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第七章:椿は鋼に咲く、忠誠の銃声とともに――女帝と三将軍のプロトコル
第134話:悪魔は、母の役を演じない──ただし例外もある
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リディア・エクイノクス
帝国最大のファストフードチェーン「キャット」の創業者、ケティヤ・エクイノクスの一人娘である。
ケティヤは典型的な帝国のキャリアウーマン。事業を第一とし、家庭を持つことはなかった。多数のエリート男性と親密な関係を持ったが、それはあくまでセフレのようなもの。リディアは、そんなある夜の「予期せぬ出来事」の結果として生まれたのだ。つまり、父親は不明。
そんなリディアは、もちろん母から愛情を受けて育つことはなかった。そもそもケティヤは子どもを望んでおらず、中絶も考えたが、「企業には後継者が必要」「エリート男性との子どもなら優秀なはず」という計算が、リディアをこの世に誕生させた。
彼女は生まれるとすぐに家政婦に預けられ、初めて母と対面したのは5歳の誕生日だった。
「顔は合格よ。あたしの娘だから、ブスは嫌よ」
どうやら、リディアが可愛く育たなければ、この家に居場所はなかったらしい。施設行きを免れたことが、彼女にとって幸運だったのか不幸だったのか――それは彼女自身にしかわからない。
「どうして、お母さんは私を愛してくれないの?」
本には母は子を愛するものと書いてあるのに、なぜ?
彼女は必死に努力した。様々なコンテストに出場し、優秀な成績を収めた。しかしケティヤは一度も見に来なかった。
「お母さん、私、全国ピアノコンクールで金賞取ったよ」
「え? それすごいの? 今忙しいから、後でにしてくれない」
電話は切られ、さっきまで輝いて見えた賞状は、急に暗く冷たいものに感じられた。
後になって知った。ケティヤは愛人との夜のデート中だったらしい。「子持ち」と思われるのを嫌がり、公式にはリディアはケティヤの「姪」ということになっている。
「男がいるから、お母さんは私を愛してくれなかった」
子どもを愛せない母親なんていない――いるべきじゃない。お母さんはきっと男に騙されているんだ。男がいなければ、お母さんだってきっと……
全部男が悪いのよ。
リディアの心の中に、男性への憎悪の種が静かに埋められた。
*
「リディアちゃん、まだサボっているの? ミニスカートで接客させちゃうわよ」
「すみません、店長……」
どうやらアルバイト中に居眠りしていたらしい。勉強、アルバイト、そしてモリアの監視――やることが多く、睡眠が十分に取れていない。そして彼女が働いている店は……
「あの、店長、この制服はどうにかならないでしょうか?」
メイド服を着たリディアが店長に訴えかける。
「だめよ。マリ商会はこれが売りの一つだから。ただで高い時給を払っているわけじゃないの」
最初は高い時給に惹かれて応募したが、スタッフ全員女性という条件だった。まさかのメイド服着用とは……
「これではまるで風俗店じゃありませんか。王国の店と聞いて、もっと上品な店を想像しました」
「失礼ね! うちは真面目な店よ。そんないやらしいサービスは提供していない。今だって、リディアちゃんが苦手な男性客は全部他のメンバーがフォローしているじゃない。文句は言わないで」
「ぐう……」
マリの正論に、さすがのリディアも反論できない。
「でもリディアちゃん、いいお家のお嬢様でしょ? わざわざうちの店で働かなくても……」
「自分のためじゃありません。この帝国では弱い人々が貧困と飢えに苦しんでいます。彼らが少しでも楽に生きられるように、私が頑張りたいんです」
「それなら、家のお金を使えば……」
「あれは母のお金です。私のじゃありません。仕事に戻ります。すみません」
母の話が出た瞬間、リディアは唇を噛みしめ、会話を打ち切った。今でも彼女は母との現実に向き合えていないらしい。
「親がいなくても、いても、悩みは尽きないね……」
マリは奥の倉庫へ消えるリディアの背中を見つめ、呟いた。
________________________________________
*
(何をしてるの、私……)
店長にあんな態度を取って、クビになったらどうしよう。次のアルバイト先はきっとここよりも条件が厳しいはず。もっとうまくいかないかもしれない……
その時、
「レン君、全然ダメです! 埃が全く取れていません! 掃除は上から下へ、と教えたはずです。これじゃ棚の埃が全部地面に落ちて、綺麗なはずの床が埃まみれになってます!」
「始まったよ、セリナの掃除講義……いいじゃん、倉庫だし、床が少し汚れたくらいで」
そこには二人のメイド服を着た従業員がいた。一方は亜麻色の髪を結び、もう一方の銀色のショートカットの子を叱っている。
(確か、前に店長から新人が来るって聞いたけど、あれが? 亜麻色の子はともかく、銀色の子は男の子じゃない? 男性スタッフがいないって書いてあったのに。もう最悪……)
「あの、ここは男性禁止ですけど」
不満げなリディアはすぐにレンに向けて警告を発した。
「え? 俺?」 いきなりの非難に、レンは状況をまったく飲み込めていない。「いや、俺、女の子だけど」
「はあ? あなたもあのモリアと同じ、男の体をして自分を女の子と主張するんですか? お生憎さま、手術していない方は私から見ればどう弁解しても男です。来てください、店長に抗議します。こんなの詐欺ですよ。女性スタッフオンリーだからここを選んだのに、最悪」
リディアはレンの手を引っ張って外へ連れ出そうとする。
「ちょっと、離して! 俺は生まれつき女の子の体だけど! 女装でも性転換でもない、正真正銘の女の子だけど! セリナも何か言ってよ!」
「昨日勝手にセリナのプリンを食べたレン君のことなんて知りません。ふん!」
どうやら、今日やけにレンに厳しく当たっていたのは、昨日の食べ物の恨みもあったようだ。
「いい加減にしなさい! 見苦しいですよ。女の子を演じたいなら、せめてその乱暴な口調をどうにかしなさい。モリアならもっと上品に話せます」
『俺、王女だけど、ちょっと、モリアって……あの野郎、まだ俺をハメたのか?」
「野郎じゃありませんわ。あなたよりレディらしくしているつもりよ。ふふふ」
この無毛な争いを止めたのは、一人の悪魔であった。
*
「申し訳ございません!」
真相を知り、土下座しようとしたリディアをレンが慌てて止めた。
「俺、別に男装してるわけじゃないんだけど……義兄さまに会った時も男に間違われたし、ショックだ」
「レン君がずぼらだからですよ。マオウさんに嫌われますよ」
「ずぼらじゃないし! それにあいつ、こんなことで俺を嫌うわけない!」
「ええ、彼は心が広い方ですわ。でもパンツを昨日と同じのを履くのはアウトです」
「なんで知ってるの!?」
レンは慌ててお尻を隠すが、女性陣から冷たい視線が注がれる。
「なんであなたがここにいるのよ? まさか私を付けてるの?」
謝罪した後、リディアはモリアが自分のメイド姿を見ていたことに気づいた。
「あらあら、店長さん。ここの店員の教育はなっていませんわ。客に『なぜ店に来たのか』なんて尋ねるものですか? 買い物以外に何があるというのですかしら」
「リディアちゃん、こちらは当商会のVIPの中でも最も長くお付き合いいただいているお客様よ。先ほどの対応は失礼だわ。お嬢様、今日はどのような商品をお求めですか? このマリ商会の品揃えは大陸一。必ずご満足いただけますわ」
マリの商才は本物だが、彼女がここまで短期間で事業を拡大できたのは、モリアが裏で糸を引いているからでもある。悪魔は知識と富をもたらす──まさにその通りだ。
「まあ、お嬢様でなんで、お上手ですわ。では、こちらはいかがでしょうか」
モリアが一枚のチケットを取り出した。それは──
「これは……本店プレミアム会員のみに提供されている幻の『メイド一日レンタルチケット』! 女性客限定で、当初あまり反響がなくて再販していないのに……」
「じゃーん」
一枚のチケットが三枚に増えた。
「あれ? 確か三枚しか販売していなかったはず……まさか……」
「ええ、全部私が持っています。まるで今日のためにあるような『偶然』ですわ。ふふふ」
チケット販売初期、店員を守るため様々な制限がかけられ、不評だった商品。そのわずか三枚を、モリアはすべて確保していたのだ。
「よろしいですね。レンタルとしても店内利用としても。もちろん、店員に不埒な真似をしたら即座にマリ商会全店からブロックされますので。それを忘れずに、楽しい時間をお過ごしください」
「ええ、アスちゃんじゃありません。そんなことはしませんわ。では、セリナ、レン、リディア──この三名のメイドをレンタルしますわ」
________________________________________
*
「王様ゲーム―――」
モリアはどこからともなく箸を取り出し、王様ゲームを始めようとした。
「王様ゲームって何ですか?」
セリナにはその手の知識がなかった。
「当たりを引いたものが王様になりますわ。他の番号の人に命令できるの。そして王様の命令は絶対よ」
「私は反対! そんなことしたら、いやらしい命令が来たらどうするつもり!?」
リディアが一番強く反対した。
「そんなことはできないわ。これがこのチケットのルールですから。いいわ、もしそんな命令が出たら即ゲーム終了。これで安心かしら?」
「王様を決めるとか、そんなの差別よ。平等を唱える私の主義に反する。私は不参加よ」
「もしあなたが王様なら、私に命令してあなたの理想を叶えられるのに……でも、ですか?」
「それは……」
迷う。だが、もしこれで宿願が達成できるなら、このゲームも決して悪い選択じゃない。
「約束は守ってもらうからね」
「ええ、王様の命令は絶対ですから」
*
「王様は誰だ!」
四人が一気にくじを引き、王様を決める。
「セリナ、王様になりました!」
どうやら最初の王様はセリナのようだ。全知のモリアはどのくじが当たりか知っているが、純粋にゲームを楽しむ彼女はあえて外れを引いた。
「こんなに簡単に王になるなんて……父さまが知ったら泣くぞ」
レンはそう言いながらも、内心は少しがっかりしていた。
(ハズレか……まあ、モリアが引くよりはマシ)
リディアはそう思った。
「では、モリアさん、マオウさんの過去を教えてください」
「残念ですが、そういう仕組みではありません。命令するのは番号で、直接名前を指定するのは無効ですわ」
「そんな……せっかく引けたのに。つまらないです。では、3番、このゲームが終わるまで語尾に『にゃ』を付けてください」
「え? 俺だけど……」
セリナの適当な命令の被害者は、3番を引いたレンだった。
「『俺だけど』『にゃん』ですわ。王様の命令は絶対」
「ちくしょう、わかったよ、わかった……『にゃん』」
言い直すところがレンらしくて可愛らしい。
「ふふふ、私が引いたようです。実は私の運も結構いいのかしら」
第二回はモリアが当たりを引いた。
「いやらしい命令は……」
「ええ、わかっていますわ。では少しルールを変えましょう。番号を引いたものは自分の番号を申告してください。そして命令できるメンバーは一人まで」
「そうしたら、誰に命令するか特定できるじゃない」
「だれも必ず本当の番号を言うとは限りませんわ」
これは心理戦に持ち込むつもりだ。じゃんけんでよくある「次に出す手を宣言する」戦略と同じで、相手を苦悩させる策略。グーチョキパーに対して、今の番号も丁度1から3まである。命令する対象を一人に絞るなら、命中率は三分の一。しかし、ジャミングによってそれは大きく変わる。
「私の命令は以上ですわ」
「ゲーム開始前に話せばいいのに、なせまだ命令を使うまでする『にゃ』」
「手間は省いてちょっとだけ。私の狙いは最初からモリア、あなた一人よ」
(次、私が王様を引いたとき、あなたの最後よ)
ただ四本のくじが、リディアには重く感じる。当たる確率は四分の一――決して高くはないが、低くもない。だけど当たりたい。ガヴェインが話す神は信じないけど、今だけは……
(私の味方にして)
くじを引き、その結果は──
「王様だ!」
神はどうやらリディアに微笑んだようだ。
「では申告ターン。私は2番ですわ」
「モリアさんは噓を言っています。セリナが引いたのが2番です」
「俺は噓が嫌いだ。1番だ。信じるか信じないかはあんたの自由だ『にゃん』」
(レンは噓を言うはずがない。彼女は最初から女性と自称しているのに、私はそれを信じなかった。彼女は誠実な方。であれば残りは2番と3番……)
リディアは二人を観察する。セリナはどう見ても噓を言わない純粋な娘、逆にモリアは悪巧みしそうな笑顔。
これはどう見ても、モリアが噓でセリナが正しいことを言っている。だけど、あのモリアがそんな簡単な噓を言う? ありえない。セリナだって必ずしも本当のことを言っているとは限らない。これはモリアの罠だ。
(2番……私の裏をかこうとしているわ。全部お見通しよ。これで彼女に命令すれば、平等党の勝利よ。命令すれば……)
それでいいの?
いいに決まっている。彼女は男、男は皆悪よ。
あれ? なんで私は彼女を「彼女」と呼んでいるんだろう……
「2番……ゲームが終わるまで『ワン』を語尾につけなさい」
「あら、それでいいのかしら? もっと欲を出して、『公平党解散』『男の姿に戻りなさい』のような命令をしてもいいのに」
「うるさい、王様の命令は絶対でしょう」
「そうね、王様の命令には逆らえませんわ。レンは語尾がもっと可愛らしくなりましたわ。羨ましい限り、ふふふ」
モリアが見せたくじは1だった。
「え?」 モリアは2番じゃない?
「ちくしょう、なれないことするべきじゃなかった『にゃん』『ワン』」
「セリナはモリアさんが2番じゃないって言ってましたのに……」
「でも後半自分が2番だとは言っていませんわね。この娘、いつここまでずる賢くなったのかしら」
「マオウさんが『噓に真実を混ぜれば、敵は信じるにしても信じないにしても、絶対に噓にはまる。戦術価値が高い』と言いました」
(全員噓をついた……私は自分の思い込みで……でも当たったとしても、あんな命令じゃ……何をしているんだろう、私)
「では、私はこれから用事がありますので、次で最後としましょう。リディアさん、私に命令できるチャンスは次が最後になりますわ」
「もういい、早く終わらせて」
(もうどうでもいい、ゲームとか、モリアとか、平等党とか――私とか)
「王様誰だ!」
リディアは続ける気もなくくじを引いた。それは先ほどモリアが引いたのと同じ1の数字。
(ハズレか……神は一度しかチャンスをくれなかった。私がその一度のチャンスを棒に振った。だからもう二度と来ない)
「あら、まだ私。普段の行いがいいからかしら? ふふふ」
(ほら見て、彼女こそ選ばれしもの。私は……どうせ)
「申告ターンです。セリナは1番を持っていません。でもレン君はそれを持っています」
「もう懲りた。俺が持っているのは3番、本当だ『にゃん』『ワン』」
「私は1番を持っている」
(どうせモリアのこと、私を信じるわけ……)
「1番に命令します」
(え?)
「いいのか? 私は噓を言っているかもしれない。たとえ本当だとしても、平等党の権限はほとんど会長にある。私に命令したって……」
「信じますわ。だって、あなた本当のことを言ってますから。違うのかしら?」
「違わない」
リディアはくじの数字を見せた。
「あなたの勝ちよ。さあ、命令しなさい」
「じゃ、この電話の向こうに、本当の気持ちをぶつけなさい。あなたならできるでしょう」
「そこくらい、どうということはない」
モリアから電話を受け取り、その先には懐かしい声が。
「もしもし、株式会社キャットの理事のケティヤよ。どうなた? すみませんが、今都合が悪いのよ。あとでかけ直してくれる?」 母の声。
「切っちゃダメよ。まだ王様の命令は完了していないもの。王様の命令は……絶対よ」
私は自分でも気づかないうちに切ろうとしていた。母とそんなに話したくなかった。
「もしもし? いたずら電話かしら」
「母さん、私よ、リディア」
「リディア? そんな娘いたっけ……まあいいわ。なに? お金が欲しい? それなら秘書にかけなさい。私は忙しいのよ」
「忙しいで……どうせ男と逢引きでしょ。母さん、この時間仕事しないのは知ってた」
「だからなに? あたしの生き方に指図する気? 誰のおかげでそこまで大きく育ったと思ってるの。小娘が若いからって調子に乗るんじゃないよ。昨日の男もあんたのことばっかり聞いて嫌になるわ」
怒りは頂点に達した。これからの言葉を放ったら、もう戻れない。だけど──
「リディアさん、王様の命令は絶対よ」
彼女の言葉が私に勇気をくれた。
「クソババア」
「え? あんた、なに?」
「クソババアって言ってるの。男に相手されなくなったって娘に当たらないでよ。あなたのセンスが最悪だから、クズの男しか寄って来ないのよ」
「リディア!」
「しゃべるなババア! あなたは母として最悪よ。あなたがそれ以上子どもを作らないのは正解だわ。私のような子をこれ以上増やさないから。一日すら母に愛されない子ね」
「いい加減にしなさい! これ以上言うとあんたと縁を切──」
「切っちゃいなよ! あなたの臭いお金は一文も欲しくない。これまで私にかかったお金は全部レシート付きで振り込む。安心して、あなたと関係ない所でバイトして稼いだ金よ。これで借り貸しなし。最後にこの言葉を送るわ──あなたを最初に見てからずっと、大嫌いだったよ!」
それを言い終えると、リディアは電話を切った。
そんな彼女を見て、周囲の誰も声を出せなかった。まさかの王様ゲームがここまでなるとは、誰が想像できただろうか。一人の悪魔を除いて。
その静寂を打ち破ったのは、一つの拍手の音。
「素晴らしい、よくできましたわ。言えてるではありませんか」
「私、正しいことをしているのかな……」
「いいじゃないですか、間違っていたとしても。偽りの正しさよりも、私はそっちの方が好きよ」
(そうか……私はずっと、こんなお母さんが欲しかった。私を褒めてくれて、私を見てくれて、私に……)
「あああ……っ、うう……ひっく……」
(泣く場所をくれたお母さんが欲しかった)
気づけば、リディアはもうモリアの胸に号泣していた。
それは生まれた時よりも強く、そして喜びを込めて。
「こんなに母の愛に飢えている子を放っておけないなんて……私として甘すぎかしら」
そのリディアの泣き声を優しく宥め、まるで母親のように彼女を包み込んだ。
帝国最大のファストフードチェーン「キャット」の創業者、ケティヤ・エクイノクスの一人娘である。
ケティヤは典型的な帝国のキャリアウーマン。事業を第一とし、家庭を持つことはなかった。多数のエリート男性と親密な関係を持ったが、それはあくまでセフレのようなもの。リディアは、そんなある夜の「予期せぬ出来事」の結果として生まれたのだ。つまり、父親は不明。
そんなリディアは、もちろん母から愛情を受けて育つことはなかった。そもそもケティヤは子どもを望んでおらず、中絶も考えたが、「企業には後継者が必要」「エリート男性との子どもなら優秀なはず」という計算が、リディアをこの世に誕生させた。
彼女は生まれるとすぐに家政婦に預けられ、初めて母と対面したのは5歳の誕生日だった。
「顔は合格よ。あたしの娘だから、ブスは嫌よ」
どうやら、リディアが可愛く育たなければ、この家に居場所はなかったらしい。施設行きを免れたことが、彼女にとって幸運だったのか不幸だったのか――それは彼女自身にしかわからない。
「どうして、お母さんは私を愛してくれないの?」
本には母は子を愛するものと書いてあるのに、なぜ?
彼女は必死に努力した。様々なコンテストに出場し、優秀な成績を収めた。しかしケティヤは一度も見に来なかった。
「お母さん、私、全国ピアノコンクールで金賞取ったよ」
「え? それすごいの? 今忙しいから、後でにしてくれない」
電話は切られ、さっきまで輝いて見えた賞状は、急に暗く冷たいものに感じられた。
後になって知った。ケティヤは愛人との夜のデート中だったらしい。「子持ち」と思われるのを嫌がり、公式にはリディアはケティヤの「姪」ということになっている。
「男がいるから、お母さんは私を愛してくれなかった」
子どもを愛せない母親なんていない――いるべきじゃない。お母さんはきっと男に騙されているんだ。男がいなければ、お母さんだってきっと……
全部男が悪いのよ。
リディアの心の中に、男性への憎悪の種が静かに埋められた。
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「リディアちゃん、まだサボっているの? ミニスカートで接客させちゃうわよ」
「すみません、店長……」
どうやらアルバイト中に居眠りしていたらしい。勉強、アルバイト、そしてモリアの監視――やることが多く、睡眠が十分に取れていない。そして彼女が働いている店は……
「あの、店長、この制服はどうにかならないでしょうか?」
メイド服を着たリディアが店長に訴えかける。
「だめよ。マリ商会はこれが売りの一つだから。ただで高い時給を払っているわけじゃないの」
最初は高い時給に惹かれて応募したが、スタッフ全員女性という条件だった。まさかのメイド服着用とは……
「これではまるで風俗店じゃありませんか。王国の店と聞いて、もっと上品な店を想像しました」
「失礼ね! うちは真面目な店よ。そんないやらしいサービスは提供していない。今だって、リディアちゃんが苦手な男性客は全部他のメンバーがフォローしているじゃない。文句は言わないで」
「ぐう……」
マリの正論に、さすがのリディアも反論できない。
「でもリディアちゃん、いいお家のお嬢様でしょ? わざわざうちの店で働かなくても……」
「自分のためじゃありません。この帝国では弱い人々が貧困と飢えに苦しんでいます。彼らが少しでも楽に生きられるように、私が頑張りたいんです」
「それなら、家のお金を使えば……」
「あれは母のお金です。私のじゃありません。仕事に戻ります。すみません」
母の話が出た瞬間、リディアは唇を噛みしめ、会話を打ち切った。今でも彼女は母との現実に向き合えていないらしい。
「親がいなくても、いても、悩みは尽きないね……」
マリは奥の倉庫へ消えるリディアの背中を見つめ、呟いた。
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(何をしてるの、私……)
店長にあんな態度を取って、クビになったらどうしよう。次のアルバイト先はきっとここよりも条件が厳しいはず。もっとうまくいかないかもしれない……
その時、
「レン君、全然ダメです! 埃が全く取れていません! 掃除は上から下へ、と教えたはずです。これじゃ棚の埃が全部地面に落ちて、綺麗なはずの床が埃まみれになってます!」
「始まったよ、セリナの掃除講義……いいじゃん、倉庫だし、床が少し汚れたくらいで」
そこには二人のメイド服を着た従業員がいた。一方は亜麻色の髪を結び、もう一方の銀色のショートカットの子を叱っている。
(確か、前に店長から新人が来るって聞いたけど、あれが? 亜麻色の子はともかく、銀色の子は男の子じゃない? 男性スタッフがいないって書いてあったのに。もう最悪……)
「あの、ここは男性禁止ですけど」
不満げなリディアはすぐにレンに向けて警告を発した。
「え? 俺?」 いきなりの非難に、レンは状況をまったく飲み込めていない。「いや、俺、女の子だけど」
「はあ? あなたもあのモリアと同じ、男の体をして自分を女の子と主張するんですか? お生憎さま、手術していない方は私から見ればどう弁解しても男です。来てください、店長に抗議します。こんなの詐欺ですよ。女性スタッフオンリーだからここを選んだのに、最悪」
リディアはレンの手を引っ張って外へ連れ出そうとする。
「ちょっと、離して! 俺は生まれつき女の子の体だけど! 女装でも性転換でもない、正真正銘の女の子だけど! セリナも何か言ってよ!」
「昨日勝手にセリナのプリンを食べたレン君のことなんて知りません。ふん!」
どうやら、今日やけにレンに厳しく当たっていたのは、昨日の食べ物の恨みもあったようだ。
「いい加減にしなさい! 見苦しいですよ。女の子を演じたいなら、せめてその乱暴な口調をどうにかしなさい。モリアならもっと上品に話せます」
『俺、王女だけど、ちょっと、モリアって……あの野郎、まだ俺をハメたのか?」
「野郎じゃありませんわ。あなたよりレディらしくしているつもりよ。ふふふ」
この無毛な争いを止めたのは、一人の悪魔であった。
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「申し訳ございません!」
真相を知り、土下座しようとしたリディアをレンが慌てて止めた。
「俺、別に男装してるわけじゃないんだけど……義兄さまに会った時も男に間違われたし、ショックだ」
「レン君がずぼらだからですよ。マオウさんに嫌われますよ」
「ずぼらじゃないし! それにあいつ、こんなことで俺を嫌うわけない!」
「ええ、彼は心が広い方ですわ。でもパンツを昨日と同じのを履くのはアウトです」
「なんで知ってるの!?」
レンは慌ててお尻を隠すが、女性陣から冷たい視線が注がれる。
「なんであなたがここにいるのよ? まさか私を付けてるの?」
謝罪した後、リディアはモリアが自分のメイド姿を見ていたことに気づいた。
「あらあら、店長さん。ここの店員の教育はなっていませんわ。客に『なぜ店に来たのか』なんて尋ねるものですか? 買い物以外に何があるというのですかしら」
「リディアちゃん、こちらは当商会のVIPの中でも最も長くお付き合いいただいているお客様よ。先ほどの対応は失礼だわ。お嬢様、今日はどのような商品をお求めですか? このマリ商会の品揃えは大陸一。必ずご満足いただけますわ」
マリの商才は本物だが、彼女がここまで短期間で事業を拡大できたのは、モリアが裏で糸を引いているからでもある。悪魔は知識と富をもたらす──まさにその通りだ。
「まあ、お嬢様でなんで、お上手ですわ。では、こちらはいかがでしょうか」
モリアが一枚のチケットを取り出した。それは──
「これは……本店プレミアム会員のみに提供されている幻の『メイド一日レンタルチケット』! 女性客限定で、当初あまり反響がなくて再販していないのに……」
「じゃーん」
一枚のチケットが三枚に増えた。
「あれ? 確か三枚しか販売していなかったはず……まさか……」
「ええ、全部私が持っています。まるで今日のためにあるような『偶然』ですわ。ふふふ」
チケット販売初期、店員を守るため様々な制限がかけられ、不評だった商品。そのわずか三枚を、モリアはすべて確保していたのだ。
「よろしいですね。レンタルとしても店内利用としても。もちろん、店員に不埒な真似をしたら即座にマリ商会全店からブロックされますので。それを忘れずに、楽しい時間をお過ごしください」
「ええ、アスちゃんじゃありません。そんなことはしませんわ。では、セリナ、レン、リディア──この三名のメイドをレンタルしますわ」
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「王様ゲーム―――」
モリアはどこからともなく箸を取り出し、王様ゲームを始めようとした。
「王様ゲームって何ですか?」
セリナにはその手の知識がなかった。
「当たりを引いたものが王様になりますわ。他の番号の人に命令できるの。そして王様の命令は絶対よ」
「私は反対! そんなことしたら、いやらしい命令が来たらどうするつもり!?」
リディアが一番強く反対した。
「そんなことはできないわ。これがこのチケットのルールですから。いいわ、もしそんな命令が出たら即ゲーム終了。これで安心かしら?」
「王様を決めるとか、そんなの差別よ。平等を唱える私の主義に反する。私は不参加よ」
「もしあなたが王様なら、私に命令してあなたの理想を叶えられるのに……でも、ですか?」
「それは……」
迷う。だが、もしこれで宿願が達成できるなら、このゲームも決して悪い選択じゃない。
「約束は守ってもらうからね」
「ええ、王様の命令は絶対ですから」
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「王様は誰だ!」
四人が一気にくじを引き、王様を決める。
「セリナ、王様になりました!」
どうやら最初の王様はセリナのようだ。全知のモリアはどのくじが当たりか知っているが、純粋にゲームを楽しむ彼女はあえて外れを引いた。
「こんなに簡単に王になるなんて……父さまが知ったら泣くぞ」
レンはそう言いながらも、内心は少しがっかりしていた。
(ハズレか……まあ、モリアが引くよりはマシ)
リディアはそう思った。
「では、モリアさん、マオウさんの過去を教えてください」
「残念ですが、そういう仕組みではありません。命令するのは番号で、直接名前を指定するのは無効ですわ」
「そんな……せっかく引けたのに。つまらないです。では、3番、このゲームが終わるまで語尾に『にゃ』を付けてください」
「え? 俺だけど……」
セリナの適当な命令の被害者は、3番を引いたレンだった。
「『俺だけど』『にゃん』ですわ。王様の命令は絶対」
「ちくしょう、わかったよ、わかった……『にゃん』」
言い直すところがレンらしくて可愛らしい。
「ふふふ、私が引いたようです。実は私の運も結構いいのかしら」
第二回はモリアが当たりを引いた。
「いやらしい命令は……」
「ええ、わかっていますわ。では少しルールを変えましょう。番号を引いたものは自分の番号を申告してください。そして命令できるメンバーは一人まで」
「そうしたら、誰に命令するか特定できるじゃない」
「だれも必ず本当の番号を言うとは限りませんわ」
これは心理戦に持ち込むつもりだ。じゃんけんでよくある「次に出す手を宣言する」戦略と同じで、相手を苦悩させる策略。グーチョキパーに対して、今の番号も丁度1から3まである。命令する対象を一人に絞るなら、命中率は三分の一。しかし、ジャミングによってそれは大きく変わる。
「私の命令は以上ですわ」
「ゲーム開始前に話せばいいのに、なせまだ命令を使うまでする『にゃ』」
「手間は省いてちょっとだけ。私の狙いは最初からモリア、あなた一人よ」
(次、私が王様を引いたとき、あなたの最後よ)
ただ四本のくじが、リディアには重く感じる。当たる確率は四分の一――決して高くはないが、低くもない。だけど当たりたい。ガヴェインが話す神は信じないけど、今だけは……
(私の味方にして)
くじを引き、その結果は──
「王様だ!」
神はどうやらリディアに微笑んだようだ。
「では申告ターン。私は2番ですわ」
「モリアさんは噓を言っています。セリナが引いたのが2番です」
「俺は噓が嫌いだ。1番だ。信じるか信じないかはあんたの自由だ『にゃん』」
(レンは噓を言うはずがない。彼女は最初から女性と自称しているのに、私はそれを信じなかった。彼女は誠実な方。であれば残りは2番と3番……)
リディアは二人を観察する。セリナはどう見ても噓を言わない純粋な娘、逆にモリアは悪巧みしそうな笑顔。
これはどう見ても、モリアが噓でセリナが正しいことを言っている。だけど、あのモリアがそんな簡単な噓を言う? ありえない。セリナだって必ずしも本当のことを言っているとは限らない。これはモリアの罠だ。
(2番……私の裏をかこうとしているわ。全部お見通しよ。これで彼女に命令すれば、平等党の勝利よ。命令すれば……)
それでいいの?
いいに決まっている。彼女は男、男は皆悪よ。
あれ? なんで私は彼女を「彼女」と呼んでいるんだろう……
「2番……ゲームが終わるまで『ワン』を語尾につけなさい」
「あら、それでいいのかしら? もっと欲を出して、『公平党解散』『男の姿に戻りなさい』のような命令をしてもいいのに」
「うるさい、王様の命令は絶対でしょう」
「そうね、王様の命令には逆らえませんわ。レンは語尾がもっと可愛らしくなりましたわ。羨ましい限り、ふふふ」
モリアが見せたくじは1だった。
「え?」 モリアは2番じゃない?
「ちくしょう、なれないことするべきじゃなかった『にゃん』『ワン』」
「セリナはモリアさんが2番じゃないって言ってましたのに……」
「でも後半自分が2番だとは言っていませんわね。この娘、いつここまでずる賢くなったのかしら」
「マオウさんが『噓に真実を混ぜれば、敵は信じるにしても信じないにしても、絶対に噓にはまる。戦術価値が高い』と言いました」
(全員噓をついた……私は自分の思い込みで……でも当たったとしても、あんな命令じゃ……何をしているんだろう、私)
「では、私はこれから用事がありますので、次で最後としましょう。リディアさん、私に命令できるチャンスは次が最後になりますわ」
「もういい、早く終わらせて」
(もうどうでもいい、ゲームとか、モリアとか、平等党とか――私とか)
「王様誰だ!」
リディアは続ける気もなくくじを引いた。それは先ほどモリアが引いたのと同じ1の数字。
(ハズレか……神は一度しかチャンスをくれなかった。私がその一度のチャンスを棒に振った。だからもう二度と来ない)
「あら、まだ私。普段の行いがいいからかしら? ふふふ」
(ほら見て、彼女こそ選ばれしもの。私は……どうせ)
「申告ターンです。セリナは1番を持っていません。でもレン君はそれを持っています」
「もう懲りた。俺が持っているのは3番、本当だ『にゃん』『ワン』」
「私は1番を持っている」
(どうせモリアのこと、私を信じるわけ……)
「1番に命令します」
(え?)
「いいのか? 私は噓を言っているかもしれない。たとえ本当だとしても、平等党の権限はほとんど会長にある。私に命令したって……」
「信じますわ。だって、あなた本当のことを言ってますから。違うのかしら?」
「違わない」
リディアはくじの数字を見せた。
「あなたの勝ちよ。さあ、命令しなさい」
「じゃ、この電話の向こうに、本当の気持ちをぶつけなさい。あなたならできるでしょう」
「そこくらい、どうということはない」
モリアから電話を受け取り、その先には懐かしい声が。
「もしもし、株式会社キャットの理事のケティヤよ。どうなた? すみませんが、今都合が悪いのよ。あとでかけ直してくれる?」 母の声。
「切っちゃダメよ。まだ王様の命令は完了していないもの。王様の命令は……絶対よ」
私は自分でも気づかないうちに切ろうとしていた。母とそんなに話したくなかった。
「もしもし? いたずら電話かしら」
「母さん、私よ、リディア」
「リディア? そんな娘いたっけ……まあいいわ。なに? お金が欲しい? それなら秘書にかけなさい。私は忙しいのよ」
「忙しいで……どうせ男と逢引きでしょ。母さん、この時間仕事しないのは知ってた」
「だからなに? あたしの生き方に指図する気? 誰のおかげでそこまで大きく育ったと思ってるの。小娘が若いからって調子に乗るんじゃないよ。昨日の男もあんたのことばっかり聞いて嫌になるわ」
怒りは頂点に達した。これからの言葉を放ったら、もう戻れない。だけど──
「リディアさん、王様の命令は絶対よ」
彼女の言葉が私に勇気をくれた。
「クソババア」
「え? あんた、なに?」
「クソババアって言ってるの。男に相手されなくなったって娘に当たらないでよ。あなたのセンスが最悪だから、クズの男しか寄って来ないのよ」
「リディア!」
「しゃべるなババア! あなたは母として最悪よ。あなたがそれ以上子どもを作らないのは正解だわ。私のような子をこれ以上増やさないから。一日すら母に愛されない子ね」
「いい加減にしなさい! これ以上言うとあんたと縁を切──」
「切っちゃいなよ! あなたの臭いお金は一文も欲しくない。これまで私にかかったお金は全部レシート付きで振り込む。安心して、あなたと関係ない所でバイトして稼いだ金よ。これで借り貸しなし。最後にこの言葉を送るわ──あなたを最初に見てからずっと、大嫌いだったよ!」
それを言い終えると、リディアは電話を切った。
そんな彼女を見て、周囲の誰も声を出せなかった。まさかの王様ゲームがここまでなるとは、誰が想像できただろうか。一人の悪魔を除いて。
その静寂を打ち破ったのは、一つの拍手の音。
「素晴らしい、よくできましたわ。言えてるではありませんか」
「私、正しいことをしているのかな……」
「いいじゃないですか、間違っていたとしても。偽りの正しさよりも、私はそっちの方が好きよ」
(そうか……私はずっと、こんなお母さんが欲しかった。私を褒めてくれて、私を見てくれて、私に……)
「あああ……っ、うう……ひっく……」
(泣く場所をくれたお母さんが欲しかった)
気づけば、リディアはもうモリアの胸に号泣していた。
それは生まれた時よりも強く、そして喜びを込めて。
「こんなに母の愛に飢えている子を放っておけないなんて……私として甘すぎかしら」
そのリディアの泣き声を優しく宥め、まるで母親のように彼女を包み込んだ。
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