Condense Nation

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2章 関西統一編

第14話  知性の星

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碧の星団 飛空艇

 エイジは地上500m高度のラウンジから外を見続けている。
いや、正確には何も見てはいない。
目線のみ外を向いているものの、頭で光景を認識しているものは
ラボリとは関係なく何もなかった。

 (あいつが、悪いんだ・・・あいつが)

ディサルトでメンバーを撃ち放った感触がまだ手に残り続け、
耳鳴りで気持ち悪さをごまかすのみ。
仕方ない、自分も頭の中で反射を起こし、実行してしまったから。
中つ国の上空でリーダーらしく見えるよう立ちつつ中、
すぐ側から声がかかって、認識まで数秒経つ。


「「かしら」」
「・・・・・・」
「おい頭ー」
「あ、アーロンさんか」

ようやく気付いたエイジにアーロンはぼやく。
メンバーの、仲間の呼びかけをとらえ直して顔を向けた。
リーダーなんだからしっかりとな、と言いたげに気持ちを
切り替えろと姿勢を正させる。

「先の事、まだ引きずってるのか?」
「・・・・・・」

ストレートに聞いてくることで、また沈黙になる。
せっかく新たにここへ入団したのに、父親を手にかけた者を
逆に手にかけた事など快く思うわけがない。
しかも、マナミはケイの友人。
あんな処遇で良かったのか、判断に揺れ動くエイジに
27歳の年長者が追って擁護ようごする言い分を放つ。

「裏切り者は裁かれる、混乱因子は排除が習わし。
 戦争はそんな天秤にかけるときもあるもんだ。
 あんたはもう星団のTOPなんだから」
「・・・・・・そうだな」

リーダーの父を失って以来、エイジが星団の総帥を継ぐ。
裏切り者を1人排除して動揺するくらいでは務まらないと
背中を押されてしまう。ガイルも相変わらず口は開かないものの、
いつも視線だけで伝わっている。立場は自分が上でも、
経験知識で推されっぱなしに、逆に頭が下がりそうだった。
そんな彼から何か用件があるようだ。

「それはそうと、新入りさんが現れたようだ。
 また新たに加入希望者が来るってよ」
「こんな時にか?」

自分は父の死より総司令権限ファイルを見つけて同盟システムの項目で
亡命者だけをここへ集めようとしていた。
しかし最近、星団の参入者はほとんどいなかった。
にもかかわらず、こんな時期に入りたい者がいるなんて想定していない。
操縦するガイルから次の行動を要請された。

「降ろすのか?」
「ああ、頼む」

本人はもうここへ来るらしい。
相手が誰か分からず、面接という目利き形で会おうと
部下に聞かれてそのまま待ち合わせ場所に飛空艇を降ろす。


ヒロシマCN 小崎下島エリア

「あいつか?」

 砂浜に着いて警戒されないよう1人だけ降りる。
拠点付近の砂丘を見ると、そこに1人の女性が立っている。
今までこの辺では見たことがない者だった。

「碧の星団リーダーのエイジだ、あんたはどこの者だ?」




















「四国CNから亡命してきました、カナ・ヒグラシと申します」
「四国からか」

彼女は中つ国CNではなく四国CNからの者だったのだ。
敵対勢力の水人がここにやって来るとは。
もしかしてスパイなのか、タブレット端末で個人情報を確認すると
CN法側では審査が通っている。水飴にたかる虫ではないらしい。
ただ、おいそれと許すわけにはいかなかった。
先の件でアクシデントを繰り返すわけにはいかず、
しかも、能力者でなければ入団できない。
相応の取り柄でもあるのかと問いだした。

「亡命・・・ましてや1人でここへやって来るとは。
 自国で相当なにかやらかしたのか?」
「いいえ、前CNにおいて不遇の位置付けにいられず。
 御CNの資源及び技術力に大いなる魅力を感じ、今回せ参じました」

淡々とそう答える。
前では技術者だったらしく、ここでも活かしたいと言う。
女性1人で、しかも亡命でやってくるなど思惑が抜けきれなかった。
不遇とは何か聞いても詳しく話そうとしない。
またやっかみが起こるかもしれない。
追い出すのも少し酷かもしれないが、エリートの壁を高く
退場の方向で話を進めていくようにする。

「そうか、ここも中つ国とさして変わらないと思うが。
 よっぽどの能力がなければ入団できないぞ?
 あんたにとって、星団に何かこだわりでもあるのか?
 ないなら下の世界に――」

カナは飛空艇を指さして訳を続けた。


「あの空挺は反重力技術が用いられていますね?」
「そうだ、古くから伝わるここの技術だ。
 星団だけのものでもないぞ?」
「私はそれをさらに改良する事が可能です。
 四国の水素技術を活用してみます」
「水素技術?」

かつて彼女の持ち味だった先祖の技術をここで用いると言う。
技術者としてここに務めさせてくれというのだ。
デタラメに思ったが、以下の供述で思い知らされた。

「過去に水素検知で重力推進エンジンを調べた結果、
 正確にはエネルギーではなくベクトル場による
 力を生み出す個体である事が分かりました。
 反重力による力場を磁気処理化されていると推測。
 持論ですが、水クラスターによる光量子の影響があると推測されます」
「・・・・・・」

磁気活性水を加えて高性能化を目指すと言う。
エイジはかつて父から重力は重力子によるものだと聞いていた。
だが、彼女の言い分には光の素子によるものだと述べている。
中つ国CNのどの頭脳者にも重力子の正体はつかめず、
元すら何なのか親ですら理解しきれていなかったのだ。
その話を聞いていたアーロンが驚いたのか艇から降りてきて、
同じ技術者として有用性を聞く。

「お姉ちゃん、バルク水の影響は分かったが、
 非バルク状態の金ナノ粒子で何か良いモン造れそう?」
「そう・・・ですね。かつて、金粒子で形状記憶技術を
 扱っていた経験がありますので、この方面なら」
「そうか・・・」

形状記憶という言葉で四国の現象もようやく合点がつく。
水柱の原理も同様に造られたのだろう未知の技術で、
アーロンの納得サインにエイジは頭をうなづかせた。
もしかしたら、彼女に突破口を見いだせるのかもしれない。

「するてーと、あんたは動力の技術者をやっていたんだな。
 それだけは分かった」
「はい、私は中つ国CNに加入してから腕を高めるべく、
 そして碧の星団の存在に気づきました。
 ここでならば、自らの真価を発揮できると思います」
「・・・・・・」

捨てる神あれば拾う神あり。昔からそんな言葉があったが、
当てはまるケースが今ほどになかっただろう。
さらにガイルも降りてきて少人数さながら総出で迎える。
エイジはメンバー達に了承を求めた。

「良いだろ、2人共?」
「だな、今ここは人手不足だったから困ってたんだわ。
 お姉ちゃんが来てくれて助かったわ」
「地上の者達は無能なのばかりでな。
 有能なお前が来たことに感謝するぞ」
「じゃあ改めて、碧の星団へようこそ!
 今日から一員としてあんたを迎え入れよう」
「ありがとうございます」

こうして彼女の星団入りが決定した。
エイジは心の中で思う。
脱退ロストさせた女で再び新たな女が入って来る。
特に意味はないが、連続した同性の入れ替わりの扱いは
今後気を付けねばならないと肝にめいじておこうと留めた。
巡る人達の流通はそんなに単純なものではないのだ。
星団エンジニア、新たな肩書かたがきを持ったカナは艇に案内された。
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