まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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序章:すべての旅は、茶番から始まる――剣も魔法もまだいらない

番外編②:神罰なき一日

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「人間として正体がバレないこと」

「騒ぎを起こさないこと」

「一日を"人間"として過ごすこと」



――これが、僕とあの悪魔が交わした"ゲーム"の三つのルール。



だけど。



「……人間って、なに?」



僕は今まで、一度も考えたことがなかった。

人間なんて、せいぜい虫と同レベルの存在だと思っていたからだ。



虫のように数が多い。

虫のように知能が低い。

虫のように寿命が短い。

虫のように弱くて、すぐ死ぬ。



「――じゃあ、虫でいいじゃん」



僕はずっと、そう思ってた。



それでも、ゲームを果たすため、

僕は"人間らしく"振る舞おうと決めた。



まずは――食事。



「やすいよ、やすいよ~! 今朝採れたばっかの野菜だよ~!」

「奥さん! 今日は魚どうっすか! エビもオマケしときますよ、へへっ、うちの嫁には内緒でね!」



活気ある市場の中、

僕の目の前に色とりどりの食材が並んでいた。



(……案外簡単じゃん。好きなものを選んで、食べるだけ)



そう思った僕は、

一番いい匂いがする焼きたてのパンにかぶりついた。



「こらぁッ! このガキ、金も払わずにうちのパンをっ! 泥棒かッ!? 躾けてやる!!」



突然、店主の男が怒鳴りながら棒を振り上げてきた。



(……金?)



聞き覚えのない単語に首を傾げる僕。



このルキエル様が貴様ごときの"焼き物"を口にしてやったことを、

むしろ無上の栄誉とでも思うべき。感謝されこそすれ

逆上するとは身の程知らず。天罰を下してくれる。



その身も~消し去ってやろうとした、そのとき――



「えいっ!」



男の股間に突然キックが炸裂した。



「……今のうちに逃げるぞ!」



誰かが僕の腕を掴み、そのまま走り出した。







「ったく……普通、パン盗んだら逃げるだろ? どういう神経してんだ、お前」



路地裏に逃げ込んだ先で、

僕を邪魔したもの――

それは、薄汚れた服を着たガキだった。。



「僕に"逃げる"という概念は存在しない」

「ははっ、なんだそれ、カッコつけすぎだろ。まるで伝説の勇者様じゃん」



勇者――最低位天使以下の存在と、

僕を一緒にするとは、失礼にも程がある。



「お前、最近来たやつだよな? 見ない顔だし。オレはダス。この辺じゃ先輩だぜ」

「"お前"じゃない。"ルキエル様"と呼べ」

「ルキエル? 名前か。もしかして、昔どっかの貴族だったり?」



……もういい。会話すら無意味だ。



あの悪魔に敗北するのが屈辱でなければ、

この町はとっくに僕が世界から消されている



僕はその場を立ち去ろうとする。



「待てって、せっかく友達になれたのに!」



思いやがるな、人間風情が。



「それよりさ、聞いた? この町に"勇者御一行様"が来てるって噂。ついでに、"天使"もいるとか……!」



――天使?



思わぬ情報に、僕の足が止まる。



勇者なんてどうでもいい。

だが、その"天使"とやら――確認しておく価値はありそうだ。



必要ならば、その場で――消す。
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