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4章 ブレイントラスト編
第18話 母体変換
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1つ、また1つと成すべき法が整いつつある。
Mは記憶の限界など一切見せずに演算をこなし吸収し続けていき、
数億にも及ぶ法律を構築していった。
少しずつ政策を練りながらも、下界との接触も同時に平行しつつ
アプローチをこなさなくてはならない。
ようやくここまで歩をたどれたが、出先でつまづいては元もなく
より慎重に制御を怠らずにしようと念じる。
「政府から連絡が来ない、やはりMから直に通達させるしかない」
コウシ所長が下界のアプローチの鈍さにしびれをきらせている。
自衛隊の設備も気掛かりとなって直に視察したいところでもあった。
しかし、直に地上へ降り立つのは終わりを意味する。
人の嘘など四方八方どこにも生み出すからだ。
「今は易々と地上には降りられん、取り押さえられるのが落ちだ」
「CN法による情報閉鎖も完全ではありません。
穴をかいくぐり資源、情報流出を起こしている者達も見受けられます」
「ニュースでもブレイントラストの事を大々的に
取り上げてるとこないです、あの査問会だからか。
俺達の顔見られるのもマズイっすね。
出る時、レイチェル博士のワームホールで行きますか?」
「アンタ、いつの間にそんなビークル造ってたの?」
「ええ、所長の協力で製造しました」
「そういう事だ、また手を打たれるのも酷だ。
例の計画が終えてから、我々も行くとしよう」
「はい」
1つの企ても、すでに完成に持ち込んでいる。
残すところはMのシステムメンテナンスくらいだ。
ハッキングやバグの発生がないか、チェックしなければならない。
「Mに教え忘れた事がないか、再確認してくれ」
「了解しました」
一時休憩時間が訪れても自分は仕事を続けていく。
主任たる手腕は細かな部分にも怠るわけにはいかないのだ。
それから作業を進めて22:00を過ぎる。
そんなMは広大な宇宙の画像を観ている。
地球の外側の世界について興味をもったようで、
どういった世界なのか自分に聞いてきた。
「「どうして宇宙があるの?」」
「詳細は不明だが、広大かつ対称的なもので
コウシ所長の話では+-で構成された空間でできている世界らしい」
「「どうして+-があるの?」」
「それについても不明だな。生物でいう雄と雌、
男女の様な関係で構成された世界であろう」
「「宇宙に生殖器があるなんてデータにはないよ」」
「それは例えの1つだ。男女によって繁殖する様に
宇宙もガスやチリが集まって形となるのだ」
「「でもニンゲンは一気に人口が減少したり増加したりするね。
宇宙とは原理が違うんじゃないの?」」
「人の寿命は宇宙より遥かに短い。
人類の繁殖はすぐには増加しないだろう」
「「君達は子供がいないよ、それでどうやって効率よく繁殖するの?」」
(はあ)
返答に困った、
そんな事が未経験な自分でこんな台詞を言いながら虫唾がはしる。
なんとかMに適当な返しをしてはぐらかそうか。
コウシがやってきて例えを挙げた。
「素数ゼミという生物を知っているか?」
「「素数ゼミ・・・列島内に分布していない昆虫類」」
「決まった年月しか生まれてこない生物の話だ。
17年ゼミが最も有名か、理由は特殊な周期で誕生する性質をもち、
同様に我々はその中の素数となるべき存在だ。
同等にわり切れる数に含まれてはならない」
「「同等にわり切れる数と繁殖の関係は?」」
「同類というものは絶対数が多いのが特徴だ。
そうすると中にある個性というものが薄れていく。
下界に住む者達がそれだ。だから、そのセミの様な少ない絶対数が
生存してゆくためには“異なる形質転換”も必要になる。
そうだな・・・人工体アンドロイドという個性で例えると、
2分の1、3分の1と限られた条件の内で新たな固形質も生成する」
「「固形の影響とは?」」
「君と同じ形をした生物、存在がいないのは理解済みだろう?
つまり、生物でありながら繁殖行為以外で形を製造してゆくケースもある。
君も宇宙からやってきたモノ、+-の相互作用のみで何かが繁栄された。
如何に“存在できる空間”を成り立たせられるか。
少々強引だが、こう論じれば良いかな、ハハハ」
「「やっぱり宇宙と人類は仕組みが異なるのか。
生物って、特別な条件で繁殖するケースがあるんだね。
データに入れておこう」」
かなり遠回しな説明だが、この子は理解していた。
宇宙飛来設定とは飛躍しているが、ダニエルの事を伏せている今、
特別な存在で立場を置かせるのが最善なのだろう。
「「弁護ありがとうございます・・・」」
「私もここまで画一的説明を口にできるとは思わなんだ。
人間の世界ほど繁殖が厳しいものはないからな、気にしない事だ」
コウシ所長の助言に助けられる。
宇宙と生物の起源が明白ではない点を良い事に逆手にとられる手法。
難しくも妙な例題でMを納得させた話に感心した。
(生物がそこに在るべき“空間”か・・・)
自室
レオと同じベッドで寝ながら思いにふける。
寝具という範囲内で共にするのも在るべき形だろう。
空間といえば、所長も似たような言葉を話していた。
あの時の言葉が頭の中を横切ったのだ。
「空間も人も、元は同じつくりかもしれぬな」
おかげで、頭の中で自分の内部に存在していた異物が判明した。
クロノシンメトリーは生物的欲求と合理性が衝突し合っていた
葛藤により生じていたものだったのだ。
常に狭い檻に入れられていたゆえ、空間認知力が人並み以下に
なってしまった代償だ。頭脳は動いても肉体が止まる。
そんな状態が極端にまで続くと三半規管が狂いだす。
針が動く、空間を巡って回る。円環は個を生み出し、
形を生み出し、そして存在を成す。
空を見上げる、ひたすら広く何もないような世界が
実は1つの塊が存在しているからだろう。
ヒトはそれすら喰い合って生きている。
(私は・・・私は結局人の性から逃れられぬのか)
翌日 クロノス自室
そして日はまた繰り返し、静かな防音設備の中から目覚めが訪れる。
ただ、肝心な相手がいつまでも抵抗を続けているので、
おいそれとMにアナウンスさせるタイミングも決めかねている。
次に罪と法の関連性をきちんとこなせていない件もどうにかする
必要もあるので、まずはそこをクリアする方が先決。
ベッドから起き上がった途端、下部に衝撃が走った。
ギシッ
「グウッ!?」
太股を支えているはずの部分が揺らいで力を入れて返って痛む。
骨軟化症が完治しきれずに再び再発してしまった。
治療薬の生成方法などここにはなく、ブレイントラストの医師も
すでにここにはいないので治す事も無理だろう。
いずれ歩けなくなる、最低限に車椅子や義足を造るしかなくなるが
あまり手をこまねいているわけにもいかず。
一度メンバー達に相談しようとした。
指令室
「脚の症状が再発した?」
「ええ、完治していたはずの病が・・・また」
コウシ所長の応答で彼らの曇る表情に事情を明かしにくい。
思いもよらぬ障害発生で計画推進がまた曲がりつつある。
私は今日ばかり座りながら指揮するのを許可してもらう。
「ふむ、歩けなくなるのなら義足などいくらでも用意できるが」
「申し訳ありません、私も完治できたとみくびってしまったようで
自身への気遣いまで回せていなかったので」
歩かなければ痛みはないので別の施しで大した重症の心配がない。
とりあえず急用に義足を用意してもらい、最低限の歩行なら補えた。
当然、人だから怪我なり病気なりも起こるだろう。
たった5人だけの世界の中でサポートし合う行動もささやかなものだ。
そこへアメリアの一言。
「ねえ、あの件について考えているの?」
「・・・・・・」
セレファイス内において静かなる課題はここで挙げられていた。
そう、もしメンバー達が少しずつロストしていたら先の管理をどうするか?
コウシ所長も高齢で後数十年生きられるかどうかの心配もある。
彼女も通常と異なる体質で後数年生きられるかどうかの瀬戸際、
私の持病もそうだが、彼らの身体もこのままずっとここで生きられる
保障が管理体制の約束すら準備してこなかったのでないはずだ。
寿命はおろか、途中で重い病気にかかってしまう事もありえて
1人で欠けようものなら助力もすぐに底を尽いてしまうだろう。
まったく無視してきたわけでもない、解決策はあるにはあったのだが。
私はあの件についての解決方法を迫られている。
(寿命、怪我、病気、いずれも克服できる方法はある・・・あれを)
CN法を完璧に運営していくために欠かせない方針。
寿命、言わば内部より老朽化を決して起こさないようにする技術。
人の体をもつそんな自分自身の罪を浄化する政策、それは。
「上位者変換プロジェクトを・・・計画します」
上位者変換、人間をアンドロイドに換える計画。
かのアンドロイドバイオニクスを我々の身体に適用する。
子どもを生み出せず、繁栄の叶わないここで何年も管理状態を
維持し続けるために生物すら代替を施行するのみ。
それに人体から脱する事で地上で隠密に活動するためである。
しかも、能力は肉体よりもはるかに向上、レントゲン検査など
外側の精査も誤魔化せられるのだ。これについてはもう説明も不要。
仕様はすでに理解しているので細かく述べる事もない。
メンバー達もすでに予想していた様に真顔で感想を発言。
「「そうくるか・・・検討はついていたが、我々も」」
「「プヒーッ、あたしもここで最初からやりたいって言ってたじゃない!」」
「「人間をやめちまうか・・・ああ、覚悟くらいしていたけどな」」
「「下界をあんな風にしてしまったので・・・もう、私達は
始めから人である資格を失っていたかもしれません」」
皆も内心不安に思っていた件でアメリア以外はっきりと口にしなかった。
CN法が整ってからも下界の者達に気取られぬ様に接触し、
直接指示をせずに外回りから掌握する。
自由な立ち回りができる術を前もって計画していたのである。
人の体をもつ限り、生罪からは決して逃れられない。
“罪を含む者が物に成れ”ば、その瞬間から罪は無くなるのだ。
興奮気味と交じり、笑顔も浮かんでくる。
「ももももうすぐ理想の体が・・・早く変換したいぃぃ。
はふーっ、はふーっ、おにんぎょおさんみたいになりたひよォ」
「生きてなお、身を欲するか・・・実に業が深い。
必然だろう、脳は遺伝すら完全に伝えきれないのだから」
レオを始めとして成功体験はすでに実現できている。
私も彼らにとってずっとここに居させるのも苦痛のはず。
直に地上へ視察に行くのも大事であり、無機物が有機物の集いに
示しを与えてやらなければならない。
「人間の生きる罪、珠罪の膨大な枷と統制者の軸すら盤石なものに。
資源消費による闘争消化を円滑化させられます」
これも白金の軸の一例か、難題を解決する事項に当てはめてゆく。
そして、CNという檻の中で動物的な行動をさせて、
あるべき人の透明化により全ての国事行為が可能となる。
Mも不思議そうな様子で内容をうかがう。
「「ヒト科がアモルファスシリコンへ代替、ココロ、セイシン、
AUROへニューロン蓄積体をトランスプラント。
有機物が無機物へ変化、死の定義を回避するため」」
「そうだ、一定の界隈に複数の種族がいるのは話しただろう?
過去に絶滅に追いやられた生物の呵責は誰も償わずに事なかれに終えた。
私の脚だけの問題ではない、壊死の代替を罪と定義できない存在を
生み出す事で一律なる世界へ変えてゆくつもりだ」
先に語った存在密度の問題は罪の発生を人から機体に変える事で、
微量かつ少量ながらも消化させてゆこうとした。
自然発生は罪に問われず、人の行為のみそうみなされるので
ヒト科という存在から界隈への成り立ちを機械化させて立ち退かせ、
無実なる無機質の創造より有から無に変更。
完全制御、完全管理となる個の場所が整うのだ。
「これで、一通り腰が着くな。本当に難題ばかり続いてきた。
後は下界への通達のみ融通を施すのみで計画が落着する」
「あらゆる懸念事項を解消する事で計画の全てが整います」
「決まりましたね、主任」
「ああ、先の問題はこれにて一応に決定。
今一度、自我と配置の制御はアンドロイドバイオニクスにて
不足分や頭脳明晰者のロストを抑えにゆく。
パーソナルスペース、個の空間の成立をここに宣言する!」
パチパチパチパチ
言葉を掲げてメンバーからの拍手喝采を浴びる。
そう、病気などあらゆる技術で超越してきた私達にとって
何も大事に扱う問題もない。人身事故すらここでは障害に足りえない
話で無機物の壮大かつ偉大な枠に覆われてきたはずだ。
もう人間性をも語る必要はいずれ薄まりつつあるのだから。
数日後 生物型製造工房
そして人生の1つの分かれ道がやってきた。
私達と等しい素体は5体用意されてメディカルポッドを改良した
AURO移植装置を前に皆で中に入ろうとした。
最終調整を確認し、異常がないかきちんと調べる。
アメリアとコウシのOKサインで、実行に移そうとした。
だが、私は変換ポッドに入ろうとしなかった。
気付いた所長は問いだす。
「・・・・・・」
「どうしたのかね?」
「私は・・・この体のままでいい」
「!?」
ポッドに入るのを拒んだ。
自分はアンドロイドバイオニクスを用いない理由を語った。
「「私は罪を犯した・・・そんな自分が上位者になる資格などない」」
「しかし、あれは不可抗力だろう?
我々は後もなく新世界開拓という手段に講じたのだぞ?」
「主任は過去に引っ張られ過ぎですよ。
俺達は特別なんです、大統領勅令と同じで世界管理のために
人員排除の1つや2つくらいどうって事ないでしょう?
罪の意識はドロイドになれば消え失せて――」
「ロストはロストです。
ダニエル君を手にかけてしまった事も・・・。
自分はどうしても、それをぬぐい切れません」
「・・・・・・」
4人が自分の顔を見る。
別に軽蔑でなく心配している顔だ。自分だけ逃げようとするのかなど、
そんな貶めを迫る者などいない。いざ、世界を変えよう
という前向きな雰囲気とは真逆な行為に申し訳なくなる。
その場合は自分をここに留まらせようと所長が提案した。
「気持ちは分かった。
ならば、君はセレファイスに残っていてくれ。
我々が地上の様子を伺いにいく。
レオも寂しがるからそうしてほしいと思うだろう」
「・・・はい」
こうして4人はポッドに入り、目を閉じてドロイド変換する。
体からまるごと何もかも抜けていく感覚がする。
移植されるのはAUROの情報質が精神を伝って流し込み、
ドロイド内部のCPUに保存、次の体へと移動する。
有機物から無機物へ変換されていく精神以外は全て、
新品とも言える代替へと移り変わるのだ。
シュウウウウウウウウウウウ
ポッドから4人が出てきた。外見はほとんど前と
変化していない。だが、AURO粒子によるエネルギー源で
駆動している正真正銘の高性能アンドロイド。
人体を凌駕する元人間の意識を搭載した存在なのだ。
4人の中でアイザックが真っ先に第一声をだした。
「あんま元の姿と変わらないな」
「ハハハ、最初の言葉がそれか。
私的には内蔵が全て若返った感覚が凄まじいぞ」
「やっぱり、この体でも子どもは造れないんですね」
「生殖機能まで搭載できる技術力を持てないな。
それは神の領域にまで及ぶ術と言いたいところだが、
先に辿り着いたのは無機物の方だったな」
「ああ、ああああ・・・これがあたし。長年望んできた真の美しさ。
アアアアアアアアアアアアアッハッハッハッハッハァァァ!」
叫び声が響き渡る。
アメリアは歓喜の声をあげた。
顔面のシワが一部もなくなりすっかりと消え、
永遠の美貌を手に入れたのだ。
「実験成功おめでとうございます。
これで、あなた方は上位者に成れました」
「私達の肉体はもう死んでしまった」
「墓でも造ろうかー?」
「精神がここに存在しているはずの我々の墓か・・・。
フフ、なんとも奇妙な感覚だ」
コウシ所長は自らの頭を撫でて感触を確かめてみる。
脳内の思考も驚くほどにまで冴えている。
彼らは正確にもう人ではなくなった。
だが、正確性はヒトのそれを遥かに超えた存在へと変わりゆく。
「アンドロイドは死の概念すら覆してしまったわねぇ。
永遠、まさに永劫。あたし達はそれを手に入れたの。
生物失格のレッテルを張られる言われもないわ」
「所長は外見そのままで良いんですかい?
イケメンな見た目に変えても良かったんじゃ?」
「私は若造扱いされるのは嫌いでね、外見はこのままで良い」
「そういうモンですか」
「ふふっ、良しなにです」
メンバー達にとっては新たなる出発点でもある。
アイザックは内心、生体情報コピーペーストした事で
色調補正するのを忘れて悔やむ。
(ドロイドになっても、黄色は見えやしねえ。
後で直せねえなんて聞いてねえわ・・・まったく)
23:00 自室
メンバー達はすでに退出して自室に戻っている。
もう寝る時間だが、何気なく窓から外を眺めてみる。
下層階は暗くて見えず、火の粉も見えなくなっていた。
ライオットギアによる制圧鎮静もほぼ上手くいったようだ。
カリカリカリ
CPUの音のみが部屋に響いて、Mは何かを計算している。
あれだけの知識を整理するのも時間がかかるだろうが、
そっと声をかけてみた。
「M、少し話したい事がある」
「「まだ起きてる、就寝予定時間はもう過ぎているよ?」」
睡眠などという概念のない機械制御されているMが、
就寝を推奨するのも意外だが、そうさせた当の自分は
罪という点について一度聞いてみたかった。
機械的に罪という事象はどう思っているのか。
「私が今まで受けてきたの罪の観念をどう捉えている?」
「「クロノス、古宿エリア傷害事件検索・・・」」
「いや、精神的な事象だ。観念とは人の行いによる物事の思考。
起こした行動や結果によって生じた脳内の思想だ」
「「思想・・・定義が不明。
ならば、ライオットギアで制圧した行為の必要性は?」」
「・・・あれは天裁だ。強力たる自衛組織の制御と兵器鎮圧のために
やむをえず行った」
「「天裁・・・天の裁き。神という存在が下界の悪事に対する自然の報い。
超越者が下界の者達に下す裁き、
データベースではそう記載されている。
でも、神について詳細が教えられていない」」
(やはり、箇条書き言動か)
あくまでもデータベースから引き出される言い方のみで、
意思表示もみじんもない。仕方なく例え好きな話から辿るべくして
Mに自分の境遇を洗いざらい話した。
父から檻に入れられ教育を受けた事、
撮影されながら暴力を受けた事、
惨めに感じながらも、正直にMに語り伝える。
「「傷害罪、プライバシー侵害罪。
観念という曖昧な表現で言われても無理解、認証不可。
余にとっては罪を内包するという設定としている」」
「罪を内包する・・・か」
今更ながら蜂起を起こした事を振り返ってみる。
改めて見直せば、“自分達だけ上に逃げた”という解釈にもなる。
仕方がなかった。
自分の周りには有能な人材に恵まれているのだ。
それはそれで別に悪点はないが、自らの気は晴れない。
時々、自分だけ置き去りにされた気分にもなる。
しかし、どう鑑みても無意味なのは分かっていた。
思うまでもない、自分とてただの罪人だからだ。
仮に下界の者達があらゆる術を用いてここまで辿られた場合、
Mが説得されて自分が政策してきた事が全て覆されてしまったら
ブレイントラストの残した功績も無駄に終わる。
この子に上手に伝わらせるにはどうすべきか、
捉えどころのない罪の在り方をどうにか独自解釈させて
世界を維持してほしい。
「確かに私の言い回しは抽象的で解釈しにくい。
行為は目で見えるものの、意識や概念はみえない。
我々人類が常に置き去りにしてきたものだ」
「「・・・・・・」」
「もしも、もしもだ。ここセレファイス内部に侵攻されて来られたら
それが生じた時は包み込むように・・・いいな?」
「「・・・認証」」
Mは記憶の限界など一切見せずに演算をこなし吸収し続けていき、
数億にも及ぶ法律を構築していった。
少しずつ政策を練りながらも、下界との接触も同時に平行しつつ
アプローチをこなさなくてはならない。
ようやくここまで歩をたどれたが、出先でつまづいては元もなく
より慎重に制御を怠らずにしようと念じる。
「政府から連絡が来ない、やはりMから直に通達させるしかない」
コウシ所長が下界のアプローチの鈍さにしびれをきらせている。
自衛隊の設備も気掛かりとなって直に視察したいところでもあった。
しかし、直に地上へ降り立つのは終わりを意味する。
人の嘘など四方八方どこにも生み出すからだ。
「今は易々と地上には降りられん、取り押さえられるのが落ちだ」
「CN法による情報閉鎖も完全ではありません。
穴をかいくぐり資源、情報流出を起こしている者達も見受けられます」
「ニュースでもブレイントラストの事を大々的に
取り上げてるとこないです、あの査問会だからか。
俺達の顔見られるのもマズイっすね。
出る時、レイチェル博士のワームホールで行きますか?」
「アンタ、いつの間にそんなビークル造ってたの?」
「ええ、所長の協力で製造しました」
「そういう事だ、また手を打たれるのも酷だ。
例の計画が終えてから、我々も行くとしよう」
「はい」
1つの企ても、すでに完成に持ち込んでいる。
残すところはMのシステムメンテナンスくらいだ。
ハッキングやバグの発生がないか、チェックしなければならない。
「Mに教え忘れた事がないか、再確認してくれ」
「了解しました」
一時休憩時間が訪れても自分は仕事を続けていく。
主任たる手腕は細かな部分にも怠るわけにはいかないのだ。
それから作業を進めて22:00を過ぎる。
そんなMは広大な宇宙の画像を観ている。
地球の外側の世界について興味をもったようで、
どういった世界なのか自分に聞いてきた。
「「どうして宇宙があるの?」」
「詳細は不明だが、広大かつ対称的なもので
コウシ所長の話では+-で構成された空間でできている世界らしい」
「「どうして+-があるの?」」
「それについても不明だな。生物でいう雄と雌、
男女の様な関係で構成された世界であろう」
「「宇宙に生殖器があるなんてデータにはないよ」」
「それは例えの1つだ。男女によって繁殖する様に
宇宙もガスやチリが集まって形となるのだ」
「「でもニンゲンは一気に人口が減少したり増加したりするね。
宇宙とは原理が違うんじゃないの?」」
「人の寿命は宇宙より遥かに短い。
人類の繁殖はすぐには増加しないだろう」
「「君達は子供がいないよ、それでどうやって効率よく繁殖するの?」」
(はあ)
返答に困った、
そんな事が未経験な自分でこんな台詞を言いながら虫唾がはしる。
なんとかMに適当な返しをしてはぐらかそうか。
コウシがやってきて例えを挙げた。
「素数ゼミという生物を知っているか?」
「「素数ゼミ・・・列島内に分布していない昆虫類」」
「決まった年月しか生まれてこない生物の話だ。
17年ゼミが最も有名か、理由は特殊な周期で誕生する性質をもち、
同様に我々はその中の素数となるべき存在だ。
同等にわり切れる数に含まれてはならない」
「「同等にわり切れる数と繁殖の関係は?」」
「同類というものは絶対数が多いのが特徴だ。
そうすると中にある個性というものが薄れていく。
下界に住む者達がそれだ。だから、そのセミの様な少ない絶対数が
生存してゆくためには“異なる形質転換”も必要になる。
そうだな・・・人工体アンドロイドという個性で例えると、
2分の1、3分の1と限られた条件の内で新たな固形質も生成する」
「「固形の影響とは?」」
「君と同じ形をした生物、存在がいないのは理解済みだろう?
つまり、生物でありながら繁殖行為以外で形を製造してゆくケースもある。
君も宇宙からやってきたモノ、+-の相互作用のみで何かが繁栄された。
如何に“存在できる空間”を成り立たせられるか。
少々強引だが、こう論じれば良いかな、ハハハ」
「「やっぱり宇宙と人類は仕組みが異なるのか。
生物って、特別な条件で繁殖するケースがあるんだね。
データに入れておこう」」
かなり遠回しな説明だが、この子は理解していた。
宇宙飛来設定とは飛躍しているが、ダニエルの事を伏せている今、
特別な存在で立場を置かせるのが最善なのだろう。
「「弁護ありがとうございます・・・」」
「私もここまで画一的説明を口にできるとは思わなんだ。
人間の世界ほど繁殖が厳しいものはないからな、気にしない事だ」
コウシ所長の助言に助けられる。
宇宙と生物の起源が明白ではない点を良い事に逆手にとられる手法。
難しくも妙な例題でMを納得させた話に感心した。
(生物がそこに在るべき“空間”か・・・)
自室
レオと同じベッドで寝ながら思いにふける。
寝具という範囲内で共にするのも在るべき形だろう。
空間といえば、所長も似たような言葉を話していた。
あの時の言葉が頭の中を横切ったのだ。
「空間も人も、元は同じつくりかもしれぬな」
おかげで、頭の中で自分の内部に存在していた異物が判明した。
クロノシンメトリーは生物的欲求と合理性が衝突し合っていた
葛藤により生じていたものだったのだ。
常に狭い檻に入れられていたゆえ、空間認知力が人並み以下に
なってしまった代償だ。頭脳は動いても肉体が止まる。
そんな状態が極端にまで続くと三半規管が狂いだす。
針が動く、空間を巡って回る。円環は個を生み出し、
形を生み出し、そして存在を成す。
空を見上げる、ひたすら広く何もないような世界が
実は1つの塊が存在しているからだろう。
ヒトはそれすら喰い合って生きている。
(私は・・・私は結局人の性から逃れられぬのか)
翌日 クロノス自室
そして日はまた繰り返し、静かな防音設備の中から目覚めが訪れる。
ただ、肝心な相手がいつまでも抵抗を続けているので、
おいそれとMにアナウンスさせるタイミングも決めかねている。
次に罪と法の関連性をきちんとこなせていない件もどうにかする
必要もあるので、まずはそこをクリアする方が先決。
ベッドから起き上がった途端、下部に衝撃が走った。
ギシッ
「グウッ!?」
太股を支えているはずの部分が揺らいで力を入れて返って痛む。
骨軟化症が完治しきれずに再び再発してしまった。
治療薬の生成方法などここにはなく、ブレイントラストの医師も
すでにここにはいないので治す事も無理だろう。
いずれ歩けなくなる、最低限に車椅子や義足を造るしかなくなるが
あまり手をこまねいているわけにもいかず。
一度メンバー達に相談しようとした。
指令室
「脚の症状が再発した?」
「ええ、完治していたはずの病が・・・また」
コウシ所長の応答で彼らの曇る表情に事情を明かしにくい。
思いもよらぬ障害発生で計画推進がまた曲がりつつある。
私は今日ばかり座りながら指揮するのを許可してもらう。
「ふむ、歩けなくなるのなら義足などいくらでも用意できるが」
「申し訳ありません、私も完治できたとみくびってしまったようで
自身への気遣いまで回せていなかったので」
歩かなければ痛みはないので別の施しで大した重症の心配がない。
とりあえず急用に義足を用意してもらい、最低限の歩行なら補えた。
当然、人だから怪我なり病気なりも起こるだろう。
たった5人だけの世界の中でサポートし合う行動もささやかなものだ。
そこへアメリアの一言。
「ねえ、あの件について考えているの?」
「・・・・・・」
セレファイス内において静かなる課題はここで挙げられていた。
そう、もしメンバー達が少しずつロストしていたら先の管理をどうするか?
コウシ所長も高齢で後数十年生きられるかどうかの心配もある。
彼女も通常と異なる体質で後数年生きられるかどうかの瀬戸際、
私の持病もそうだが、彼らの身体もこのままずっとここで生きられる
保障が管理体制の約束すら準備してこなかったのでないはずだ。
寿命はおろか、途中で重い病気にかかってしまう事もありえて
1人で欠けようものなら助力もすぐに底を尽いてしまうだろう。
まったく無視してきたわけでもない、解決策はあるにはあったのだが。
私はあの件についての解決方法を迫られている。
(寿命、怪我、病気、いずれも克服できる方法はある・・・あれを)
CN法を完璧に運営していくために欠かせない方針。
寿命、言わば内部より老朽化を決して起こさないようにする技術。
人の体をもつそんな自分自身の罪を浄化する政策、それは。
「上位者変換プロジェクトを・・・計画します」
上位者変換、人間をアンドロイドに換える計画。
かのアンドロイドバイオニクスを我々の身体に適用する。
子どもを生み出せず、繁栄の叶わないここで何年も管理状態を
維持し続けるために生物すら代替を施行するのみ。
それに人体から脱する事で地上で隠密に活動するためである。
しかも、能力は肉体よりもはるかに向上、レントゲン検査など
外側の精査も誤魔化せられるのだ。これについてはもう説明も不要。
仕様はすでに理解しているので細かく述べる事もない。
メンバー達もすでに予想していた様に真顔で感想を発言。
「「そうくるか・・・検討はついていたが、我々も」」
「「プヒーッ、あたしもここで最初からやりたいって言ってたじゃない!」」
「「人間をやめちまうか・・・ああ、覚悟くらいしていたけどな」」
「「下界をあんな風にしてしまったので・・・もう、私達は
始めから人である資格を失っていたかもしれません」」
皆も内心不安に思っていた件でアメリア以外はっきりと口にしなかった。
CN法が整ってからも下界の者達に気取られぬ様に接触し、
直接指示をせずに外回りから掌握する。
自由な立ち回りができる術を前もって計画していたのである。
人の体をもつ限り、生罪からは決して逃れられない。
“罪を含む者が物に成れ”ば、その瞬間から罪は無くなるのだ。
興奮気味と交じり、笑顔も浮かんでくる。
「ももももうすぐ理想の体が・・・早く変換したいぃぃ。
はふーっ、はふーっ、おにんぎょおさんみたいになりたひよォ」
「生きてなお、身を欲するか・・・実に業が深い。
必然だろう、脳は遺伝すら完全に伝えきれないのだから」
レオを始めとして成功体験はすでに実現できている。
私も彼らにとってずっとここに居させるのも苦痛のはず。
直に地上へ視察に行くのも大事であり、無機物が有機物の集いに
示しを与えてやらなければならない。
「人間の生きる罪、珠罪の膨大な枷と統制者の軸すら盤石なものに。
資源消費による闘争消化を円滑化させられます」
これも白金の軸の一例か、難題を解決する事項に当てはめてゆく。
そして、CNという檻の中で動物的な行動をさせて、
あるべき人の透明化により全ての国事行為が可能となる。
Mも不思議そうな様子で内容をうかがう。
「「ヒト科がアモルファスシリコンへ代替、ココロ、セイシン、
AUROへニューロン蓄積体をトランスプラント。
有機物が無機物へ変化、死の定義を回避するため」」
「そうだ、一定の界隈に複数の種族がいるのは話しただろう?
過去に絶滅に追いやられた生物の呵責は誰も償わずに事なかれに終えた。
私の脚だけの問題ではない、壊死の代替を罪と定義できない存在を
生み出す事で一律なる世界へ変えてゆくつもりだ」
先に語った存在密度の問題は罪の発生を人から機体に変える事で、
微量かつ少量ながらも消化させてゆこうとした。
自然発生は罪に問われず、人の行為のみそうみなされるので
ヒト科という存在から界隈への成り立ちを機械化させて立ち退かせ、
無実なる無機質の創造より有から無に変更。
完全制御、完全管理となる個の場所が整うのだ。
「これで、一通り腰が着くな。本当に難題ばかり続いてきた。
後は下界への通達のみ融通を施すのみで計画が落着する」
「あらゆる懸念事項を解消する事で計画の全てが整います」
「決まりましたね、主任」
「ああ、先の問題はこれにて一応に決定。
今一度、自我と配置の制御はアンドロイドバイオニクスにて
不足分や頭脳明晰者のロストを抑えにゆく。
パーソナルスペース、個の空間の成立をここに宣言する!」
パチパチパチパチ
言葉を掲げてメンバーからの拍手喝采を浴びる。
そう、病気などあらゆる技術で超越してきた私達にとって
何も大事に扱う問題もない。人身事故すらここでは障害に足りえない
話で無機物の壮大かつ偉大な枠に覆われてきたはずだ。
もう人間性をも語る必要はいずれ薄まりつつあるのだから。
数日後 生物型製造工房
そして人生の1つの分かれ道がやってきた。
私達と等しい素体は5体用意されてメディカルポッドを改良した
AURO移植装置を前に皆で中に入ろうとした。
最終調整を確認し、異常がないかきちんと調べる。
アメリアとコウシのOKサインで、実行に移そうとした。
だが、私は変換ポッドに入ろうとしなかった。
気付いた所長は問いだす。
「・・・・・・」
「どうしたのかね?」
「私は・・・この体のままでいい」
「!?」
ポッドに入るのを拒んだ。
自分はアンドロイドバイオニクスを用いない理由を語った。
「「私は罪を犯した・・・そんな自分が上位者になる資格などない」」
「しかし、あれは不可抗力だろう?
我々は後もなく新世界開拓という手段に講じたのだぞ?」
「主任は過去に引っ張られ過ぎですよ。
俺達は特別なんです、大統領勅令と同じで世界管理のために
人員排除の1つや2つくらいどうって事ないでしょう?
罪の意識はドロイドになれば消え失せて――」
「ロストはロストです。
ダニエル君を手にかけてしまった事も・・・。
自分はどうしても、それをぬぐい切れません」
「・・・・・・」
4人が自分の顔を見る。
別に軽蔑でなく心配している顔だ。自分だけ逃げようとするのかなど、
そんな貶めを迫る者などいない。いざ、世界を変えよう
という前向きな雰囲気とは真逆な行為に申し訳なくなる。
その場合は自分をここに留まらせようと所長が提案した。
「気持ちは分かった。
ならば、君はセレファイスに残っていてくれ。
我々が地上の様子を伺いにいく。
レオも寂しがるからそうしてほしいと思うだろう」
「・・・はい」
こうして4人はポッドに入り、目を閉じてドロイド変換する。
体からまるごと何もかも抜けていく感覚がする。
移植されるのはAUROの情報質が精神を伝って流し込み、
ドロイド内部のCPUに保存、次の体へと移動する。
有機物から無機物へ変換されていく精神以外は全て、
新品とも言える代替へと移り変わるのだ。
シュウウウウウウウウウウウ
ポッドから4人が出てきた。外見はほとんど前と
変化していない。だが、AURO粒子によるエネルギー源で
駆動している正真正銘の高性能アンドロイド。
人体を凌駕する元人間の意識を搭載した存在なのだ。
4人の中でアイザックが真っ先に第一声をだした。
「あんま元の姿と変わらないな」
「ハハハ、最初の言葉がそれか。
私的には内蔵が全て若返った感覚が凄まじいぞ」
「やっぱり、この体でも子どもは造れないんですね」
「生殖機能まで搭載できる技術力を持てないな。
それは神の領域にまで及ぶ術と言いたいところだが、
先に辿り着いたのは無機物の方だったな」
「ああ、ああああ・・・これがあたし。長年望んできた真の美しさ。
アアアアアアアアアアアアアッハッハッハッハッハァァァ!」
叫び声が響き渡る。
アメリアは歓喜の声をあげた。
顔面のシワが一部もなくなりすっかりと消え、
永遠の美貌を手に入れたのだ。
「実験成功おめでとうございます。
これで、あなた方は上位者に成れました」
「私達の肉体はもう死んでしまった」
「墓でも造ろうかー?」
「精神がここに存在しているはずの我々の墓か・・・。
フフ、なんとも奇妙な感覚だ」
コウシ所長は自らの頭を撫でて感触を確かめてみる。
脳内の思考も驚くほどにまで冴えている。
彼らは正確にもう人ではなくなった。
だが、正確性はヒトのそれを遥かに超えた存在へと変わりゆく。
「アンドロイドは死の概念すら覆してしまったわねぇ。
永遠、まさに永劫。あたし達はそれを手に入れたの。
生物失格のレッテルを張られる言われもないわ」
「所長は外見そのままで良いんですかい?
イケメンな見た目に変えても良かったんじゃ?」
「私は若造扱いされるのは嫌いでね、外見はこのままで良い」
「そういうモンですか」
「ふふっ、良しなにです」
メンバー達にとっては新たなる出発点でもある。
アイザックは内心、生体情報コピーペーストした事で
色調補正するのを忘れて悔やむ。
(ドロイドになっても、黄色は見えやしねえ。
後で直せねえなんて聞いてねえわ・・・まったく)
23:00 自室
メンバー達はすでに退出して自室に戻っている。
もう寝る時間だが、何気なく窓から外を眺めてみる。
下層階は暗くて見えず、火の粉も見えなくなっていた。
ライオットギアによる制圧鎮静もほぼ上手くいったようだ。
カリカリカリ
CPUの音のみが部屋に響いて、Mは何かを計算している。
あれだけの知識を整理するのも時間がかかるだろうが、
そっと声をかけてみた。
「M、少し話したい事がある」
「「まだ起きてる、就寝予定時間はもう過ぎているよ?」」
睡眠などという概念のない機械制御されているMが、
就寝を推奨するのも意外だが、そうさせた当の自分は
罪という点について一度聞いてみたかった。
機械的に罪という事象はどう思っているのか。
「私が今まで受けてきたの罪の観念をどう捉えている?」
「「クロノス、古宿エリア傷害事件検索・・・」」
「いや、精神的な事象だ。観念とは人の行いによる物事の思考。
起こした行動や結果によって生じた脳内の思想だ」
「「思想・・・定義が不明。
ならば、ライオットギアで制圧した行為の必要性は?」」
「・・・あれは天裁だ。強力たる自衛組織の制御と兵器鎮圧のために
やむをえず行った」
「「天裁・・・天の裁き。神という存在が下界の悪事に対する自然の報い。
超越者が下界の者達に下す裁き、
データベースではそう記載されている。
でも、神について詳細が教えられていない」」
(やはり、箇条書き言動か)
あくまでもデータベースから引き出される言い方のみで、
意思表示もみじんもない。仕方なく例え好きな話から辿るべくして
Mに自分の境遇を洗いざらい話した。
父から檻に入れられ教育を受けた事、
撮影されながら暴力を受けた事、
惨めに感じながらも、正直にMに語り伝える。
「「傷害罪、プライバシー侵害罪。
観念という曖昧な表現で言われても無理解、認証不可。
余にとっては罪を内包するという設定としている」」
「罪を内包する・・・か」
今更ながら蜂起を起こした事を振り返ってみる。
改めて見直せば、“自分達だけ上に逃げた”という解釈にもなる。
仕方がなかった。
自分の周りには有能な人材に恵まれているのだ。
それはそれで別に悪点はないが、自らの気は晴れない。
時々、自分だけ置き去りにされた気分にもなる。
しかし、どう鑑みても無意味なのは分かっていた。
思うまでもない、自分とてただの罪人だからだ。
仮に下界の者達があらゆる術を用いてここまで辿られた場合、
Mが説得されて自分が政策してきた事が全て覆されてしまったら
ブレイントラストの残した功績も無駄に終わる。
この子に上手に伝わらせるにはどうすべきか、
捉えどころのない罪の在り方をどうにか独自解釈させて
世界を維持してほしい。
「確かに私の言い回しは抽象的で解釈しにくい。
行為は目で見えるものの、意識や概念はみえない。
我々人類が常に置き去りにしてきたものだ」
「「・・・・・・」」
「もしも、もしもだ。ここセレファイス内部に侵攻されて来られたら
それが生じた時は包み込むように・・・いいな?」
「「・・・認証」」
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