ミッション――捜査1課、第9の男 危機そして死闘へ――

TOZO

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第4話 もう1つの宿命(5)

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        6 死闘に果てに……

 厳鬼が銃を片手に、車のルーフの上で仁王立ちしていた!
「出て来なさい」銃を足元に向けて叫んだ。そして奴は、こんな所で襲撃に遭うとは思いも寄らなかっただろうとほくそ笑む。つまり奴にすれば、金光が訪れるルートは事前に調査済み、先回りして罠を仕掛けることぐらい造作もないことだった。
 一方、金光たちは腹をくくったようだ。大人しく車から降りるしかないと思ったに違いない、無抵抗なまま外に出て来た。だが、厳鬼と子分たち5人が待ち構えているのだから、ただちに剛と岩城の銃を取り上げたのは言うまでもなかった。そのため金光の部下は全くの丸腰になってしまった。
「まあ、金光さん、初めまして」続いて厳鬼が、白々しい挨拶で迎える。
 それに対して金光は、奴と関わりたくないのだろう。
「あんた、厳鬼とかいう……わしに何の用だ?」と伏し目がちに訊いてきた。
 するとすぐに厳鬼は、全てお見通しだという表情で見下し、ゆっくりと回りを歩き始めた。
「いけませんねえ、私と貴方は同じ穴のむじな。シーッ、シーッ、そうでした、世間には知られてはいない。貴方は真っ当な事業家でしたね」と勿体もったいぶる言い回しで返答をした。
 それには苦虫を噛み潰したような顔で反応する金光。そんな戯言を聞かせられたところで何の意味もないと言いたそうだ。
 確かに、厳鬼にしてもそれが無意味なことは重々承知していた。されど、己が優位に立っていると思える甘美な優越感に浸るため、奴は敢えて相手を甚振るのだ。何よりこの族はサディスティックな悪党でもあった。
「だから、どうする気なんだ?」とうとう金光はごうを煮やし気味に、荒ぶる態度を示した。
 そこで奴は、やっと本性を表す。「貴方の裏仕事をいただこうと思いまして」と唐突な乗っ取り宣言を金光に伝えたのだ。
「な、何だと! 誰がきさまなんかに!」当然ながら、金光は激昂を顕にして拒む。とはいえ、厳鬼の方もそれぐらいで退く訳がなく、
「ふふ、なるほど。そう言うと思いました。さぁて、貴方をどう待遇するか?」頷きながら思案している風に腕を組み「考えるために私のネグラに招待しましょうかね」と語った。
「むむっ、つまりわしを拉致する気だな……」金光にとって最悪の危機か。流石にこの状況で逆らうことは不可能だ。命すら取られてもおかしくないのだから。
 厳鬼は口元を緩ませ、「その通り」と言った。
 続いて奴は、徐に剛と岩城の方へと近づいていく。この取巻き2人に特別な用があったからだ。いぶかしみながらアゴを上げて薄目で彼らを軽視したなら、確信して言い放った。
「おい、お前たち、もうばれているのよ。どいつがあずまだ?」と。
 途端に男たちは、動揺するような素振りを見せた。全く寝耳に水だったのか、
「違う。俺は違うよ!」「とんでもない、俺も違う」とお互い顔を見合わせ懸命に否定し始める。
 けれど、そうした彼らの言い分など厳鬼は気にも留めない。
「まあいいわ、どちらにしてもお前たちに用はないから、2人ともども死んでもらう!」と言うなり、素早く銃を取り出した。結局、手っ取り早く殺るつもりだ。
 こうなると、男たちはさらなる焦りを見せた。
「よせ、待て、待ってくれ!」もう夢中で、命乞いを続けている。……が、容赦など一切持ち合わせていない厳鬼には通用しないのだ。
 奴は、眉も動かさず怯える男たちに銃を向けた。次いで先ずは剛に狙いを定め、トリガーに指をかける。さあ、もう逃げ場はない、すぐにでも銃口から火が噴くぞ!
 そして厳鬼は、一気に撃った?…… 
 うっ? ところが奴は咄嗟に堪える。引き金を引こうとした直後に、発砲を躊躇った。と言うのも、向かいのビルに現れた不可解な影に目を奪われたせいだ。
……およそ予想だにしない、前方のビル非常階段、3階付近の手擦りから姿の一端を示した……そう、あれはまさに――東!――彼の勇姿が視界に入ったのだ!
 むぐぐぅ? そんな馬鹿なぁー。厳鬼は焦りつつそう思った。唯々己の目を疑う。それでも、現に東らしき人物が目前にいるのは紛れもない事実! 加えて「その2人は無関係だ、私はここにいるぞ」と言う彼の声すら聞こえてきた。
 ええい、こうなればもう誰であろうと構わない、敵らしき者はハチの巣にしてやる!
「撃てー!?」厳鬼は子分に向かって叫んだ。
 忽ち――銃声とともに弾ける金属音が雑多に響く!――奴らの弾が手擦りに被弾した。ただ、残念ながら彼には命中しないようだ。逆に、素早く壁に身を隠され反撃の銃弾が飛んできた。そのうえ、いつの間にか他の警官たちまでも、前方のビルに姿を現し、彼に加勢して同じく弾丸を浴びせてくる。
 どうやら瞬く間に不利な状況になってしまったよう。ならば厳鬼は、すぐさま金光を警官の弾除けとして抱え込む。これで多少の時間も稼げるというもの。
……後は、次なる策謀を、始めるだけと思案するのであった。

 するとどうだろう、さっきまで弱腰だった男、剛がとうとう動きだした。まるで別人のように、悪への燃えたぎる闘志を全身に漲らせ、近くの子分へ飛びかかったのだ。腹に蹴りを入れ、〈うぐっ!?〉呻く男の腕から銃を奪い取り、4発の銃声音を鳴らして残り4人の銃を撃ち落した!
 その結果、元より呆気に取られた様子の子分たち。……としても、剛の攻めはまだ終わらない、奴らに連続技を披露した。打撃音とともに右回し蹴りを食らわせたなら、回転しながらかかと蹴り、左右パンチに肘撃ちを見舞った。あっと言う間に4人の子分を叩きのめし、銃撃戦を制したのだ。
 即ち自明のことだが、これが本当の彼の姿だ! 強さは秀でていた。それに比べてもう1人の部下、岩城の方は口をあんぐりと開けたまま車の隅に身を伏せているというていたらくぶり。……この族は放っておいても害がなさそうだ。
 ところがその時! 何か異変を感じ取る。大型車のエンジンが吹き上がる音を聞いたせいだ。
……誰ががトラックに乗り込んでエンジンを始動させた? もしや……厳鬼? 金光もいない。少し目を離した隙に消えていたではないか。
 次にアクセルを踏む込む排気音がした。
 仕舞った! 奴はトラックの中だ。大型車で逃げようとしているに相違ない。……であれば、むむっ、逃してなるものかー! そう思った途端、無意識のうちに剛は、トラックへ向かって走り出した。目の前を猛スピードで離れていこうとしている車両のドアを目掛けて、必死に突っ走ったのだ!
 だが、車はどんどん速度を増していくばかり。これでは、ついていけない、差が開く一方だ! やはり人間の足では、到底無理なのか?……いいや、ここで諦める訳には、いかない。彼は不可能であろうとも一心不乱に走った! 渾身の走りで、後少し、もう少しで、助手席のドアだ! そう見極めつつ、最後に有りっ丈の力を足に込めた――。
 〈たあー!?〉


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