魔法使いになりそこなったお話

ruki

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「ごめんね。美香ちゃんも適当にくつろいでね」

月に一度は泊まっていくので、美香ちゃんもこの家の事はよく知っている。

「私のことは気にしないで。気持ち悪くなったらすぐ呼んでね。あと・・・食べるのは無理でも飲み物は飲んだ方がいいから・・・」

そう言って冷蔵庫から水を持ってきてくれた。

「脱水が一番怖いから、飲めそうなら飲んで」

「ありがとう」

「じゃあ、私はあっちに行ってるから、何かあったらすぐ呼ぶのよ」

そう言って寝室を出ていった。

持つべきものは友達。
僕達は一人暮らしをしたのも同時期で、その頃から色々と助け合ってきた。僕の発情期には食料の買い出しをしてくれたり、お互い病気になったらお世話しあったりした。

今回もすごくお世話になっちゃった。
次のランチは僕が奢ろう。

そう思いながら僕はその日、早めに就寝した。
そして朝、気持ち悪さで目が覚めた。

まだ少し早い時間。
美香ちゃんはベッドの下に布団を敷いて寝ている。いつもはベッドに美香ちゃんが寝て布団には僕が寝てるんだけど、具合の悪い僕に気を使ってくれたみたい。そんな美香ちゃんを起こさないようにトイレに行って吐く。でも何も食べてないのでなにも出ない。

苦しい。

気持ち悪さに涙が出てくる。
この吐き気はなんだろう?一昨日から急に起こった身体の不調に、実は少し怖くなってきていた。
大抵は一晩寝たら治るはずなのに、この吐き気はもう三日目だ。

なんか病気なのかな?

不安が押し寄せてくる。すると背中に優しい温もりが・・・。

「波瑠ちゃん、大丈夫?」

いつの間にか美香ちゃんが後ろで背中をさすってくれていた。

「・・・うん」

いったん治まった吐き気に、トイレを出てソファに座る。

「病院行こう。一緒に行ってあげるから」

心配そうにのぞき込む美香ちゃんに、僕は素直に頷いた。僕のかかりつけにしている病院は土曜日も診療している。そこへ受付開始と共に行き、診察してもらった。そしてそこで、信じられない言葉を耳にする。あまりのことに唖然として何も言えない。心配で付き添ってきた美香ちゃんも隣で口を開けてぽかんとしている。

「・・・・・・・・・え?」

馬鹿みたいにたっぷり間をとって聞き返してしまった。

「だから・・・」

医師はちょっと困ったような顔をして、もう一度同じセリフを吐いた。

「おめでとうございます。妊娠しています」

やっぱり聞き間違いじゃなかった。
だけど・・・。

「身に・・・全く覚えがありません・・・」

妊娠て・・・僕は妊娠するようなことをした覚えがない。覚えも何も、僕は来年魔法使いになる予定だったのだから・・・。

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