ウンメイのツガイ探し 〜相性100%なのに第一印象が最悪でした〜

陽凪 優子

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1話

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 幼い頃、とある一人のアルファが一人のオメガを探して旅に出る小説を読んだ。
 この世にはアルファと運命で繋がっているオメガが必ず存在するらしい。日本にいるかもしれないし、地球の裏側にいるかもしれない。世界のどこかに存在している運命のオメガと生きている間に出会えることは奇跡らしく、ほとんどが運命の番と巡り合うことなく生涯を終える。
 小説の主人公であるアルファは何年も世界中を探し回った。雨の日も雪の日も日光が照りつける暑い日も1日も休まず探し続けた。世界各地に散らばるヒントを手がかりに運命のオメガと巡り会えたという物語である。
 新は幼いながらこの物語を読み思った。
 
 ボクも運命のオメガと巡り合いたい、と。
 
 
 *
 
 
 
「アルファだからって調子に乗るんじゃないわよ!」
 女の怒声とともに周りの客は騒めき新を見た。あらたの髪は風呂上がりのように濡れ、滴を垂らした。
 女が手に持っていた水の入ったコップを新の顔を目がけてぶちまけたのだ。レストランの客や従業員は一連の出来事に唖然し視線を新に向ける。
 女は高級ブランドバックを手に取ると、その場を足早に立ち去った。
「……お客様。大丈夫ですか?」
「……大丈夫……じゃないかも」
「よろしかったらこちら使って下さい」
 スタッフは新にタオルを手渡した。新はそのタオルで濡れた顔や髪、服を拭いていく。
 またフラれてしまった。付き合っていないため、フラれたというより始まる前に終わってしまったといったほうがしっくりくるだろう。原因は女が性別を偽っていたことがバレたことだ。
 この世には性別の他に三つの性がある。アルファは医師や弁護士、経営者などいわば成功者と呼ばれる者が多い性だ。生まれながら成功する運命が決められているが、人口はとても少ない。新もその一人だ。
 続いてベータは簡単に言えば凡人だ。この世で一番多い性である。
 最後はオメガと呼ばれる性だ。オメガはとても希少でアルファより人口が少ないが、アルファのように人々が羨まむような存在ではない。理由としてオメガの特異体質が原因であると言われている。男女関係なく身体の中には子宮があり、子供が産める。三ヶ月に一度、発情期と呼ばれる時期が来る。この時期がとても厄介で、オメガ特有のフェロモンを出す。このフェロモンはベータでは感じとることができない。できるのはアルファのみだ。オメガは自分の意思とは関係なく発情期になるとアルファを引き寄せるフェロモンを分泌する。そのフェロモンによってアルファは自我を失いオメガを襲う。オメガの強姦事件など多数あるが、ニュースでは報道されない。それほどオメガはぞんざいな扱いをされてきた。
 現在はオメガを守る法律もでき、オメガは守られるようになったが、未だに差別は多い。
 オメガの差別は凄いものだ。政治家は性別の差別化を減らすと何百回、何万回と言っているが、所詮は言葉だけだ。昔ほどは良くなったものの、未だに改善しない性差別。教育関係でもアルファとオメガを同じ教室で勉強させるのはどうかという問題も出ているくらいだ。そう簡単にはなくならないだろう。
 しかし、オメガにも利点がある。オメガは優秀なアルファと番になれる確率が高い。現在はアルファを増やすためという目的もあるが、オメガと出会いたいアルファが増えてきている。アルファとオメガの限定婚活パーティーが行われているほど需要が高まっている。理由として、オメガとの間に産まれた子供はほぼ100%優秀な遺伝子を受け継ぐアルファが誕生するからだ。
 それをいいように思わない者もいる。人口の8割をしめているベータだ。アルファはベータとも結婚できるが、優秀な遺伝子を持ったアルファが産まれる確率は10%以下。ほとんどがベータとして誕生する。そのため、ベータと結婚したがるアルファはあまりいない。
 悪知恵が働くベータはオメガのフェロモンの香りがする香水をつけて嘘をつきアルファに近寄ってくる。この詐欺紛いな行為は頻発しており、結婚した後に相手がベータだったと気づくパターンも多く、訴訟問題にまで発展している。今一番多い社会問題となっている。
 新に水をかけた女もオメガフェロモンの香水つけ、新を騙そうとしていた。鼻のいい新はすぐに気づいた。
「そんな香水程度で僕を騙すつもりだったの? 悪いけど僕、本物のオメガにしか興味ないから。あとその香水鼻がへし曲がるくらいクサイよ」
 そう言ったら水をかけられてしまった。
 あの詐欺女、警察に突き出せばよかった。
 新はびっしょりと濡れた25万のジャケットをタオルで拭きながら思った。
 
 五十嵐新いがらしあらたは名の知れた小説家である。顔出しする前からベストセラー本も何冊も出している人気作家であったが、一度だけ編集長の 阿部山潤あべやまじゅんの指示でメディアに出たことがあった。新がメディアに出た途端大反響を呼び、SNSでトレンド入りするほどだった。その影響もあり、本はバカ売れ。今では新作を出せばすぐに書店から本が消え売り切れるほどだ。
 新は純文学を専門としているが、趣味で官能小説も書いている。こっちも中々の売れ行きである。
 新が住んでいるのは和風住宅の一軒屋だ。以前は高級マンションに住んでいた。古民家に住む主人公の小説を書いていたがイメージが掴めず純和風住宅に引越した。都内から少し外れているせいか静かであり、雑音に気を取られず小説が書ける。縁側で昼寝だってし放題だ。あまりの居心地の良さからそのまま住みついている。
 この家は以前誰かが住んでいたそうだが、家主が亡くなったそうで売りに出されていた。
 前の住人の住んでいた形跡が所々残っている。中でも印象的だったのが、柱に刻まれていた横線だ。何本も刻まれている横線から推測すると身長でも測っていたのだろう。線の横には「あおい」とひらがなで書かれていた。
 家族と疎遠である新にとって、この家は温かみのある家だと感じた。
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