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特別な人
特別な人 第151話
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終業式が終わって今から始まるのは冬休み。待ちに待った2週間以上もある連休に、クラスのみんなは大喜びで休み中の予定を喋っていた。
夏休みと違ってクリスマスや年越し等イベントがたった2週間の中に詰まっている冬休みは、この後市内で行われる三校合同のクリスマスパーティーが終わったらそのまま実家に帰るという人が大多数だ。
だから、週末のクリスマスにかけて寮でパーティーをすると言っていた慶史達と数名を除いて寮には人が居なくなるらしいから、悠栖はやりたい放題だと悪い顔をしていた。
「そっか。朋喜も今回は家に帰らないんだ?」
正門前で忘れ物を取りに一度寮に戻った慶史と悠栖を待ちながら、この冬休みは実家に帰らないと言った朋喜に話を振る僕。
朋喜は僕の質問に、流石にね。と苦笑いを返してきた。
「うちは本家だから遅くともお正月には結婚の報告に来るだろうし、諦めるって決めたけどやっぱりまだ好きだし、二人の幸せそうな姿とか見たくないしね」
力無く笑う朋喜は、冬休みに家に帰らないなんて初めてだから連絡をいれた時に母親から『何かあったのか』としつこく聞かれたらしい。
僕は遠慮がちに本当のことを話したのかと尋ねてみる。すると「まさか」と笑われた。『好きな人が従姉妹のお姉さんと結婚するから』なんて理由は口が裂けても言えないよ。と。
「そ、うだよね……。言えないよね……」
「うん。言ったら幸せ真っ只中の二人は気にするだろうし、僕も余計に惨めになるし」
同情されたくない。憐れまれたくない。
そう言って笑う朋喜は、この恋心を隠したことは一度もなかったけれど、でも誰も本気だと思ってなかったからって言う。
朋喜の家の人達は、朋喜の『想い』を『憧れ』だと勘違いしているらしい。だから、きっと本当のことを告げても『大好きなお兄ちゃんを取られて拗ねているだけだ』と思われるだけだろうことは想像できる。って。
笑顔を絶やさない朋喜は、「だから言わなくて良いの」と僕を見る。僕は、うまく笑い返せてるかな……。
「でも本当、慶史君のおかげで助かった。自分で決めたことだけど、やっぱりお正月に寮に一人きりとか寂しいし!」
「! そうだよね」
「うん。……まぁ慶史君からは『静かな時間を邪魔される』って邪険にされちゃったけど、そこは我慢してもらう」
極力怒らせないように頑張ると言う朋喜の言葉に、僕が返すのは苦笑い。
寮の方が居心地が良いとほとんど家に帰らない生徒ですら、実家に帰省する年末年始。でも、慶史はその年末年始にすら実家に帰ることはない。慶史は、寮に一人だけになっても絶対に実家に帰ろうとはしなかった。
特別休暇の間は寮を閉めたい管理人さんに頼み込んでまで寮に残っていた慶史に、周りは勝手に憶測を広げていろんな噂を口にしていた。でも、それが3年も続けば当たり前のことになっていて、今では慶史が寮にいるのは当然のことになっていたから、僕はそれがせめてもの救いだと思う。
朋喜は、今回それに救われたと笑っている。
僕は朋喜の笑顔にほっぺたの筋肉を持ち上げて笑顔を作って笑い返しながらも、家に帰ることのできない慶史が今年は一人で年を越さなくてすんでよかったと思った……。
「……葵君は頑張ってね?」
「! うん。信じてもらえるように頑張って伝えるつもり」
想いに応えて欲しい。なんて、わがままは言わない。でも、想いを認めて欲しいとは願ってしまう。
「ちゃんと自分が納得するまで認めたくないし」
「そうだね。葵君には僕の分まで頑張ってもらわないと!」
そしてできれば僕の分まで幸せになってね。
そう言って笑う朋喜に僕は苦笑いを濃くして、自分の分の幸せは自分のためにとっておいてよって返してしまう。
今はまだ無理かもしれないけど、朋喜もいつかまた別の恋をするだろう。その時のために『朋喜の幸せ』はとっておいて欲しい。
「葵君って本当、真面目で可愛いよね。そんなに真面目だと、悪い人に騙されちゃうよ?」
「え? なんで?」
不幸を装って人を騙そうとする人は山ほどいるから気を付けてと言われ、僕は反応を間違えたのかと焦ってしまう。
おろおろする僕と、そんな僕を見て笑っている朋喜。
するとそこにようやく慶史と悠栖が戻ってきた。
2人の姿に僕が話題を変えられると喜んだのも束の間、僕達を見つけるなり慶史はその綺麗な瞳をスッと細めて睨んできた。
(あ、慶史、怒ってる……?)
「朋喜、また葵のこと苛めてるの?」
「! 苛められてないよ!?」
「酷いなぁ。僕、最近慶史君に怒られてばっかりな気がするよ?」
慶史が睨んでいたのはどうやら朋喜だけのようで、僕が朋喜に苛められて困っていると勘違いしたみたい。
怒気を含んだ声に僕が止めに入るも、朋喜は苦笑しながらも傷ついた顔をしていて胸がチクッと痛んだ。
「なんか、マモも大変だな……。狂犬みたいな保護者が2人もいて……」
「ちょっと悠栖、聞こえてるよ」
喧嘩をするわけじゃないけどあまり良い雰囲気じゃない慶史と朋喜にどうしたら良いか戸惑っていたら、悠栖は放っておいていいぞと僕の肩を叩いた。僕に好きな人ができて機嫌が悪いだけだから。って。
すると慶史は悠栖のことも睨み付けてきて、そのらしくない様子に流石に心配になってしまう。
「慶史、どうしたの? 最近ずっとイライラしてるよね……?」
「! イライラなんてしてないっ!」
「嘘つけ。ここ一週間、明らかに『素行』の悪さが増してるだろうが。昨日も一体何人部屋に連れこーーー」
「それ以上喋ったらどうなるか分かってる?」
あからさまな嘘をつく慶史に悠栖は呆れたと言いたげに息を吐く。
でも、慶史はそんな悠栖の言葉を遮るように悠栖の頭を鷲掴むと、僕の目から見ても分かるほどその手に力を籠めて悠栖の頭を締め上げた。
夏休みと違ってクリスマスや年越し等イベントがたった2週間の中に詰まっている冬休みは、この後市内で行われる三校合同のクリスマスパーティーが終わったらそのまま実家に帰るという人が大多数だ。
だから、週末のクリスマスにかけて寮でパーティーをすると言っていた慶史達と数名を除いて寮には人が居なくなるらしいから、悠栖はやりたい放題だと悪い顔をしていた。
「そっか。朋喜も今回は家に帰らないんだ?」
正門前で忘れ物を取りに一度寮に戻った慶史と悠栖を待ちながら、この冬休みは実家に帰らないと言った朋喜に話を振る僕。
朋喜は僕の質問に、流石にね。と苦笑いを返してきた。
「うちは本家だから遅くともお正月には結婚の報告に来るだろうし、諦めるって決めたけどやっぱりまだ好きだし、二人の幸せそうな姿とか見たくないしね」
力無く笑う朋喜は、冬休みに家に帰らないなんて初めてだから連絡をいれた時に母親から『何かあったのか』としつこく聞かれたらしい。
僕は遠慮がちに本当のことを話したのかと尋ねてみる。すると「まさか」と笑われた。『好きな人が従姉妹のお姉さんと結婚するから』なんて理由は口が裂けても言えないよ。と。
「そ、うだよね……。言えないよね……」
「うん。言ったら幸せ真っ只中の二人は気にするだろうし、僕も余計に惨めになるし」
同情されたくない。憐れまれたくない。
そう言って笑う朋喜は、この恋心を隠したことは一度もなかったけれど、でも誰も本気だと思ってなかったからって言う。
朋喜の家の人達は、朋喜の『想い』を『憧れ』だと勘違いしているらしい。だから、きっと本当のことを告げても『大好きなお兄ちゃんを取られて拗ねているだけだ』と思われるだけだろうことは想像できる。って。
笑顔を絶やさない朋喜は、「だから言わなくて良いの」と僕を見る。僕は、うまく笑い返せてるかな……。
「でも本当、慶史君のおかげで助かった。自分で決めたことだけど、やっぱりお正月に寮に一人きりとか寂しいし!」
「! そうだよね」
「うん。……まぁ慶史君からは『静かな時間を邪魔される』って邪険にされちゃったけど、そこは我慢してもらう」
極力怒らせないように頑張ると言う朋喜の言葉に、僕が返すのは苦笑い。
寮の方が居心地が良いとほとんど家に帰らない生徒ですら、実家に帰省する年末年始。でも、慶史はその年末年始にすら実家に帰ることはない。慶史は、寮に一人だけになっても絶対に実家に帰ろうとはしなかった。
特別休暇の間は寮を閉めたい管理人さんに頼み込んでまで寮に残っていた慶史に、周りは勝手に憶測を広げていろんな噂を口にしていた。でも、それが3年も続けば当たり前のことになっていて、今では慶史が寮にいるのは当然のことになっていたから、僕はそれがせめてもの救いだと思う。
朋喜は、今回それに救われたと笑っている。
僕は朋喜の笑顔にほっぺたの筋肉を持ち上げて笑顔を作って笑い返しながらも、家に帰ることのできない慶史が今年は一人で年を越さなくてすんでよかったと思った……。
「……葵君は頑張ってね?」
「! うん。信じてもらえるように頑張って伝えるつもり」
想いに応えて欲しい。なんて、わがままは言わない。でも、想いを認めて欲しいとは願ってしまう。
「ちゃんと自分が納得するまで認めたくないし」
「そうだね。葵君には僕の分まで頑張ってもらわないと!」
そしてできれば僕の分まで幸せになってね。
そう言って笑う朋喜に僕は苦笑いを濃くして、自分の分の幸せは自分のためにとっておいてよって返してしまう。
今はまだ無理かもしれないけど、朋喜もいつかまた別の恋をするだろう。その時のために『朋喜の幸せ』はとっておいて欲しい。
「葵君って本当、真面目で可愛いよね。そんなに真面目だと、悪い人に騙されちゃうよ?」
「え? なんで?」
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おろおろする僕と、そんな僕を見て笑っている朋喜。
するとそこにようやく慶史と悠栖が戻ってきた。
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(あ、慶史、怒ってる……?)
「朋喜、また葵のこと苛めてるの?」
「! 苛められてないよ!?」
「酷いなぁ。僕、最近慶史君に怒られてばっかりな気がするよ?」
慶史が睨んでいたのはどうやら朋喜だけのようで、僕が朋喜に苛められて困っていると勘違いしたみたい。
怒気を含んだ声に僕が止めに入るも、朋喜は苦笑しながらも傷ついた顔をしていて胸がチクッと痛んだ。
「なんか、マモも大変だな……。狂犬みたいな保護者が2人もいて……」
「ちょっと悠栖、聞こえてるよ」
喧嘩をするわけじゃないけどあまり良い雰囲気じゃない慶史と朋喜にどうしたら良いか戸惑っていたら、悠栖は放っておいていいぞと僕の肩を叩いた。僕に好きな人ができて機嫌が悪いだけだから。って。
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