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2章 関東統一編
番外編第2話 湿度計
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僕はトウキョウCNのある中層兵。
ここでは便宜上、αと名乗っておく事にする。
中層といっても、実働部隊の方ではないシステム、エンジニアの方に
従事する者。上層部直属にある軍備計画局の1人で、
兵器、兵装の製造企画を担当する部である。
しかも、その筆頭といわれるトーマスチームの一員だ。
僕はエリートクラスのそこに所属している。
この文章はこれといった端末で書いていない。
全ては僕の脳内からで、記憶に留めているのみ。
誰かが知りたいとは言わないものの、まとまりとして一応語ろうと思う。
理由はあるイベントからなんとなく思っただけ。
仕事の合間でふと感じた事をつらづらと浮かべたくなったから。
頭脳労働する職場は基本、待遇が良いから不満はない。
ただ、ハッキリいって今の地位には満足していない。
与えられた制作をどれだけこなしても上層のNo達が監査、
そして最終決定権はNo1の総司令官が下す。
縦長に構成された組織がトウキョウの現状でもある。
エリートとはいうものの、陣頭指揮までは任されないので
現時点から上に這い上がるのは中々難しい。
常にモジュールの上に僕達は規格を企画し続けて凌いでいるから、
常人なら目まぐるしい程の数字と記号の中で生きていた。
そんな主任達の会議で新たな兵器、Patriot109の製造を
行う決定がだされた。名称が長いので109とする。
トーマス主任もその1人だが、兵器開発にあまり気が進んでいない様で
部下の自分達に頼らざるをえない様子であった。
彼は確かに温厚な部分が大きすぎて、強行さに欠けているところもある。
攻撃的な構想はやむをえず、手に負えない上からの風の吹き回しを
僕達に向けてきたのだろう。
内容はモジュール基板の良案をだせと言うのだ。
これは火薬量や弾の飛距離など調整する部分で、
上層から攻略上で良い案を出すよう迫られていた。
組織を防御する重要事項を部下に任せるのも心外だが。
しかし、僕的にはこの手の話は嫌いではなく機会の1つと捉える。
せめて、この課題で良い成果を上げたいものだ。
翌日、トーマスラボに試作品である109が運ばれてきた。
さっそくメンバー達もそろって内部を拝見する。
僕にとって見る限り、第一印象は不便だなと感じた。
着眼点はモジュールのケースの方。
ボルトキャリアー内部枠に兵器性能向上で仕込まれている部分。
モジュラーどうしも製造時に溶接されているので、
安易には自由に組み込めない構造になっていた。
この銃はバースト系統で設計されており、
ディサルトの様に短時間での多数掃射でばらまく弾道にはできない。
しかし、僕はこの仕様に美しさを見出した。
ヘッドショットなどの的確さが問われる定点攻撃が
立体的に狭いトウキョウの仕組みも考えられているので、
数撃ちゃ当たるなんていう下品なものは好ましくなく、
精密感にこだわる僕にとっては実に素晴らしい性能だ。
しかも、最近投入されたAUROの電離加工による速やかな
伝導技術もあるので、モジュラーの自由度を高めるべく
“取り外し可能なモジュラー”の改良を提案してみた。
今まで溶接されていたのは勝手に分解されて盗用を防ぐためらしいが、
僕にとっては1つ1つID登録を施すべきだと勧める。
メンバー達も効率的だと大いに賛同してくれた。
気取られないよう、顔を上げて下目づかいでメンバー達を観る。
この瞬間は実に気持ちが良い。
だが、僕の高案にも劣らぬ功績をだした者が1人いた。
ヒデキだ。
事もあろうか、僕の作った構造の軽量化をさらに叩き出してきた。
モジュールを全て縦横等しく装着できるコンパクトさ。
同僚のあいつが独自に構想した物も繊細複雑に完成されていて、
主任からも注目を浴びていた。
ID登録案も踏み台する様に正方形に収まる分配法則系。
僕のきめ細やかで鮮やかな案に泥を塗るかの様に大きい面で、
差し置いたかの如く自慢げに語っていた。
あいつは個人的、最も警戒すべき男だ。
AUROの海水浸透の発案などの実績も上げ始めている。
このまま出し抜かれるわけにはいかない。
なんとかして蹴落とす算段を立てたいが、PDもいるせいか
意外にも隙が少なく躊躇する不満で募る日々が続いていた。
どうしようかと悩んでいた時、中層階の情報屋に集う
裏情報の会を開くという情報を交通局の人から耳にした。
何の仕組みか、PD監視を悠々とくぐり抜けて秘匿情報を羅列。
リフレッシュ広場で食事していた時にたまたま声をかけられて
そして、同僚達の個人情報を餌に、会の参加を許された。
集まったのはわずか数人、とある1人に目を向けると
なんと、そこには上層階の関係者がいたのだ。
Noの称号を持つ者の1人と身近で接触する事ができた。
彼の理想はトウキョウCNによる他CNとの併合という
目標を掲げているのだという。詳しく聞く限りでは賛同も多く、
ここを中心とした支配階級こそ併合にふさわしいのは同感なので、
僕もその話に乗る事にした。
しばらくして、変わらぬ日常を過ごしていく。
ある日、上層部の1人がトーマスラボにやって来て、
ヒデキは上層階に呼ばれていった。あの海水浸透の件だ。
これから本格的に採用されるから質問されに行くのだろう。
どうせ、帰りに上での自慢話をするのだろうと思いきや、
そんなあいつが僕に妙な暗号文で相談に持ちかけてきたのだ。
なんと、内容はNo3の組織の参入についてだった。
それこそ絶好の機会、僕はこの瞬間すら見逃さない。
ここで嫉妬するだけではただの素人なのは言うまでもない。
今、目にしているメールという情報技術も出世の手段として、
綿密な素材として排除を確実に移すのが出世への秘訣だ。
僕のやるべき術は安易で、さり気なく誘導尋問しながら聞くだけ。
上層階の計画について少しでも機密事項を露呈させるだけだった。
何故ならば、あいつはすでに情報漏洩を行っているからだ。
内容が貴重ならば重罪となり、下へ落とされるだろう。
案の定、あいつはのうのうと話してくれた。
これからどうなるのか知りもせずに自ら登りロープを切り始める。
後日、かつての集会で出会ったNoの人に再接触する。
ヒデキの個人情報を彼に伝えた。もちろん、PDの監視に
抵触する内容ではないただの公表の上での情報のみだ。
一部を聞いた彼は何か閃いたのか、僕に大変感謝してくれた。
Noに御目付けされるのは光栄、かつ昇進の功にもなる。
数日後、あいつは捕まり投獄された。
俗にいう大返しだ。清々しい、我ながら実に素晴らしい策だ。
このドーパミンが溢れる感覚がやめられない。
邪魔者を落とすこの感じもまた、整理という生理的欲求の1つで
脳内物質をスルスルと発する感覚が止まらないのがたまらない。
同僚を密告、僕はそれだけでうまくいったのだ。
情報、印象操作で事の成り行きが決まるのがこの世界。
今更ながらトウキョウという場所は恐ろしい所だと再認識する。
とはいえ、頭脳の良し悪しで立場が直決するこのCNゆえに
口から思わずプププと吹き出しそうになる。
仕方ない、物心が付いた時からそうみえていたわけだから。
僕にとってこの世界は複数に連なるマス。
建造物の整理された区画の様な枠しか感じない。
ミクロで無数のマスを自分の理想型に仕立てて提供する。
あくまでも、押し付けがましい傲慢さを気取られない様、
角をうまく削りとって綺麗に工夫する表現をしている。
中心に自らの自我をくるめて建前を演じているだけだ。
そんな日からいつもの日常が続く内、ラボリの要請がくる。
また、他地方からの防衛ラボリがきた。
場所は世田山エリアの外周とのことだ。
最近は壁伝いに敵影反応が確認される報告が相次いでいた。
配下のサイタマとカナガワ兵を警護に回し、哨戒する。
僕達は出動時に必ずライオットギアに搭乗するから、安全性が高い。
セレーネが何かを気にかけている様子があったが、
心配させぬよう優しく現状を示してあげた。
彼女の変質的なまでにライオットギアへのこだわりは素晴らしく、
顔も美しいので僕も気に入っている。
キューブセクションに隠されたという赤い機体も気になるようで、
今は忙しいから協力する時間はないものの、いずれは手伝うつもり。
僕的にはどうでもいいが、こちらの側に加えたい。
ここでロストさせないためにも必ず成功させてみせよう。
現地入りして任務開始した直後、すぐに敵影が現れて交戦した。
地形の特徴を瞬時に把握、割と開けたエリアでの対処。
だが、廃墟も何軒かある。そこに潜伏しているのは明白、
前線が対応している間に、配下達に109のモジュールを
入れ替えさせる手にでた。
速射を低めて遠距離攻撃に長けたチップ、窓際狙撃に
エイムを高めるための集弾率向上チップも組み込む。
連射は射出力向上のために犠牲になるものの、
遠くまで届く仕様にするのが地形の性質上相応しい。
もちろん撃っているのは僕ではなく、2CNの彼ら。
配下の彼らは僕のための盾、頭脳を支える頭蓋だ。
結果、うまくいった。敵の弾道はまばらすぎて届かず、
スナイパーを先に抑えていたのが好機となった。
距離感はマッチできてこちらの方が優れていたからだ。
廃墟をクリアした後は開けたエリアがある。
どこかへ逃げ出したと思いきや、固まる様にやって来た。
躍起になっていた残党が一斉に畳みかけてきたのだろう。
だが、それもこちらの思うツボなのだ。
複数の塊を散らすに相応しいのは爆破属性。
トウキョウCNで最も攻撃力と範囲が高い代物を装填。
そう、GARだ。
爆発系は個人的に好みのタイプではないが、今回は別。
全て109で対応できるなど、単純な思考をもっていない。
扱いに手をこまねく武器で有名だが、この対応も済んでいた。
マガジンのコンパクト化、火薬の最大値の調整、そして欠点の
装填速度を高めたチップを組み込んでいたのは言うまでもない。
事前に改良しておいたモジュラーで対応しようとしたのだ。
その結果。
ドゴオオオオオオオオン
「敵兵、殲滅できました!」
「うむ、ご苦労であった」
という少々わざとらしい効果音と言葉を表示してみた。
僕でもたまにはスカッとした演出くらいする。
銃とは争いを解決するに至って非常に上品な存在。
近接で醜く腕を振り合うなど見苦しい手法を用いたくない。
判断力を問われる知能を活かし、米粒程の遠距離から決まるので
敵兵がどうなったのか一々言うまでもない。
僕自身は機体に乗り込んで指示をだしただけで事が進み、
脳内の企画が華麗に展開されてゆく。
まるでパズルを解いていく様な感覚。
口元がだらしなく曲がって歪みそうになるが、
示しが悪いので現場では耐える。
配下の彼らを下目で見つつ、内心満々の感で帰還した。
口に資源を摂り込み、活動を維持するために命を保つ。
生きるというのは勝手でこの世界では珠罪として扱われている。
摂取量に限りがあり平等もなく取り合うのはもちろん、
CNの目からしても無関係相手に分配の適用は無し。
ならば、摂取する道理や権利をもつのは何なのか?
答えはシンプルかつディフィニットに述べても、
あらゆる実行力と存在を強硬に保てられる塊を成しえる
最高峰たるトウキョウが支配管理するべきなのだ。
ここだけは決して変えられない、こんなに大きな組織など
解体できる可能性があるなら僕の方こそ教えを乞いたい程だ。
個室に戻ると、入口の郵便受けに封筒が入れられていた。
たまに嫌がらせの手紙を入れられる時もあるが、違うようだ。
何事かと思い、にゅうっと手に取って見ると
それはNoからのチーム加入依頼書だった。
上層部への正式な誘いの知らせだったのだ。
決定的瞬間、上へ上り詰めるチャンスが到来する。
流石の僕でもこの現実の瞬間はあらゆる想定の外を巡り会い、
感動という脳内物質の大量分泌を避けられないようだ。
思わずトイレの中へ駆け寄って入る、もう我慢ができない。
僕だけが放つ独特の擬声を口から発してしまった。
「うちゅちゅちゅちゅちゅちゅうぅぅぅ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
番外編パート2を書きました。
ヒデキを罠にハメた張本人は味方モブAでした。
ここでは便宜上、αと名乗っておく事にする。
中層といっても、実働部隊の方ではないシステム、エンジニアの方に
従事する者。上層部直属にある軍備計画局の1人で、
兵器、兵装の製造企画を担当する部である。
しかも、その筆頭といわれるトーマスチームの一員だ。
僕はエリートクラスのそこに所属している。
この文章はこれといった端末で書いていない。
全ては僕の脳内からで、記憶に留めているのみ。
誰かが知りたいとは言わないものの、まとまりとして一応語ろうと思う。
理由はあるイベントからなんとなく思っただけ。
仕事の合間でふと感じた事をつらづらと浮かべたくなったから。
頭脳労働する職場は基本、待遇が良いから不満はない。
ただ、ハッキリいって今の地位には満足していない。
与えられた制作をどれだけこなしても上層のNo達が監査、
そして最終決定権はNo1の総司令官が下す。
縦長に構成された組織がトウキョウの現状でもある。
エリートとはいうものの、陣頭指揮までは任されないので
現時点から上に這い上がるのは中々難しい。
常にモジュールの上に僕達は規格を企画し続けて凌いでいるから、
常人なら目まぐるしい程の数字と記号の中で生きていた。
そんな主任達の会議で新たな兵器、Patriot109の製造を
行う決定がだされた。名称が長いので109とする。
トーマス主任もその1人だが、兵器開発にあまり気が進んでいない様で
部下の自分達に頼らざるをえない様子であった。
彼は確かに温厚な部分が大きすぎて、強行さに欠けているところもある。
攻撃的な構想はやむをえず、手に負えない上からの風の吹き回しを
僕達に向けてきたのだろう。
内容はモジュール基板の良案をだせと言うのだ。
これは火薬量や弾の飛距離など調整する部分で、
上層から攻略上で良い案を出すよう迫られていた。
組織を防御する重要事項を部下に任せるのも心外だが。
しかし、僕的にはこの手の話は嫌いではなく機会の1つと捉える。
せめて、この課題で良い成果を上げたいものだ。
翌日、トーマスラボに試作品である109が運ばれてきた。
さっそくメンバー達もそろって内部を拝見する。
僕にとって見る限り、第一印象は不便だなと感じた。
着眼点はモジュールのケースの方。
ボルトキャリアー内部枠に兵器性能向上で仕込まれている部分。
モジュラーどうしも製造時に溶接されているので、
安易には自由に組み込めない構造になっていた。
この銃はバースト系統で設計されており、
ディサルトの様に短時間での多数掃射でばらまく弾道にはできない。
しかし、僕はこの仕様に美しさを見出した。
ヘッドショットなどの的確さが問われる定点攻撃が
立体的に狭いトウキョウの仕組みも考えられているので、
数撃ちゃ当たるなんていう下品なものは好ましくなく、
精密感にこだわる僕にとっては実に素晴らしい性能だ。
しかも、最近投入されたAUROの電離加工による速やかな
伝導技術もあるので、モジュラーの自由度を高めるべく
“取り外し可能なモジュラー”の改良を提案してみた。
今まで溶接されていたのは勝手に分解されて盗用を防ぐためらしいが、
僕にとっては1つ1つID登録を施すべきだと勧める。
メンバー達も効率的だと大いに賛同してくれた。
気取られないよう、顔を上げて下目づかいでメンバー達を観る。
この瞬間は実に気持ちが良い。
だが、僕の高案にも劣らぬ功績をだした者が1人いた。
ヒデキだ。
事もあろうか、僕の作った構造の軽量化をさらに叩き出してきた。
モジュールを全て縦横等しく装着できるコンパクトさ。
同僚のあいつが独自に構想した物も繊細複雑に完成されていて、
主任からも注目を浴びていた。
ID登録案も踏み台する様に正方形に収まる分配法則系。
僕のきめ細やかで鮮やかな案に泥を塗るかの様に大きい面で、
差し置いたかの如く自慢げに語っていた。
あいつは個人的、最も警戒すべき男だ。
AUROの海水浸透の発案などの実績も上げ始めている。
このまま出し抜かれるわけにはいかない。
なんとかして蹴落とす算段を立てたいが、PDもいるせいか
意外にも隙が少なく躊躇する不満で募る日々が続いていた。
どうしようかと悩んでいた時、中層階の情報屋に集う
裏情報の会を開くという情報を交通局の人から耳にした。
何の仕組みか、PD監視を悠々とくぐり抜けて秘匿情報を羅列。
リフレッシュ広場で食事していた時にたまたま声をかけられて
そして、同僚達の個人情報を餌に、会の参加を許された。
集まったのはわずか数人、とある1人に目を向けると
なんと、そこには上層階の関係者がいたのだ。
Noの称号を持つ者の1人と身近で接触する事ができた。
彼の理想はトウキョウCNによる他CNとの併合という
目標を掲げているのだという。詳しく聞く限りでは賛同も多く、
ここを中心とした支配階級こそ併合にふさわしいのは同感なので、
僕もその話に乗る事にした。
しばらくして、変わらぬ日常を過ごしていく。
ある日、上層部の1人がトーマスラボにやって来て、
ヒデキは上層階に呼ばれていった。あの海水浸透の件だ。
これから本格的に採用されるから質問されに行くのだろう。
どうせ、帰りに上での自慢話をするのだろうと思いきや、
そんなあいつが僕に妙な暗号文で相談に持ちかけてきたのだ。
なんと、内容はNo3の組織の参入についてだった。
それこそ絶好の機会、僕はこの瞬間すら見逃さない。
ここで嫉妬するだけではただの素人なのは言うまでもない。
今、目にしているメールという情報技術も出世の手段として、
綿密な素材として排除を確実に移すのが出世への秘訣だ。
僕のやるべき術は安易で、さり気なく誘導尋問しながら聞くだけ。
上層階の計画について少しでも機密事項を露呈させるだけだった。
何故ならば、あいつはすでに情報漏洩を行っているからだ。
内容が貴重ならば重罪となり、下へ落とされるだろう。
案の定、あいつはのうのうと話してくれた。
これからどうなるのか知りもせずに自ら登りロープを切り始める。
後日、かつての集会で出会ったNoの人に再接触する。
ヒデキの個人情報を彼に伝えた。もちろん、PDの監視に
抵触する内容ではないただの公表の上での情報のみだ。
一部を聞いた彼は何か閃いたのか、僕に大変感謝してくれた。
Noに御目付けされるのは光栄、かつ昇進の功にもなる。
数日後、あいつは捕まり投獄された。
俗にいう大返しだ。清々しい、我ながら実に素晴らしい策だ。
このドーパミンが溢れる感覚がやめられない。
邪魔者を落とすこの感じもまた、整理という生理的欲求の1つで
脳内物質をスルスルと発する感覚が止まらないのがたまらない。
同僚を密告、僕はそれだけでうまくいったのだ。
情報、印象操作で事の成り行きが決まるのがこの世界。
今更ながらトウキョウという場所は恐ろしい所だと再認識する。
とはいえ、頭脳の良し悪しで立場が直決するこのCNゆえに
口から思わずプププと吹き出しそうになる。
仕方ない、物心が付いた時からそうみえていたわけだから。
僕にとってこの世界は複数に連なるマス。
建造物の整理された区画の様な枠しか感じない。
ミクロで無数のマスを自分の理想型に仕立てて提供する。
あくまでも、押し付けがましい傲慢さを気取られない様、
角をうまく削りとって綺麗に工夫する表現をしている。
中心に自らの自我をくるめて建前を演じているだけだ。
そんな日からいつもの日常が続く内、ラボリの要請がくる。
また、他地方からの防衛ラボリがきた。
場所は世田山エリアの外周とのことだ。
最近は壁伝いに敵影反応が確認される報告が相次いでいた。
配下のサイタマとカナガワ兵を警護に回し、哨戒する。
僕達は出動時に必ずライオットギアに搭乗するから、安全性が高い。
セレーネが何かを気にかけている様子があったが、
心配させぬよう優しく現状を示してあげた。
彼女の変質的なまでにライオットギアへのこだわりは素晴らしく、
顔も美しいので僕も気に入っている。
キューブセクションに隠されたという赤い機体も気になるようで、
今は忙しいから協力する時間はないものの、いずれは手伝うつもり。
僕的にはどうでもいいが、こちらの側に加えたい。
ここでロストさせないためにも必ず成功させてみせよう。
現地入りして任務開始した直後、すぐに敵影が現れて交戦した。
地形の特徴を瞬時に把握、割と開けたエリアでの対処。
だが、廃墟も何軒かある。そこに潜伏しているのは明白、
前線が対応している間に、配下達に109のモジュールを
入れ替えさせる手にでた。
速射を低めて遠距離攻撃に長けたチップ、窓際狙撃に
エイムを高めるための集弾率向上チップも組み込む。
連射は射出力向上のために犠牲になるものの、
遠くまで届く仕様にするのが地形の性質上相応しい。
もちろん撃っているのは僕ではなく、2CNの彼ら。
配下の彼らは僕のための盾、頭脳を支える頭蓋だ。
結果、うまくいった。敵の弾道はまばらすぎて届かず、
スナイパーを先に抑えていたのが好機となった。
距離感はマッチできてこちらの方が優れていたからだ。
廃墟をクリアした後は開けたエリアがある。
どこかへ逃げ出したと思いきや、固まる様にやって来た。
躍起になっていた残党が一斉に畳みかけてきたのだろう。
だが、それもこちらの思うツボなのだ。
複数の塊を散らすに相応しいのは爆破属性。
トウキョウCNで最も攻撃力と範囲が高い代物を装填。
そう、GARだ。
爆発系は個人的に好みのタイプではないが、今回は別。
全て109で対応できるなど、単純な思考をもっていない。
扱いに手をこまねく武器で有名だが、この対応も済んでいた。
マガジンのコンパクト化、火薬の最大値の調整、そして欠点の
装填速度を高めたチップを組み込んでいたのは言うまでもない。
事前に改良しておいたモジュラーで対応しようとしたのだ。
その結果。
ドゴオオオオオオオオン
「敵兵、殲滅できました!」
「うむ、ご苦労であった」
という少々わざとらしい効果音と言葉を表示してみた。
僕でもたまにはスカッとした演出くらいする。
銃とは争いを解決するに至って非常に上品な存在。
近接で醜く腕を振り合うなど見苦しい手法を用いたくない。
判断力を問われる知能を活かし、米粒程の遠距離から決まるので
敵兵がどうなったのか一々言うまでもない。
僕自身は機体に乗り込んで指示をだしただけで事が進み、
脳内の企画が華麗に展開されてゆく。
まるでパズルを解いていく様な感覚。
口元がだらしなく曲がって歪みそうになるが、
示しが悪いので現場では耐える。
配下の彼らを下目で見つつ、内心満々の感で帰還した。
口に資源を摂り込み、活動を維持するために命を保つ。
生きるというのは勝手でこの世界では珠罪として扱われている。
摂取量に限りがあり平等もなく取り合うのはもちろん、
CNの目からしても無関係相手に分配の適用は無し。
ならば、摂取する道理や権利をもつのは何なのか?
答えはシンプルかつディフィニットに述べても、
あらゆる実行力と存在を強硬に保てられる塊を成しえる
最高峰たるトウキョウが支配管理するべきなのだ。
ここだけは決して変えられない、こんなに大きな組織など
解体できる可能性があるなら僕の方こそ教えを乞いたい程だ。
個室に戻ると、入口の郵便受けに封筒が入れられていた。
たまに嫌がらせの手紙を入れられる時もあるが、違うようだ。
何事かと思い、にゅうっと手に取って見ると
それはNoからのチーム加入依頼書だった。
上層部への正式な誘いの知らせだったのだ。
決定的瞬間、上へ上り詰めるチャンスが到来する。
流石の僕でもこの現実の瞬間はあらゆる想定の外を巡り会い、
感動という脳内物質の大量分泌を避けられないようだ。
思わずトイレの中へ駆け寄って入る、もう我慢ができない。
僕だけが放つ独特の擬声を口から発してしまった。
「うちゅちゅちゅちゅちゅちゅうぅぅぅ」
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番外編パート2を書きました。
ヒデキを罠にハメた張本人は味方モブAでした。
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