ハナキリンの恋

1.

その王子の容貌は恐ろしいほど整い、見るものの嗜虐心を掻き立てる様な深い海のように青色の瞳、
　肌は純白の雪のように白く滑らかな肌触り、
　スラッとした細身の身体の割に程よく付いた筋肉、
　枝のように折れそうな細い腰。
　そのあまりの人間離れした美貌に世の男達は彼に狂わされていく。
　アルムの街
　ガヤガヤと賑やかな街中を潜り抜け、一人少年は街外れの小屋に向かう。
　少年(今日はマリーが喜びそうな、サンザシの実だ。)
　少年は喜びで歩を進めながら、目的地の場所に着く。
　何処か古びていて、風が吹けばガタガタと屋根が軋む音がする小屋の戸を少年はノックをした。
　トントン
　少年「マリー僕だよ、リックだよ。」
　マリー「リックね、どうぞ入って。」
　リックはマリーの問で小屋の中に入っていった。
　リック「マリーこんにちは今日はサンザシの実を持ってきたよ。」
　リックはマリーにサンザシの実を渡す。
　マリー「サンザシの実！私が今欲しいものよ。ありがとうリック。」
　マリーは手探りでサンザシの実を受け取る。
　リック「マリーが喜んでくれて僕はとっても嬉しいよ。」
　マリー「リックごめんね、私が盲目なばかりにリックに薬草の材料を持ってきてもらっちゃって。」
　リック「僕は全然気にしてないよ。それよりも今日は薬草沢山売れた？」
　マリー「今日はそんなに買う人はいなかったけれど、お客さんから風邪が治ったって褒められたわ。」
　マリーは嬉しそうに口角を上げる。
　リック「それは良かった、そういえば街でこんな事があったよ。」
　リックはマリーに街にサーカス団が来ていて、色々な出し物を行なっていた事それらが今日開催されている事を知らせる。
　リック「今日サーカス団が来ているから、マリーも一緒に行こ。」
　マリー「でも、私は生まれつき眼が見えないの。行ってもつまらないと思うわ。」
　リック「大丈夫だよ。僕が案内するから。」
　サーカス団にて
　サーカス団には人々が賑わい、ガヤガヤと人がごった返していた。
　マリー「人の気配が多いわね。」
　人混みに紛れながら、リックはマリーの手を繋ぐ。
　リック「僕の手をしっかりと掴んでね。」
　マスク越しにリックはマリーに言う。
二人はサーカス団の中の出し物を沢山堪能し、ベンチでサーカス団で作られた料理を食べている。
　ジュワ～と肉の焼ける音がリックの耳に入る。
　マリー「この香りはサトパね！美味しそう。」
　リック「食べてみる？」
　マリー「良いの？」
　リック「うん、だって今日はマリーの誕生日だよ。たまには贅沢しなきゃ！」
　二人は手にサトパを持って、ベンチの上に座りサトパを食べている。
　リック「この料理は中々美味しいね。」
　リックはサトパを一口口の中に頬張り、食べながらマリーに話し掛ける。
　マリー「うん、所で私との生活には慣れた？」
　リックはうんと頷いた。」
　マリー「良かった、リックがここでの生活に馴染んでくれてそういえばずっと気になっていたんだけれども貴方は何処から来たの？」
　リックは考え込むとマリーにこう言う。
　リック「僕は、その言えないんだ。」
　マリー「それはどうして？」
　リック「言ったら君はきっと僕から離れてしまう。」
　リックは寂しげに憂いをおびた表情でマリーを見つめる。
　マリー「リック私は貴方から決して離れないわ。」
　マリーはリックの手を握りながら、リックに言う。
　リックはマリーの一言に一瞬心が暖かくなるのを感じたが、心の何処かでは自分の罪を知ってしまったらこの娘は自分から離れてしまうのではないかと不安で仕方なかった。
　係員「さあ、どうぞ見てらっしゃい！世にも不思議な生き物達が見られますよ！」
　リック「不思議な生き物？マリーちょっと見てみない？」
　マリー「良いけど。」
　二人は列に並ぶ。