【短編集】世界が見た恋の話

幽美 有明

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カメラが写す景色~キミと視るセカイの在り方~

桜並木と校舎と女生徒

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 春に咲く桜。日本各地で咲く時期が違う桜が、ちょうど満開に咲き誇る日に。入学式を迎えることができるのはどれほどの確率だろう。しかもそれが桜並木のある大きな学校ならばなおさらだ。
 などと御託を並べてみたはいいが、その光景が今目の前にある。玄関の前には入学式の板が立てかけられ在校生は皆返されてしまった。体育館からは微かに音が漏れ儀越えてくる。
 そよ風に吹かれて、桜の葉が擦れあいカサカサと音が鳴る。風に乗った桜の花びらが、空に舞い上がっては墜ちていく。
 桜並木と校舎、その景色を今俺はカメラに写している。

 数枚、アングルを変えて写真を撮っている間に入学式が終わったらしい。玄関から続々と新入生と親が出てきた。
 まぶしい笑顔の人の群れが居なくなることを静かに待った。写真を撮るなら人が居ない時が一番綺麗だからだ。
 もう人はいなくなったと判断し、改めてカメラを持って写真を撮ろうとした。
 カメラを顔の前で構え、ファインダーを覗き込んだ。そのには桜並木と校舎が写っているはずだった。
 なのにその中に、女生徒が入っていた。俺は人が写真に写りこむのが嫌いだからだ。ただ美しい景色だけを取りたいんだ。いつもならこの瞬間すぐに写真を撮ることを辞める。

 だが腕が動かなかった。シャッターから指が離れなかった。それどころか、シャッターを切る瞬間を今か今かと、待ち望むように。指に力が入る。ピントが桜から女生徒に移る。
 女生徒が花弁を掴もうと手を空に向かって伸ばした時、
『カシャ』
 シャッターを切った。
 初めて俺は、人の写った写真を保存した。
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