Condense Nation

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2章 関西統一編

      哺乳類の安息2

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「九州地方へようこそおおおお!」
「こちらこそよろしくお願いします!」
「我々も今日を待ち望んでおりました、共に歩んでゆきましょう」
「同盟において禍根かこんが晴れるのを祈ります」

 エヒメ、コウチ、トクシマ司令官が挨拶にきて両陣の代表者が握手をする。
大陸がわずか31kmしかない距離の中で戦い合ってきた彼らは
警戒心もなさそうに直々に顔を見せて応接。
気象が暑く、熱する地を生きて来た者どうしが手を取り合い。
今日から、九州と四国は同盟を組むのだ。



九州全CN 四国全CN
         同盟



「天主殻より、九州と四国の統一を認可され、
 同盟という輝かしく記念すべき今日この日を光栄に思い、
 両国の繁栄を共に歩んでいく和の道を――」
「「もっと、省きなさい!」」
「分かっとるわ!」
「・・・・・・」

イイダ嫁が小声で催促する。何とも言えないその雰囲気は
ただの漫才としてすぐに解消されて、式は終わった。
九州連合と四国連合は共に接して歩み寄り、
主な登場人物達のお約束的ファーストコンタクトで
お互いコミュニケーションを取り始める。

「ヤッホー、あたしはスイレン。60歳の工作兵よ、よろしくねー!」
「ろ、ろくじゅっさい!?」
「そんな年齢に見えねーぞ!?」
「まあ、理由はカクカクシカジカでな。
 水の国では特殊なもんで、あまり変な目で見ないでやってくれ」
「そ、そうなのか・・・」
「な、なんか四国にもとんでもない人がいるんだな」
「私達も人の事いえたもんじゃないけどね・・・犬だけど。世界は広いわ」

俗に言う珍しいモノをテーマとした話題で交流。
オキナワ兵も同じく参加、レア度が高いといえるような
世界の変わり者に集まってくる。

「こいつはすげえや、他の世界ってこんなのがいんのか!
 面白ぇ奴は多いほど楽しくなるってモンだ!」
「体質ならこっちもそれなりの人がいたけど。
 ウチのCNにも、ひっじょおお~に変わり者が1人いたんだけどね・・・」
「ほう、どんな奴が」
「だけど、そいつはどこかへ飛び出してしまったんだ。
 この門出を一緒に祝いたかったけどな」
「そうなの?」

セリオ、メグ、ヒサシは少し眉を下げつつ語る。
あれからタツキの連絡は来ない。
四国民にとって、九州にも事情があるだろうと空気をかもし出す。
同盟直後の見せ合いっこでもし始めるのかと思うも叶わず。
そんなスイレンも辺りを見回してカナの姿を探していた。

「タカさん、カナは来ていなかった?」
「いや、見てないな。一緒に来る予定だったのか?」
「そう・・・」
「?」

カナは四国に残っているのか。ビーバーのコノエは自衛で来ないらしい。
カナについては曖昧あいまいな表現で返事しただけで
今何をしてるのかよく分からなかった。










エヒメCN拠点 研究室

ガシャン バラバラ ドッチャアアアン

「どうせ、あたしなんて才能の欠片もありゃしないのよ!」

カナは錯乱していた。
手当たり次第に物を投げつけ、大きく叫び声をあげている。

「パパもおじいちゃんも何かしら1つは成果をあげてる。
 なのに、どうしてあたしはうまくいかないの・・・?」

日々の研究がうまくいっていなかった。
いや、元からはうまくいっていなかった。
今まで彼女が皆に見せてきたものは全て先人達の基礎技術。
さわりのみを併用して自分だけの技術を生み出そうとしたが、
うまくいかない。

ドサッ

床に堂々と寝そべってジタバタする。
自棄やけになり、もうどうにでもなれという仕草をする。

「まるてんさいとそう・・・簡単に捻じ曲がる自由結合。
 ははは、まるであたしの人生ね」

視線の先には、テロメアの実験ケースがあった。
かつてスイレンからくすねてきた髪の毛や爪の一部。
実は水柱事件の前から彼女の素性を疑っていた。
母親がロストしたのに墓や遺体も記録がなく、本人も地下水路で
行方不明になっていたにもかかわらず娘だけがひょっこりと現れて、
実験結果を出す前にアッサリと正体が判明する。
コツコツ研究しても、たいてい失敗か裏目にでるのがほとんど。

「「なんで・・・なんであの女は・・・あんな?」」

チリチリ

彼女の毛をバーナーで焼く。
カナの中にはスイレンの姿が忌まわしく映ってくる。
正体が判明した以降、あの女に良い印象が見つからない。
年をとっても若い姿を保ち続ける彼女をうとましく思っていた。
ただのひがみ、嫉妬しっと、そんな事は分かっている。
活発で誰からも好かれるスイレンとは対称的に、
自室で研究ばかりしている自分。
しかも、知識陰ちしきかげを重点とする肝心な部分がうまくいかず、
跳ねっ返りで余計みじめにジワジワと感じてくる。

 (もうなんにもしたくない・・・)

ペラッ

「?」

1枚の書類が落ちてきた。
それは中つ国CNから調べてきた反重力技術に関するもので、
偵察兵からの報告書だったのだ。
指で摘まみ上げて無気力状態で観る。
ぼんやりとした思考の中にある新たな可能性。
彼女はうつろな目で広告的なマス目を眺め続けた。
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