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第50話 反射光
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オリハルコンオーダーズの一員、白峰光一との交戦は
マナとの協力で苦戦の果てにようやく終わった。
黒幕の一部の破壊による散乱が残るものの、
仕掛人は跡形もなく消え去り、ホール内は静寂になる。
(光一が黒幕の一部だったなんてな・・・)
同級生の1人が晃京の占拠者だったという事実が、
あっけにとられたなんてレベルじゃなかった。
意外性なんて今までの経験からもう慣れたと思ったが、
今回は違う。
晃京の支配者の一角が目の前に立ちふさがり、
偽りなく人のままで姿を現した。
しかも、なかなか手強い相手だった。
上級悪魔を召喚できるなど、組織に選ばれただけはある。
まだ他にも数人いる事に目まぐるしいが、
とりあえず今はマナを助けなければ。
剣で切り、ほどいて床に降ろした。
「大丈夫か!?」
「私は平気です」
見たところ怪我はなく、疲れ切った顔をしているが
マナは本当に危害を加えられていなかった。
光一は彼女に好意をもち、あげくに自分へ嫉妬して
挑戦しに招いたのだろう。
人の事なんて言えないポジションだけど、
お互い衝突する場に呆れ事すら口に出せなくなる。
「同じクラスの連中がACを使うなんて、
すっかり見慣れたのもあんまりだけど。
今回はちょっと堪えた。
あいつも・・・ACを持っていた。
しかも、オリハルコンオーダーズだったとは」
「私も意外でした。
黒いACはあまりにも強大で、
1人でこなせられなかったのが残念で」
「無理もない。
図書委員どうし近い所にいたからこそ、
偶然分かったんだろうな」
「光一さんは学園中において特に高い適性力を
もっていたようです。
あの人が所持していた書物にACが入っていて
不審に単独で調べていたんです」
「それで光一が黒なのを気付いたのか。
ここに来る前に俺達に相談してくれれば」
「実は私、光一さんの事を前から知っていたんです。
以前、あの人にACの件を内緒にしてって話ですが、
すでに気付かれていました」
「えっ!?」
「そして、彼は黒い鉱石を所持していた事で、
オリハルコンオーダーズに関与した疑いが強まり、
私だけでここを密偵したかったのです」
「だからって、単身でこんな無茶をしなくても。
そういえば、ジネヴラさんは?」
「・・・姉の居場所は分かりません。
二手に別れてから、行方が」
ジネヴラさんも独自行動でここにいなかった。
教会も気取られないように動き、
常に裏取りばかりする見えない相手だけに、
隠密行動をする必要があったのだろう。
「まあ、そうだな。
俺もあいつの罠にかかったくらいだし。
お前がAC使いだって事を気が付くくらいだしな」
「だけど、光一さんは前から存在に気付いてました。
図書室に侵入した人の話、ありましたよね」
「ああ、確か魔術書を漁りにきてたって」
「その人は光一さんの指示で来ていた人です。
私が図書室で設置した監視カメラに内蔵した
クォーツを辿られてACを気取られたんです」
「な・・・!?」
「悪魔の書も噓だったんです。
本には元から悪魔を封じる力はありません。
後に光一さんもACの適性をもっていると気付いて、
イチかバチか、オリハルコンオーダーズに
加入する振りをしてここに来たのですが、
結局、それも察知されてしまって」
「なんという賭けを・・・意外に、
お前も大胆な事をするもんだな」
「でも、助けに来てくれると信じていました。
危険な賭けなのは否定できませんけど、
こうして1人占拠者を発見できましたし」
功を奏したおかげで、1つのきっかけが生まれた。
危険を省みずに単身で挑もうとしたのだ。
ゴールデンラブラドライトをここで返す。
着かず離れず側にいてくれた光に、
ロザリアさんの幻惑から守ってくれたのは
こちらも感謝しなくてはならないから。
「マナ・・・」
「ありがとうございます、聖夜さん」
一瞬、抱きついてしまいそうになったが離される。
3日風呂に入れなかったようで、身体を気にされた。
連絡してから主任も調査と警察が数人来る。
彼女を背負ってゆくつもりだったけど、
目を気にして自力で歩き、ここからすぐに外へ出た。
この事件はニュースになり、広報に知られるも
報道内容が大きく異なっていた。
一学生による同級生誘拐という扱いで、
ACに関するものは一切語られずに終わる。
地元を除いては大事もなく関心はもたれず、
よくある事件という印象しかもたれなかった。
すぐさま調べにきた科警研の介入で、
光一の所有していたACが判明した。
オブシディアン、黒曜石とよばれる夜墨の様な鉱物は
扱いにクセのある闇の力を秘めたものだった。
並大抵の適性では扱えず、ヤギや死神の様な上級悪魔も
召喚できるそこいらのACとは規格の違いだ。
若者の光一ですら、あれだけの能力を解放していた。
それを手に入れた形跡は本人がすでにいないので、
詳細を明らかにする事ができなかったが、
役人の伝手で司書補が国の上層と繋がっていたのが判明。
しかし、彼も行方不明になっていた。
複数形の名称からして、他にも何人かいるはず。
まだ強大な力をもつ者が存在するのを忘れてはならない。
捕縛で吐かせられなかったのは主任もがっかりする。
「彼を逮捕できなかったのは痛いわね。
あんたが助けた女性議員も利用して、
議事堂前で人の塊を形成していた」
「あいつは学園でも1~2を争う優秀なやつでした。
話から国の誰かと繋がりがある発言をしていたので」
「星の家柄からして相当の接点はありえる。
これは・・・これは私の推測だけど、
相当大きなバックボーンが控えている。
絶対にただのテロリストなんかじゃないわ」
あいつが言っていたイデオロギー。
主任から主義の意味を教えられて、
テロまがいと思いにくい節もなんだか納得。
直接的、物理的な力だけでなく人脈を利用した
流れすらも結晶を泳がせていた。
八起はこれ見よがしに人の内を知る者。
オリハルコンオーダーズは強力な力をもっている。
そして自分も。
得体の知れない適性者どうしの抗争であり、
人間という枠を超えた戦いなのだ。
マナとの協力で苦戦の果てにようやく終わった。
黒幕の一部の破壊による散乱が残るものの、
仕掛人は跡形もなく消え去り、ホール内は静寂になる。
(光一が黒幕の一部だったなんてな・・・)
同級生の1人が晃京の占拠者だったという事実が、
あっけにとられたなんてレベルじゃなかった。
意外性なんて今までの経験からもう慣れたと思ったが、
今回は違う。
晃京の支配者の一角が目の前に立ちふさがり、
偽りなく人のままで姿を現した。
しかも、なかなか手強い相手だった。
上級悪魔を召喚できるなど、組織に選ばれただけはある。
まだ他にも数人いる事に目まぐるしいが、
とりあえず今はマナを助けなければ。
剣で切り、ほどいて床に降ろした。
「大丈夫か!?」
「私は平気です」
見たところ怪我はなく、疲れ切った顔をしているが
マナは本当に危害を加えられていなかった。
光一は彼女に好意をもち、あげくに自分へ嫉妬して
挑戦しに招いたのだろう。
人の事なんて言えないポジションだけど、
お互い衝突する場に呆れ事すら口に出せなくなる。
「同じクラスの連中がACを使うなんて、
すっかり見慣れたのもあんまりだけど。
今回はちょっと堪えた。
あいつも・・・ACを持っていた。
しかも、オリハルコンオーダーズだったとは」
「私も意外でした。
黒いACはあまりにも強大で、
1人でこなせられなかったのが残念で」
「無理もない。
図書委員どうし近い所にいたからこそ、
偶然分かったんだろうな」
「光一さんは学園中において特に高い適性力を
もっていたようです。
あの人が所持していた書物にACが入っていて
不審に単独で調べていたんです」
「それで光一が黒なのを気付いたのか。
ここに来る前に俺達に相談してくれれば」
「実は私、光一さんの事を前から知っていたんです。
以前、あの人にACの件を内緒にしてって話ですが、
すでに気付かれていました」
「えっ!?」
「そして、彼は黒い鉱石を所持していた事で、
オリハルコンオーダーズに関与した疑いが強まり、
私だけでここを密偵したかったのです」
「だからって、単身でこんな無茶をしなくても。
そういえば、ジネヴラさんは?」
「・・・姉の居場所は分かりません。
二手に別れてから、行方が」
ジネヴラさんも独自行動でここにいなかった。
教会も気取られないように動き、
常に裏取りばかりする見えない相手だけに、
隠密行動をする必要があったのだろう。
「まあ、そうだな。
俺もあいつの罠にかかったくらいだし。
お前がAC使いだって事を気が付くくらいだしな」
「だけど、光一さんは前から存在に気付いてました。
図書室に侵入した人の話、ありましたよね」
「ああ、確か魔術書を漁りにきてたって」
「その人は光一さんの指示で来ていた人です。
私が図書室で設置した監視カメラに内蔵した
クォーツを辿られてACを気取られたんです」
「な・・・!?」
「悪魔の書も噓だったんです。
本には元から悪魔を封じる力はありません。
後に光一さんもACの適性をもっていると気付いて、
イチかバチか、オリハルコンオーダーズに
加入する振りをしてここに来たのですが、
結局、それも察知されてしまって」
「なんという賭けを・・・意外に、
お前も大胆な事をするもんだな」
「でも、助けに来てくれると信じていました。
危険な賭けなのは否定できませんけど、
こうして1人占拠者を発見できましたし」
功を奏したおかげで、1つのきっかけが生まれた。
危険を省みずに単身で挑もうとしたのだ。
ゴールデンラブラドライトをここで返す。
着かず離れず側にいてくれた光に、
ロザリアさんの幻惑から守ってくれたのは
こちらも感謝しなくてはならないから。
「マナ・・・」
「ありがとうございます、聖夜さん」
一瞬、抱きついてしまいそうになったが離される。
3日風呂に入れなかったようで、身体を気にされた。
連絡してから主任も調査と警察が数人来る。
彼女を背負ってゆくつもりだったけど、
目を気にして自力で歩き、ここからすぐに外へ出た。
この事件はニュースになり、広報に知られるも
報道内容が大きく異なっていた。
一学生による同級生誘拐という扱いで、
ACに関するものは一切語られずに終わる。
地元を除いては大事もなく関心はもたれず、
よくある事件という印象しかもたれなかった。
すぐさま調べにきた科警研の介入で、
光一の所有していたACが判明した。
オブシディアン、黒曜石とよばれる夜墨の様な鉱物は
扱いにクセのある闇の力を秘めたものだった。
並大抵の適性では扱えず、ヤギや死神の様な上級悪魔も
召喚できるそこいらのACとは規格の違いだ。
若者の光一ですら、あれだけの能力を解放していた。
それを手に入れた形跡は本人がすでにいないので、
詳細を明らかにする事ができなかったが、
役人の伝手で司書補が国の上層と繋がっていたのが判明。
しかし、彼も行方不明になっていた。
複数形の名称からして、他にも何人かいるはず。
まだ強大な力をもつ者が存在するのを忘れてはならない。
捕縛で吐かせられなかったのは主任もがっかりする。
「彼を逮捕できなかったのは痛いわね。
あんたが助けた女性議員も利用して、
議事堂前で人の塊を形成していた」
「あいつは学園でも1~2を争う優秀なやつでした。
話から国の誰かと繋がりがある発言をしていたので」
「星の家柄からして相当の接点はありえる。
これは・・・これは私の推測だけど、
相当大きなバックボーンが控えている。
絶対にただのテロリストなんかじゃないわ」
あいつが言っていたイデオロギー。
主任から主義の意味を教えられて、
テロまがいと思いにくい節もなんだか納得。
直接的、物理的な力だけでなく人脈を利用した
流れすらも結晶を泳がせていた。
八起はこれ見よがしに人の内を知る者。
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