕の入院先に来た。その時初めて、僕が子供を産めない身体になってしまったことを知ったらしい。それでも両親は智明を責めず、帰るように促したのに、それでもそれを振り切って入った病室で、智明は自分が謝るより先に僕に謝られてしまった。
「なんで佐奈が謝るんだって思った。謝らなければならないのは僕の方なのに。僕の自分勝手な思いで、佐奈の心と身体を傷つけ、さらに人生まで変えてしまったのに、なんで佐奈が、あんなに苦しそうな顔をして僕に謝るんだろう。だから思ったんだ。佐奈の全てを僕が引き受けよう、て。僕のすべてを佐奈のために捧げようって思ったんだ」
だから智明はあの時、まるでプロポーズのようなことを言ってくれたんだ。
僕にはそれがうれしかった。オメガとしても。人としてもなんの価値もなくなってしまった僕のことを、智明だけが必要としてくれたから。だけど・・・。
「・・・それは僕がそうなったのが智のせいだから、責任を取ったの?」
僕のことを好きだったからじゃないの?
「そうだよ。佐奈を傷つけてしまったことに対して、僕は償いたかった」
その言葉に、僕の心が抉れる。
心が痛い。
「だけど、一番は佐奈が好きだったからだ。ずっと好きな佐奈を僕はこの手で傷つけてしまった。そしてその傷は治るどころかさらに深く傷つき、佐奈をどん底に陥れてしまったんだ。そんな佐奈の傍にいたかった。自分が傷つけてしまったのに、傍にいたいなんておこがましいけれど、だけど僕は佐奈の傍で、佐奈の傷を癒してあげたかったんだ」
僕は智明の言葉に顔を上げる。
僕が好き?
「だけど、すぐにそれがいかに甘い考えであったかを思い知らされたよ」
智明は手を顔から離し、その手をぐっと握った。
「ぎこちなく始まった二人の生活で、それでも佐奈の表情が少しづつ和らいで笑うようになっていった時、初めての発情期が来た。佐奈が拒んだらやめようと思ったけど、佐奈は僕を受け入れてくれて、二人で発情期を過ごしたんだ。だけど・・・」
僕は次の智明の言葉に耳を疑った。
「発情の波がピークになった時、佐奈はいきなり叫び出して暴れたんだ。それはあの時の佐奈だった。佐奈は意識を飛ばしたまま、あの時に戻って僕を拒絶したんだ」
知らない。そんなこと。発情期の間は記憶が飛んでしまって覚えていないことも多い。だけど・・・。
「佐奈は覚えていないよ。あの時もそうだった。意識を取り戻した佐奈はあの時の事をほとんど覚えていなかったし、その後の二人で過ごすようになった発情期の時のことも、発情期が明けると佐奈は覚えていなかった」
本当に覚えていない。
だから智明の話をすぐには理解できなかったけど、だけどそれがもし本当なら、僕はあの時以外にもずっと智明を苦しめていたってこと・・・?
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