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大切な人
大切な人 第13話
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僕との間にわだかまりがあるにせよ、虎君が居れば瑛大ももしかしたら少しは楽しめるかもしれない。
そう安易に考えていた自分の考えが浅はかだったと深く反省するも、現状の打開策は見つからなくて途方に暮れそうになる。
「オイオイ、玄関開けっ放しとか不用心にもほどがあるだろ!? こんなセキュリティガバガバな家に可愛い妹を出入りさせるとか不安になるぞ!」
どうやってこの気まずい空気を変えようかと悩んでる僕の耳に届くのは大きな声。それは虎君の幼馴染であり僕にとってもう一人のお兄ちゃん的存在、海音君のもの。
少し間をおいて「いくら凪のお願いでも改善されないならダメだ!」と続く声は誰かに向けられているもので、それは言葉から海音君の妹である凪ちゃんだと分かる。
凪ちゃんの声が全く聞こえないのはまぁ当然だろう。
僕が虎君を見上げたら虎君も僕を見下ろしてきて、「煩いのが来た」って笑った。でもその後「相変わらずタイミングの良い奴だ」って言葉が続いたから、虎君と海音君の仲の良さにちょっぴり嫉妬を覚えてしまった。
「オイ茂斗! 俺の妹を危険に晒してる自覚はあるんだろうな!?」
バンッと大きな音を立てて開く玄関への扉。
そして鬼の形相、とまではいかなくともそれに近い顔つきで怒鳴り込んでくる海音君は微妙な雰囲気漂う空間にすぐに気づいたのか目を見張り、一呼吸置いた後に「取り込み中?」と虎君を見た。
「いや。……お前はいつもながら煩いな」
「! お前も顔合わせて一分も経たずに喧嘩売ってくんなよな」
「俺らしくて良いだろ?」
「はいはい。言ってろ言ってろ。……で、茂斗は? この家のセキュリティについて文句言いたいんだけど」
「お、お兄ちゃん、止めてよっ……」
虎君の悪態はどうでもいいと言う海音君は茂斗を探してリビングを見渡す。と、そんな海音君の腕を引くのは凪ちゃんで、引っ込み思案な凪ちゃんにしては珍しく声を荒げていて、やっぱり実のお兄ちゃんが相手だと違うなと思ってしまった。
「ダメだ! 危ない目に遭ったらどうするんだ!」
「わ、私は、シゲちゃん、いてくれるだけで安心できる、からっ」
海音君を止める凪ちゃんは虎君や慶史達を見て怯えたのか、言いながらも海音君の背中に隠れてしまう。海音君はそんな凪ちゃんに「凪が心配なんだぞー?」と緩んだ顔をして見せた。
(茂斗とおんなじ顔してる)
凪ちゃんに夢中な茂斗が良く見せる表情。それと同じ海音君の顔。僕は思わず笑ってしまいそうになる。
でも、ふと視界に入った悠栖と朋喜の表情に、僕はある事実に気が付いた。
瑛大と慶史はともかく、二人は海音君とは初対面。だから明らかに警戒している表情を見せるのは当然だろう。
「あ、二人は初めて、だよね? こちら三澤海音君って言って、虎君の友達なんだよ」
「先輩の、友達……」
「そう、なんだ? てっきり知らない人が侵入してきたのかと思っちゃった」
口早に説明すれば、まだ呆然としながらもなんとか反応を返す悠栖。そして朋喜は愛らしい笑みを浮かべ「初めまして」と海音君に会釈して見せた。
朋喜の笑顔に海音君は目を瞬かす。
僕はなんとなく海音君が次に口にする言葉が分かって、海音君が口を開くよりも先に質問されるだろう言葉への答えを口にした。
「二人は『僕のクラスメイト』だよ。天野悠栖と深町朋喜」
「葵のクラスメイトって、マジか……」
絶句する海音君は悠栖と朋喜をマジマジと眺める。
その視線に朋喜は何かを察したのだろう。笑顔のまま「歴とした男ですよ」と補足する。
(慣れてるなぁ。やっぱり、一度や二度じゃないんだろうな。間違えられるの)
怒るわけでも呆れるわけでもなく、ごく自然に海音君の眼差しを受け取る朋喜を僕は凄いと思う。だって、同じく女の子に見間違えられたと知った悠栖は物凄く微妙な顔をして見せたから。
「いやぁ悪い悪い! 瑛大と慶史の彼女かと思ったわ!」
豪快に笑う海音君は悪気無く問題発言を落とす。
顔を顰める瑛大と、何を言われたかすら理解できていないような慶史。
目を丸くしていた慶史はようやく海音君の言葉を理解したのか、ハッと我に返って「はぁ!?」と大きな声を出した。
「ちょっと海音君! 俺が自分よりブスな女と付き合うと思ってるわけ!?」
「何言ってるの慶史君! 僕の何処がブスだっていうの!?」
「待て待て待て! 怒るポイント違うだろ!」
ブスとかブスじゃないとかそこじゃない!
慶史に食って掛かる朋喜を宥めるのは珍しく悠栖だった。
僕は虎君から離れ、朋喜は悠栖に任せて慶史を宥める役に徹した。
そう安易に考えていた自分の考えが浅はかだったと深く反省するも、現状の打開策は見つからなくて途方に暮れそうになる。
「オイオイ、玄関開けっ放しとか不用心にもほどがあるだろ!? こんなセキュリティガバガバな家に可愛い妹を出入りさせるとか不安になるぞ!」
どうやってこの気まずい空気を変えようかと悩んでる僕の耳に届くのは大きな声。それは虎君の幼馴染であり僕にとってもう一人のお兄ちゃん的存在、海音君のもの。
少し間をおいて「いくら凪のお願いでも改善されないならダメだ!」と続く声は誰かに向けられているもので、それは言葉から海音君の妹である凪ちゃんだと分かる。
凪ちゃんの声が全く聞こえないのはまぁ当然だろう。
僕が虎君を見上げたら虎君も僕を見下ろしてきて、「煩いのが来た」って笑った。でもその後「相変わらずタイミングの良い奴だ」って言葉が続いたから、虎君と海音君の仲の良さにちょっぴり嫉妬を覚えてしまった。
「オイ茂斗! 俺の妹を危険に晒してる自覚はあるんだろうな!?」
バンッと大きな音を立てて開く玄関への扉。
そして鬼の形相、とまではいかなくともそれに近い顔つきで怒鳴り込んでくる海音君は微妙な雰囲気漂う空間にすぐに気づいたのか目を見張り、一呼吸置いた後に「取り込み中?」と虎君を見た。
「いや。……お前はいつもながら煩いな」
「! お前も顔合わせて一分も経たずに喧嘩売ってくんなよな」
「俺らしくて良いだろ?」
「はいはい。言ってろ言ってろ。……で、茂斗は? この家のセキュリティについて文句言いたいんだけど」
「お、お兄ちゃん、止めてよっ……」
虎君の悪態はどうでもいいと言う海音君は茂斗を探してリビングを見渡す。と、そんな海音君の腕を引くのは凪ちゃんで、引っ込み思案な凪ちゃんにしては珍しく声を荒げていて、やっぱり実のお兄ちゃんが相手だと違うなと思ってしまった。
「ダメだ! 危ない目に遭ったらどうするんだ!」
「わ、私は、シゲちゃん、いてくれるだけで安心できる、からっ」
海音君を止める凪ちゃんは虎君や慶史達を見て怯えたのか、言いながらも海音君の背中に隠れてしまう。海音君はそんな凪ちゃんに「凪が心配なんだぞー?」と緩んだ顔をして見せた。
(茂斗とおんなじ顔してる)
凪ちゃんに夢中な茂斗が良く見せる表情。それと同じ海音君の顔。僕は思わず笑ってしまいそうになる。
でも、ふと視界に入った悠栖と朋喜の表情に、僕はある事実に気が付いた。
瑛大と慶史はともかく、二人は海音君とは初対面。だから明らかに警戒している表情を見せるのは当然だろう。
「あ、二人は初めて、だよね? こちら三澤海音君って言って、虎君の友達なんだよ」
「先輩の、友達……」
「そう、なんだ? てっきり知らない人が侵入してきたのかと思っちゃった」
口早に説明すれば、まだ呆然としながらもなんとか反応を返す悠栖。そして朋喜は愛らしい笑みを浮かべ「初めまして」と海音君に会釈して見せた。
朋喜の笑顔に海音君は目を瞬かす。
僕はなんとなく海音君が次に口にする言葉が分かって、海音君が口を開くよりも先に質問されるだろう言葉への答えを口にした。
「二人は『僕のクラスメイト』だよ。天野悠栖と深町朋喜」
「葵のクラスメイトって、マジか……」
絶句する海音君は悠栖と朋喜をマジマジと眺める。
その視線に朋喜は何かを察したのだろう。笑顔のまま「歴とした男ですよ」と補足する。
(慣れてるなぁ。やっぱり、一度や二度じゃないんだろうな。間違えられるの)
怒るわけでも呆れるわけでもなく、ごく自然に海音君の眼差しを受け取る朋喜を僕は凄いと思う。だって、同じく女の子に見間違えられたと知った悠栖は物凄く微妙な顔をして見せたから。
「いやぁ悪い悪い! 瑛大と慶史の彼女かと思ったわ!」
豪快に笑う海音君は悪気無く問題発言を落とす。
顔を顰める瑛大と、何を言われたかすら理解できていないような慶史。
目を丸くしていた慶史はようやく海音君の言葉を理解したのか、ハッと我に返って「はぁ!?」と大きな声を出した。
「ちょっと海音君! 俺が自分よりブスな女と付き合うと思ってるわけ!?」
「何言ってるの慶史君! 僕の何処がブスだっていうの!?」
「待て待て待て! 怒るポイント違うだろ!」
ブスとかブスじゃないとかそこじゃない!
慶史に食って掛かる朋喜を宥めるのは珍しく悠栖だった。
僕は虎君から離れ、朋喜は悠栖に任せて慶史を宥める役に徹した。
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