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特別な人
特別な人 第49話
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「え、仲良かったの……?」
僕の返答に戸惑いを隠せない朋喜は、睨み合いながら言い合う二人に視線を向ける。まるで生まれる前から憎み合ってきた敵同士みたいな姿を見たら、まぁ、疑いたくなるよね。
僕はそれに慶史と瑛大に聞こえないように声を潜めて朋喜に教えてあげた。こうなってしまった経緯を。
「最初は初等部卒業前だったかな? 僕と慶史がクライストに外部受験するって知った時、『なんで教えてくれなかったんだ!』って瑛大凄く怒ったんだよね」
それはちょうど3年前の今頃だったはず。外部受験のために二人で図書室で勉強をしてたら、何処からかそれを聞きつけた瑛大が凄い剣幕で怒鳴りこんできた。
本当なら3人そろってゼウス学園の中等部に進学する予定だったから、僕達が黙って外部受験に切り替えてたって知った瑛大が怒るのは当然。そして、その理由を問いただされるのも、まぁ当然だった。
なんで急に外部受験にしたんだって詰め寄ってきた瑛大に、僕は何も答えられずに言葉を詰まらせた。あの時慶史は家で色々あって、家を出るために全寮制のクライストへの進学を勧めたのは他でもなく僕本人だから理由は知ってた。でも、瑛大に説明できなかったのはその理由が慶史の心の傷に深く関係していたから。
理由を話さない僕に苛立った瑛大は更に大きな声で僕達に詰め寄ってきた。そしてその後、理由を言いたくない慶史は笑顔で嘘を吐いた。その嘘がどういったものだったかは正直覚えてない。でも、その嘘が瑛大を拒絶したってことは今でもはっきり覚えてる。
(あの時から瑛大、僕達の事避け始めたんだよね……)
それでも、瑛大は僕達の友情を信じて直ぐに外部受験に切り替えた。一緒に受験勉強もしたし、合格祈願にお参りにも行った。
だから僕は、僕達が外部受験をするって黙ってた事を瑛大が許してくれたって思ってた。けど、それが間違いだって知ったのは、クライスト学園に入学した後の事。
初等部の頃から頑張ってたバスケ部に入部した瑛大は次第に僕達じゃなくチームメイトと一緒に行動するようになって、入学式から一か月後、もう僕達に関わらないって言われた。
その時、はっきりと理由は言われなかった。ただ突然、距離を取られた。
理由が分からなくて凄く落ち込んだし、悲しかった。でも瑛大を問い詰めなかったのは、虎君からのアドバイス。瑛大には瑛大の考えがあるからあいつの事信じて暫く放っておいてやれ。って。
瑛大を傷つけたなら謝りたいって思ってたけど、それも虎君に止められたから僕は瑛大が話してくれる時が来るのをずっと待ってる。今も。
「葵君?」
話始めて直ぐ黙り込んだ僕に朋喜が心配そうに声を掛けてくる。その声に僕は我に返って、ごめんごめんって苦笑い。
朋喜には僕達が外部受験をした理由を伏せて経緯を話して、それまでは本当に仲良しだったんだよって笑った。慶史と瑛大は何をするのも一緒だったんだから。って。
「そんなに? 全然そう見えないよ……?」
「はは。だよね」
今目の前で繰り広げられてる光景に、昔の二人を傍で見てなかったら僕も信じられないって思う気がするって笑った。
でも、二人は本当に仲が良かった。僕と茂斗、慶史と瑛大でいつも一緒にいてたから……。
「そうなんだ……」
「うん。僕は昔みたいに仲良くしたいんだけどね」
本当に信じられないって感じで二人に視線を向ける朋喜。
瑛大との友情がこのまま終わってしまわないか不安を覚えながらも、僕はそろそろお弁当を食べようって心配そうな朋喜に笑いかけた。
「慶史、瑛大。昼休み、終わっちゃうよ?」
お弁当を食べずに午後の授業を受ける気?
いがみ合う二人に言葉をかければ、慶史は最後の一睨みを瑛大に向けるとそのまま背を向け椅子に座った。その表情は『可愛い女の子』と言うには程遠い。
そしてそんな慶史を見下す様に睨みつけているのは他でもなく瑛大で、僕はその名前を遠慮がちに呼んでみた。よかったら一緒に食べる? って。
当然慶史からは『何言ってるの?!』って視線を貰うんだけど、関係修復を望む僕はその視線に気づかないふりをした。
「断る。飯が不味くなりそうだしな」
「! そっか……」
はっきりと『嫌だ』って意思表示されたら流石に傷つく。
まだダメか……って力なく笑う僕に、慶史がまだ瑛大に怒りをぶつけるんだけど、瑛大は慶史を無視して僕の名前を呼んできた。
「! 何?」
「週末、虎兄の家に泊まることになったから」
瑛大から話しかけられた! って悲しかった気持ちがちょっとだけ浮上する。
自分でも分かるぐらい明るい声で「そうなの?」って尋ね返したら、瑛大はちょっとびっくりした顔をして見せた。
「瑛大?」
「……なんでもない。虎兄から連絡来たんだよ。『手伝え』って」
どうかした? って聞いたら、どうもしてないって顔を背ける瑛大。
そのまま踵を返して自分の席に戻る瑛大だけど、僕は週末が楽しみだって浮かれてしまう。
「ねぇ、葵君。結城君って幼馴染のお兄さんの弟? でも苗字違うよね……?」
上機嫌でお弁当を広げる僕に、どういう関係? って興味を示す朋喜。ご家庭が複雑なの? って遠慮がちだけど好奇心には勝てないみたい。
それに僕は笑ってそれを否定する。兄弟じゃないよ。って。
「瑛大は虎君の従兄弟。虎君のお母さんと瑛大のお父さんが姉弟なんだよ」
「そうなんだ? でも、それを聞いてやっと納得できた!」
「? 何が?」
「慶史君と結城君が仲悪い理由。葵君の幼馴染のお兄さんの従兄弟なら、納得!」
虎君と慶史があまり仲が良くないことは朋喜もよく知ってる事。だから、こういう納得の仕方をするのも理解はできる。でも……、
(慶史の顔、写真撮ったら怒るかな?)
突然出てきた虎君の名前に慶史の表情は何とも形容しがたいものになっていて、僕は不謹慎ながらも笑ってしまった。
僕の返答に戸惑いを隠せない朋喜は、睨み合いながら言い合う二人に視線を向ける。まるで生まれる前から憎み合ってきた敵同士みたいな姿を見たら、まぁ、疑いたくなるよね。
僕はそれに慶史と瑛大に聞こえないように声を潜めて朋喜に教えてあげた。こうなってしまった経緯を。
「最初は初等部卒業前だったかな? 僕と慶史がクライストに外部受験するって知った時、『なんで教えてくれなかったんだ!』って瑛大凄く怒ったんだよね」
それはちょうど3年前の今頃だったはず。外部受験のために二人で図書室で勉強をしてたら、何処からかそれを聞きつけた瑛大が凄い剣幕で怒鳴りこんできた。
本当なら3人そろってゼウス学園の中等部に進学する予定だったから、僕達が黙って外部受験に切り替えてたって知った瑛大が怒るのは当然。そして、その理由を問いただされるのも、まぁ当然だった。
なんで急に外部受験にしたんだって詰め寄ってきた瑛大に、僕は何も答えられずに言葉を詰まらせた。あの時慶史は家で色々あって、家を出るために全寮制のクライストへの進学を勧めたのは他でもなく僕本人だから理由は知ってた。でも、瑛大に説明できなかったのはその理由が慶史の心の傷に深く関係していたから。
理由を話さない僕に苛立った瑛大は更に大きな声で僕達に詰め寄ってきた。そしてその後、理由を言いたくない慶史は笑顔で嘘を吐いた。その嘘がどういったものだったかは正直覚えてない。でも、その嘘が瑛大を拒絶したってことは今でもはっきり覚えてる。
(あの時から瑛大、僕達の事避け始めたんだよね……)
それでも、瑛大は僕達の友情を信じて直ぐに外部受験に切り替えた。一緒に受験勉強もしたし、合格祈願にお参りにも行った。
だから僕は、僕達が外部受験をするって黙ってた事を瑛大が許してくれたって思ってた。けど、それが間違いだって知ったのは、クライスト学園に入学した後の事。
初等部の頃から頑張ってたバスケ部に入部した瑛大は次第に僕達じゃなくチームメイトと一緒に行動するようになって、入学式から一か月後、もう僕達に関わらないって言われた。
その時、はっきりと理由は言われなかった。ただ突然、距離を取られた。
理由が分からなくて凄く落ち込んだし、悲しかった。でも瑛大を問い詰めなかったのは、虎君からのアドバイス。瑛大には瑛大の考えがあるからあいつの事信じて暫く放っておいてやれ。って。
瑛大を傷つけたなら謝りたいって思ってたけど、それも虎君に止められたから僕は瑛大が話してくれる時が来るのをずっと待ってる。今も。
「葵君?」
話始めて直ぐ黙り込んだ僕に朋喜が心配そうに声を掛けてくる。その声に僕は我に返って、ごめんごめんって苦笑い。
朋喜には僕達が外部受験をした理由を伏せて経緯を話して、それまでは本当に仲良しだったんだよって笑った。慶史と瑛大は何をするのも一緒だったんだから。って。
「そんなに? 全然そう見えないよ……?」
「はは。だよね」
今目の前で繰り広げられてる光景に、昔の二人を傍で見てなかったら僕も信じられないって思う気がするって笑った。
でも、二人は本当に仲が良かった。僕と茂斗、慶史と瑛大でいつも一緒にいてたから……。
「そうなんだ……」
「うん。僕は昔みたいに仲良くしたいんだけどね」
本当に信じられないって感じで二人に視線を向ける朋喜。
瑛大との友情がこのまま終わってしまわないか不安を覚えながらも、僕はそろそろお弁当を食べようって心配そうな朋喜に笑いかけた。
「慶史、瑛大。昼休み、終わっちゃうよ?」
お弁当を食べずに午後の授業を受ける気?
いがみ合う二人に言葉をかければ、慶史は最後の一睨みを瑛大に向けるとそのまま背を向け椅子に座った。その表情は『可愛い女の子』と言うには程遠い。
そしてそんな慶史を見下す様に睨みつけているのは他でもなく瑛大で、僕はその名前を遠慮がちに呼んでみた。よかったら一緒に食べる? って。
当然慶史からは『何言ってるの?!』って視線を貰うんだけど、関係修復を望む僕はその視線に気づかないふりをした。
「断る。飯が不味くなりそうだしな」
「! そっか……」
はっきりと『嫌だ』って意思表示されたら流石に傷つく。
まだダメか……って力なく笑う僕に、慶史がまだ瑛大に怒りをぶつけるんだけど、瑛大は慶史を無視して僕の名前を呼んできた。
「! 何?」
「週末、虎兄の家に泊まることになったから」
瑛大から話しかけられた! って悲しかった気持ちがちょっとだけ浮上する。
自分でも分かるぐらい明るい声で「そうなの?」って尋ね返したら、瑛大はちょっとびっくりした顔をして見せた。
「瑛大?」
「……なんでもない。虎兄から連絡来たんだよ。『手伝え』って」
どうかした? って聞いたら、どうもしてないって顔を背ける瑛大。
そのまま踵を返して自分の席に戻る瑛大だけど、僕は週末が楽しみだって浮かれてしまう。
「ねぇ、葵君。結城君って幼馴染のお兄さんの弟? でも苗字違うよね……?」
上機嫌でお弁当を広げる僕に、どういう関係? って興味を示す朋喜。ご家庭が複雑なの? って遠慮がちだけど好奇心には勝てないみたい。
それに僕は笑ってそれを否定する。兄弟じゃないよ。って。
「瑛大は虎君の従兄弟。虎君のお母さんと瑛大のお父さんが姉弟なんだよ」
「そうなんだ? でも、それを聞いてやっと納得できた!」
「? 何が?」
「慶史君と結城君が仲悪い理由。葵君の幼馴染のお兄さんの従兄弟なら、納得!」
虎君と慶史があまり仲が良くないことは朋喜もよく知ってる事。だから、こういう納得の仕方をするのも理解はできる。でも……、
(慶史の顔、写真撮ったら怒るかな?)
突然出てきた虎君の名前に慶史の表情は何とも形容しがたいものになっていて、僕は不謹慎ながらも笑ってしまった。
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